● 文大統領の演説で 日韓関係は後退する

 時の韓国大統領の「対日姿勢」を端的に表すのが、日本の植民地支配からの解放記念日、8月15日の「光復節」式典での大統領演説である。

 文在寅大統領は演説で、「過去の歴史が韓日関係の未来志向的な発展の足を引っ張るのは望ましくない」としつつ、北朝鮮への対応などについて「北東アジアの平和と繁栄のために一緒に協力する関係に発展しなければならない」と述べた。

 この発言からは、文大統領が選挙演説中からこだわってきた歴史問題と、他の分野の協力関係とを切り離して進めるという、いわゆる「ツートラック政策」が見て取れる。

 文大統領は、歴史問題に対する強硬姿勢で知られているが、韓国の有識者の多くは、「文氏は大統領になれば反日ではなく、現実的な対日関係を進めるから心配ない」とする意見であった。確かに、演説でも日本への直接的な批判は避けている。

 しかし、文大統領が言うツートラック政策は現実的なものではない。なぜなら、韓国にとってメリットになる部分は進める一方で、歴史問題は追及していこうとするものだからである。つまり、歴史問題を棚上げするつもりなど毛頭なく、自分たちにとって“いいとこ取り”をする政策に過ぎないからだ。これでは、日本人の多くが抱いている、反日的な言動に対する怒りや失望感を解消することはできない。

 日本としても、現在の北朝鮮の脅威に対処するためには、韓国との関係をいい方向に導くべきである。だが、今の日本には、歴史問題で対日批判を繰り返す韓国と素直に協力しようという雰囲気はない。

 では、演説の中で、文大統領は歴史問題についてどのように語ったのか見てみよう。

 慰安婦問題については、「被害者の名誉回復と補償、真相究明と再発防止の約束」という原則を必ず守ると強調し、「日本の指導者の勇気ある姿勢が必要だ」と述べている。

 日本の首相に対し、「勇気ある姿勢」に言及した大統領は初めてではない。しかし、こうした言い方は、他国の元首や政府首脳に対し、失礼だとは思わないのだろうか。これは恐らく、儒教において上位の者が下位の者に対して説教する考え方がベースにあるのだろう。道徳的な面において韓国の方が“上位”であり、“下位”である日本に「やれ」と命じているわけだ。このようなことを言われて、日本人が納得するはずがない。少しは国際的な常識を理解してほしいものである。安倍首相が、「ゴールポストが動くことは絶対にない」と述べたことは、至極もっともなことである。

 それ以上に気になるのは、「勇気を持って」この問題に対応して来なかったのは、果たして韓国なのか、それとも日本なのかということだ。

 慰安婦問題をめぐっては、日本は1965年の国交正常化時に解決済みとの立場であった。だが、慰安婦の人々が負った深い悲しみや苦痛、苦悩などに鑑み、これを償う意味で「女性基金」を設立したり、2015年の日韓合意で追加的な措置を執ったりして、問題の解決に努めてきた。女性基金が支給した「償い金」には、総理大臣自身が署名した書簡まで添えている。

 半面、韓国は女性基金が設立された当初こそ協力する姿勢を示していたものの、反日団体の急先鋒である「韓国挺身隊問題対策協議会(以下「挺対協」)」が反対して強硬に抗議するや否や、協力姿勢を後退させ、最後は日本側に丸投げする形になった。

 慰安婦に関する日韓合意の際、日本側が「最終的かつ不可逆的合意」という一文を加えたのは、韓国が要求水準を次から次へと引き上げていく行動、いわゆる「ムービングゴールポスト」的な行動を警戒してのものであった。

結果的には、そうした警戒が的中した形で、韓国政府こそ「勇気を持って」対応するべきではなかったのか。それができていれば、この問題ははるか以前に解決していたはずである。

 また、徴用工の問題についても文大統領は、植民地支配からの解放から70年以上たっても「強制動員の苦痛は続いている」と述べ、南北共同による「強制動員被害」の調査の検討にも言及した。徴用工の問題については、韓国政府も解決済みとの立場であったにもかかわらず蒸し返してきたのだ。

 ここで特に引っかかるのは、「南北共同」でという言葉である。北朝鮮は、強引に核ミサイルを開発し、日米韓を核ミサイルの脅威で挑発している。これに対し、中ロも北朝鮮に対する制裁強化に合意し、国際的な協調体制の下で問題解決に努力しているところである。

