イラクとシリアでイスラム国が人類史上初の自爆ドローン戦に踏み切った事実を紹介し、これが日本にも深刻な影響を与えると指摘した。

◎「100億円のF-35が数万円のドローンに負ける日」

この指摘に対してドローンを過小評価する見解も見受けられたが、その後、とうとうドローンによってウクライナ軍の世界最大の弾薬庫が爆破されるという事態が発生し、米国の戦略家たちの注目を浴びている。

 以下ではこの事件についての概要や見解を紹介し、我が国への教訓を論じたい。

■ 世界最大の弾薬庫がドローンで破壊

 今年3月23日、ロシア軍はたった1機の小型ドローンで世界最大の弾薬庫を爆破してしまった。「ウクライナのKGB」と言われるウクライナ保安庁の発表によれば、ウクライナ東部バラクリヤに存在する約7万トンもの弾薬(10億ドルもの損害)を破壊したのは、たった一発の焼夷型手りゅう弾を積載したロシアの小型無人機だったという。

 米陸軍戦争大学特任招聘教授のロバート・バンカーは、「この種の焼夷型手りゅう弾と無人機を組み合わせた弾薬庫への攻撃は、ウクライナ南東部ではすでに二度発生している」と指摘している。

 実際、ウクライナではこの2年間、そうした攻撃が上記以外にも以下のように相次いでいる。

 ・2015年10月29日、スヴァトヴォ弾薬庫が爆破され、3000トンの弾薬が1700軒の民家を巻き込んで吹き飛ぶ。

 ・2015年12月、小型ドローンがバラクリヤ弾薬庫に少なくとも14個の手榴弾を投下。

 ・2017年2月17日、ザポロジエの弾薬庫が爆発した。

 ・同年3月14日、ドネツク近郊のウクライナ軍施設が無人機攻撃を受ける。

 これらの攻撃で使用されたのはZMG-1手榴弾だったという。この手榴弾はテルミット式で、爆発するのではなく2200度以上の高熱で炎上し、厚さ1.27cmの鋼板を溶かすことができる。

■ 戦略家たちが重大な懸念

 こうした事実は、欧米の戦略家たちの間で重大な危機感を持って受け止められている。

 例えば、日本でも「オフショアコントロール戦略」の提唱者として知られ、我が国の防衛省とも交流がある元米海兵隊大佐、国防大学上席研究員のトーマス・ハメス氏は、メディア取材に対して、ドローン攻撃の威力を次のように語っている。

 「脆弱な目標であれば、弾頭が小さい無人機でも大ダメージを相手に与えることができる。爆薬は必要ない。なぜなら、すでにそこにあるからだ。この意味で駐機中の航空機も危ない。液化天然ガス施設、石油化学製品工場、燃料貯蔵施設も危ない。また、危険な化学物質の貯蔵タンクは爆発はしないが、破裂すれば壊滅的な影響を与える可能性がある。1984年のボパールの事故では、工場からメチルイソシアナートガスが誤って放出され、3000人以上が死亡した」
現役の米軍人も注目している。マイヤー・ヘンダーソン・ホール基地司令を務めるパトリック・デューガン大佐も、自らの論説の中で以下のように危機感をあらわにしている。

 「ロシアの情報機関とゲリラ軍は、ウクライナの基地に対して、ドローンと手榴弾を組み合わせた体系的な攻撃を行っている。なお、バラクリヤが大爆発したのと同じ週、ワシントンの陸軍基地のわずか1キロ以内で、5体の小型ドローンが飛行制限規制を無視して飛んでいた。ドローンを飛ばした飛行者の意図は不明であり、将来の陸軍基地が大丈夫かどうかも不明である」

 さらに欧州評議会の無人機専門家、ウルリッケ・フランクは、「こうした弾薬庫は、ちょっと燃やせば大爆発するので、ドローンの小規模攻撃の良い目標だ」とし、先のバンカー氏も「これは弾薬庫だけの問題ではない。航空機燃料タンクや給油したままの民間機も良い目標だ」とメディアにコメントしている。

■ ゲリラコマンドへの警戒が薄すぎる自衛隊

 それでは、これらの指摘を我が国はどう考えればよいのか。

 確かにバラクリヤ弾薬庫の保管状況はひどいものであった。いくつかの爆破前の写真を見れば分かる通り、弾薬入りの木箱を大量に野ざらしに置いているような、お粗末極まりないものであった。一方、自衛隊の弾薬庫や備蓄燃料は基本的に盛り土がしてあったり、地下化されているし、弾薬管理は非常に厳密である。

 しかし、本件は我が国にとっても看過できない。例えば、航空自衛隊の那覇基地は、那覇空港と共有しており、民間ジェット機が(特に滑走路で離陸時に)破壊され、大炎上すれば幾日かは航空作戦は不可能になる。その間に航空優勢を奪取されるなり、空爆されれば目も当てられない。

 また、早期警戒機E-2CやKC-767空中給油機のような、数が少なく、戦力発揮に重要な影響を及ぼす機体も破壊・損傷されれば大変なことになるだろう。一発の焼夷手榴弾および数万円のドローンで、1機100億円のF-35やF-15戦闘機を短期的にでも機能停止に追い込めるならば、非常に効果的である。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170811-00050754-jbpressz-int&pos=3