8月29日早朝、北朝鮮が北海道上空を越える弾道ミサイルを発射し、国際社会は騒然となっている。

 韓国では26日に北朝鮮が発射した飛翔体を当初「発射砲(ロケット)」とし、「弾道ミサイル」と発表した米国の見解と異例的に食い違ったが、28日には修正。韓国内では、「対話路線を固持する文在寅政権はロケットにしたかったのだろう」などと揶揄されたが、そんな軽口も一気に吹っ飛んだ格好だ。

「これは始まりに過ぎません。これから北朝鮮は数回ICBMの発射実験をし、核実験も行う可能性が高く、トランプ大統領は重大な決断を促される」と警鐘を鳴らすのは、韓国の中央日報軍事安保研究所の金珉奭(キム・ミンソク)所長だ。金珉奭所長は韓国国防研究院の先任研究員から中央日報の軍事専門記者に転じ、2010年には国防省のスポークスマンに抜擢され、5年3カ月務めた。研究員時代の1989年には国防省の要請を受けて米日韓で初めて北朝鮮の核の能力を工学的に研究したことでも知られる。

来年初頭までにICBMが完成
――8月29日、北朝鮮は日本上空を通過する弾道ミサイルを試験発射しました。

「北朝鮮のICBMの技術は国際水準にまで上がっています。8月23日には労働新聞の一面で、国防科学院化学材料研究所の内部を公開しましたが、写真を見る限り、来年の初めまでにはICBMが完成するとみられます。金正恩労働党委員長がこうして軍事機密まで公開したのは、ICBMの技術レベルを見せつけるためでしょう。7月28日に行った発射実験では高い角度で撃ちましたが、もう少し正常な角度で撃てるところまで来ている。8月29日の試験発射は始まりにすぎません。これから2、3回行うでしょう。また、日本を越えて米軍の迎撃が困難なグアムとハワイの近辺を狙うのではないかと推測します」

核実験も年内に
――6回目の核実験も年内に行われる?

「秋にはするでしょう。北朝鮮は今まで5回核実験を行っていて、内容は、プルトニウムを使ったものが3回、ウランは1回、ブースト型(増幅)核分裂爆弾は1回でした。

 北朝鮮は今、核施設で使用済み核燃料を再処理したプルトニウムを50キログラムほど保有しているといわれ、ここから10個分の核兵器をまず作り、次にウランそして同時に失敗していたブースト型での6回目の核実験を行うものと見られます。この6回目の核実験は北朝鮮にとってはとても重要な実験になる。もし、これが成功して北朝鮮の核武装が現実になれば、問題は米国がサージカルストライク(ピンポイント先制攻撃)ができなくなることです。

 核武装前であれば、北朝鮮がやれることには限りがありますが、核武装後となれば、『駐韓米軍基地のある韓国の平沢や、ソウル、駐日米軍基地に撃ちますよ』と出てくる。駐日米軍基地の横須賀も対象になります。こうなると、米国はピンポイント攻撃ができなくなる。核武装を許容するしかなくなってしまうのです」

中国が北朝鮮への石油供給をやめるかがカギ
――2000年に電撃的にオルブライト米国務長官(当時)が訪朝したようなことが起きる可能性はないのでしょうか?

「いや、米国は今、そんなに暇ではありません。ですから、私はトランプ大統領は2~3カ月以内に結論を出すと考えています。それはなぜか。トランプ大統領は、北朝鮮の核を除去するか、それがだめなら、北朝鮮の核武装を許容するほかなくなります。北朝鮮が核を保有すれば平和協定を結ぶしかない。先制攻撃は、米国の世論がそれをよしとしていない現在の状況では難しい。

 しかし、です。米国は4月の米中首脳会談後から中国に北朝鮮への制裁発動を求めてきましたが、なんの成果もありませんでした。8月には、国連安保理が北朝鮮への人、物資、資金の流れなどを規制する決議第2371号を採択しましたが、その前の8月2日にはトランプ大統領は遂に北朝鮮に対する強力なスーパー制裁法案に署名しました。これは中国からの原油と石油製品をはじめ北朝鮮の貿易まで封鎖する強力なもので、現在はこの2つの制裁が発動していますが、米国は第2ラウンドとして、台湾と米台軍事秘密会議を開いたり、武器(対レーダーミサイルや魚雷など約14億ドル相当)を販売し『1チャイナではなく2チャイナで行く』という強力なメッセージを中国に送り、さらには、通商法スーパー301条を発効させようと中国への知的財産権侵害の調査も開始して中国への圧力を強めています。

 中国が一連の圧力により北朝鮮への石油供給をストップすればいいですが、そうならなければジレンマに陥ります。おそらく、この経緯に2~3カ月かかる。その過程で、中国が制裁に応じなかったり、制裁に効果がなければ、それがメディアで報道されて米国内での世論も変化してくるでしょう。そうなると、先制攻撃への障害がとり除かれることになる。トランプ大統領はこの第2ラウンドが終わるのを待って、そこで決断するものと見られます」   続く

http://bunshun.jp/articles/-/3969