 そうした中で、北朝鮮と共同で調査するとは、一体どういうことなのか。日本の歴史問題に対処するため、日韓を危機に陥れている北朝鮮と組んで日本をやり込めようというのか。これを糸口として、北朝鮮との対話を進めるためのきっかけにしようというのか。だとすれば、文政権はあまりにも国際社会の現実を無視していると言わざるを得ない。文大統領の本質は、このようなところにも表れている。

● 反日行動を黙認ではなく むしろ支援している

 文大統領の演説は、これまで日韓関係が悪かった時代の大統領のものと比べて、日本に対する直接的な批判に対して慎重になっている点については評価できる。

 しかし、エスカレートする反日活動を黙認するどころか、むしろ支援している点では大きな問題をはらんでいる。ここで言う反日活動とは、できるだけ日本側が嫌がることをやり続け、それによって自分たちの一方的な要求を日本に押し付けようとするものである。

 確かに韓国では、政治家や政治活動団体の反日行動を批判したり、抑制したりすることは難しい。そんなことをすれば、たちまち親日家と批判され、バッシングを受けてしまうからだ。ただ、大統領が日韓関係を前に進めようとする明白な意思があれば、それも可能だ。事実、朴槿恵前大統領の後半がそうであった。

 ところが、文大統領領は反日活動を黙認、さらには慰安婦支援者で反日的な活動を活発化させている鄭鉉栢(チョン・ヒョンベク)氏を女性家族部長官に任命するなど、反日活動の支援者となっている節さえある。


 ちなみに鄭長官は、慰安婦が共同生活をする「ナヌムの家」を訪問、「慰安婦」博物館の建設を検討していることを明らかにしたほか、慰安婦関連資料について、ユネスコ世界記憶遺産への登録を目指すことまで言い出す人物だ。

また、光復節前日の14日には、慰安婦問題を象徴する「少女像」を座席に置いた路線バスが運行を始めたほか、ソウルでは小型の少女像を広場に500体並べる行事も開かれた。市民団体の連合組織は、毎年8月14日を「日本軍慰安婦メモリアルデー」に指定、政府としても記念日に制定する方針とまで言われている。

 さらには韓国の外交部が、慰安婦に関する日韓合意の交渉経緯などを検証する「タスクフォース」を立ち上げ、慰安婦合意に対し否定的な立場からの検討が進められている。先の日韓合意に基づき設立された「和解・癒し財団」も、韓国政府が支援を引いたため、このままでは解散する可能性が高いと言われている。

 ただ、日本が抗議すればするほど、日本は困っていると見て、より嫌がらせを強めてくるのが韓国である。

 では、どうすればいいのか。私は、日本が一体となり、このような反日行動は韓国人の人間性を疑わせ、品位を落とすことになると、徹底的に批判していくのがいいと思う。韓国は、道徳的な面において日本に勝っていることを誇りとしているが、このような行動を続ければ、そうした「誇り」を失うことを悟らせるのである。

 一方で、日本企業にも反日の風が吹き付けている。

 徴用工問題に関しては関連団体が12日、元労働者を象徴する像をソウルと、その郊外の仁川に設置した。また、11日には光州の地方裁判所が原告の主張を認め、三菱重工業に対し1人当たり日本円で950万~1400万円の賠償を命じる判決を下した。

 そもそも徴用工問題をめぐっては、日本政府、韓国政府ともに、1965年の国交正常化の際に解決済みとの立場だったはず。しかし、2012年に韓国の最高裁判所が、国民感情に沿った形で「個人の請求権は消滅していない」との判決を下して以降、日本企業を相手取った裁判が相次いでおり、8日にも原告勝訴の判決が出たばかりだった。

 これに対し、日本企業は上級審に控訴しているが、韓国での経済活動が不利になったり、資産が差し押さえられたりするのではないかとの心配を抱えているであろう。だが、一度でも賠償金を支払えば、強制徴用されたという人たちが次々に名乗り出てくる可能性が高い。そうした影響を考えれば、日本企業は韓国の情治ではなく、正統的な法律解釈に則って対応していくことが重要である。

 日本企業の経済活動が委縮すれば、日本企業にとっても損失は免れないが、韓国経済に与えるダメージの方が大きい。国民感情に任せて、国際的な信義則に反する行動は、結局自分に跳ね返ってくるということを分からせるほかないのである。

http://diamond.jp/articles/-/139068

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