この1週間を振り返ってみると最も大きな注目を集めたのは何と言っても衆議院選挙の開票結果。わずか465議席を巡って1191人も立候補したので、立候補者の約6割は落選する「熾烈な椅子取りゲーム」です。私が心配しているのは落選した6割の候補者の「家族」の存在です。(露木行政書士事務所代表 露木幸彦、文中は全て仮名)

 候補者の男性もいったん家に帰れば、妻にとっては夫であり、息子、娘にとっては父です。だから夫(父)の当落によって妻子も否応なく振り回されます。どんな職業でも職を失う危険と隣り合わせなのだから、誰しも「明日は我が身」なのです。

● 落選した議員候補者たちの 「その後」とは

 プロ野球選手が戦力外通告を受けた場合、その後の生活がテレビで放送されることもありますが、選挙に落選した男性達の「その後」について語られることは少ないのが現状です。そこで少しスケールは劣りますが、私のところの相談事例から、市議会議員選挙に立候補して人生が狂ってしまった男性の失敗を紹介しましょう。

 <登場人物>
村山洋平(41歳)国会議員の秘書(年収600万円)→予備校の講師(年収400万円)
村山志保(39歳)パートタイマー(年収80万円)
村山大輝(15歳)中学生

 「『どんな手を使っても当選しないといけない!』今思えば、あのとき僕は焦りすぎて空回りしていました。とにかく議員になることは家内のため、息子のためなんだと。もう僕の政治家生命も終わりです。今回の選挙で何もかも…すべてを失いました!」

 村山洋平さん(41歳)が3年前から国会議員の秘書として丁稚奉公を我慢してきたのは、自分が議員になるため。そして待ちに待った市議会議員選挙が公示され、洋平さんは念願の立候補に踏み切りました。

 洋平さんはアメリカの大学に入学、そのまま大学院に進み、博士課程を修了したエリート中のエリート。「自分以外は馬鹿ばっかり」という感じで人を見下している節があり、特に家庭内で傍若無人の限りを尽くしてきました。いくら外面が良くても有権者に「本当の姿」を見透かされたのか。奮闘むなしく残念ながら、落選の憂き目に遭い、さらに選挙をきっかけに洋平さんの人生は転落の一途を辿っていったのです。

● 妻の反対を押し切って 市議会議員に立候補

 投票日の翌日。妻は夫の落選を見届けると、躊躇なく三行半を突きつけてきました。まさに洋平さんが「ただの人」に成り下がった瞬間です。さらに妻は「(息子の)親権さえ渡してくれれば、何もいらない」と、養育費を求めてきませんでした。

 洋平さんはプライドの高さが邪魔をして、今までの苦労をねぎらったり、過去の悪行を悔い改めたり、「考え直してほしい」と泣きついたりできなかったのでしょう。「勝手しろ!馬鹿!!」と、強がるのが精いっぱい。

 落選のショックが癒える暇もなく、妻子を失ってしまった洋平さん。そんな彼が私のところへ相談に来たのは、離婚してから半年後のこと。私が「何か思い当たる節はありますか?」と尋ねると、洋平さんは最初のうち口を閉ざしていたのですが、しばらくすると「そういえば…」と重い口を開き始めました。
つづく