核・ミサイルで暴走を加速させる金正恩党委員長に対して、トランプ米大統領が「ロケットマン」と揶揄した。単なるSNS上の軽口に過ぎないが、北朝鮮がどのような反応をするかに注目される。

人種差別表現で

トランプ氏は北朝鮮の核実験とミサイル発射を受けて、韓国の文在寅大統領と電話会談を行った。翌日のツイッターで電話会談に触れ、「ロケットマンはどうしているか尋ねた」とつぶやいた。

気の利いた軽口で金正恩氏をこけにしたつもりかもしれないが、北朝鮮庶民が金正恩氏に浴びせかけるブラックなジョークに比べれば大人しいものだ。

今のところ、北朝鮮はトランプ氏の発言に反応していない。しかし、北朝鮮が本気になれば、一国の元首にも容赦のない罵声を浴びせる。

前大統領のオバマ氏に対しては露骨な人種差別表現を使った。韓国の朴元大統領に対しては「ずるがしこい売春婦」、日本の安倍晋三氏に対しては「精神病者」と罵倒した。北朝鮮メディアの口汚い罵詈雑言はヘイトスピーチ顔負けである。

北朝鮮がトランプ氏個人を罵倒し始めたら、今以上に米朝の溝が深まることも十分にありうる。

通常のトイレが使えず

一方、最近の金正恩氏の言葉をつぶさに見ていると、今の緊張状態をどこかで収めたいという本音が見え隠れする。

米朝間の対立は8月、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)が中距離弾道ミサイル4発を米領グアムに向けて発射する計画を策定すると表明したことでいっそう激化した。しかし金正恩氏は同月14日、「(米国の)行動をもう少し見守る」として、いったん矛を収めるような姿勢を見せた。

8月29日には、日本上空を通過した弾道ミサイル「火星12」型を発射し、9月3日には6回目の核実験を強行するなど、表向きは米国に一歩も引いていない。

今月15日には、火星12型を発射した。この訓練に立ち会った金正恩氏は次のように述べている。

「われわれの最終目標は米国と実際の力のバランスを取って米国執権者の口からむやみにわが国家に対する軍事的選択だの、何のというたわごとが出ないようにすることだ」(16日付労働新聞より)

金正恩氏自らが「最終目標」として「米国と力のバランスを取る」と明言したのだ。

金正恩氏は7月4日、大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14」型の発射実験を現地指導した際、「米帝との長きにわたる対決がとうとう最後の界線に入った」と述べていた。北朝鮮メディアは連日のように「奇襲発射でアメリカ帝国を火の海に作れるということをはっきりと示した」「取るに足りない日本列島の4島をチュチェの核爆弾で海の中に押し込むべきだ」など、過激な言葉で威嚇している。

これに比べると、前述した「バランス」発言には金正恩氏の合理的な本音が透けて見える。

金正恩氏が米国との対決姿勢を貫くのは、独裁体制を維持するためだ。少しでも弱気を見せれば、国内外から「やっぱり金正恩は戦争をするつもりはないし、出来ない」と見られかねないから、過激な言葉を多用している。とはいえ、対決姿勢を永遠に貫くわけにもいかない。また、威嚇が過ぎると米韓の圧力が強まり、結果的に金正恩氏の負担となって返ってくる。

例えば、金正恩氏は警備上の理由から一般のトイレを使えないが、米韓の圧力が強まれば、今以上に不自由な生活を強いられることになるだろう。

もしかすると、「米国との力のバランスを取る」という発言は、「米国を攻撃するつもりはない。対等になりたいだけなんだ。だから、そろそろ威嚇合戦を止めようではないか」という意味の、トランプ氏に対するアピールである可能性もある。

ただ、トランプ氏の「ロケットマン」発言に北朝鮮が過剰反応すれば、当面の雲行きが変わるかもしれない。北朝鮮がトランプ氏の言葉に猛反発すれば、トランプ氏の非難もエスカレートするだろう。たかが舌戦だが、互いの思惑の読み違えが重なると、さらなる対立激化につながるかもしれない。

https://news.yahoo.co.jp/byline/kohyoungki/20170920-00075909/