「対話」の可能性は消えた
 北朝鮮が7月28日、再び大陸間弾弾ミサイル(ICBM)を日本海に向けて発射した。実戦配備まで残された時間は多くない。支持率が急落した安倍晋三政権は内閣改造で出直しを図る構えだが、何をすべきなのか。

 先の発射実験について、米ジョンズ・ホプキンス大学の研究グループ「ノース38」は「明らかに成功だったが、実戦配備には少なくない課題が残っている」と評価した(http://www.38north.org/2017/07/melleman073117/)。その1つが「弾頭が大気圏に再突入する際の摩擦熱に耐えられるか」という問題である。

 弾頭が北海道・奥尻島沖に落下した際、NHKのカメラが撮影していた映像がある(https://www3.nhk.or.jp/news/special/northkorea_provocation/embed/northkorea_provocation_movie_185.html)。ノース38はその映像を基に分析した。

 それによれば、弾頭とみられる物体は海上から約20キロの上空あたりから摩擦熱で白く輝きだした。高度6~8キロで発火、4~5キロでは発火した小さな物体を撒き散らし、3~4キロで突然、見えなくなった。つまり途中で燃え尽きてしまった。

 ノース38は「火星14号(ICBM)の大気圏再突入ビークル(弾頭の運搬手段)は生き残れなかった」という結論を下している。ICBM自体は米国本土を射程に収める能力があっても、弾頭を目標まで降下させて爆発させる技術力はまだない、という評価である。

 とはいえ、北朝鮮の技術力向上は疑いない。核とミサイルの開発は最終段階に入ったのだ。いずれ6回目の核実験も強行するだろう。ここまで来ると、北朝鮮が核とミサイルの開発を断念して対話路線に復帰する可能性はなくなったとみていい。

米国の態度も変わった
 北朝鮮からみれば、核とミサイルの完成後に米国と交渉したほうがはるかに有利だ。逆に言えば、米国や日本は北朝鮮の開発を止められないことを前提に対応を考えなければならない。28日の発射実験はその点を明確にした。

 実際、米国のヘイリー国連大使は「中国は最終的に重大な措置を取るのかどうか決断しなければならない。話し合いの時は終わった」という声明を出した。トランプ大統領も「中国には非常に失望した」とツイッターに書き込み、記者団には「我々は北朝鮮に対処する」と述べている。米国は一段、ギアを上げている。

 これから何が起きるか。シナリオを検討してみる。

 私は7月21日公開コラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52357)で、米国と中国、ロシアが金正恩・最高指導者の除去で合意する可能性を指摘した。金正恩を除去した後の北朝鮮について合意できれば、金正恩自身と核・ミサイルをセットで除去できるかもしれない。朝鮮半島の行く末を決めた、かつての「ヤルタ会談」の現代版だ。

 外交専門家からは、米中ロに日本と韓国も加えて5カ国で本格的な外交協議をやるべきだという意見も出ている(たとえば、7月30日付け読売新聞での藪中三十二氏)。これまで北朝鮮を加えた6カ国協議再開を唱える声があったが、北朝鮮を外したところがミソだ。

 この期に及んで北朝鮮を加えても意味がないのは、よほどの左派リベラルでもない限り分かるだろう。彼らは開発が終わる前に話し合うメリットがない。そうであるなら、秩序を乱す悪漢と話し合うのではなく、悪漢を退治する側が退治する方法を話し合うべきなのだ。

 日本と韓国はすでに中距離ミサイル「ノドン」の脅威にさらされている。だから日本と韓国も協議に加わる正統性はある。そうは言っても、日本も韓国も自力で北朝鮮の脅威に対処する能力はない。主役はあくまで米国と中国、ロシアである。


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