トランプ米大統領は日本訪問の日程を終えた7日午前、韓国に向かった。それに合わせて北朝鮮当局は、特別警戒態勢に入るよう全国に指示を出したが、人びとの反応は非常に鈍かったという。

両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋によると、当局は7日午前、地元の国境警備隊、保安署(警察署)、保衛部(秘密警察)などの司法機関などに特別警戒態勢についての緊急指示を下した。

これを受けて、国境警備隊は警備人員を増やし、民防衛部、保衛部、保安署も非常警戒勤務に入り、路上で不審人物がいないか検問を行った。

一方の人民班(町内会)では、7日の夜遅くになってから緊急会議が招集され、宿泊登録(居住者以外の人を家に泊める場合には登録が義務付けられている)の徹底と保安署への報告、人民班内の宿泊人員の登録と保安署(警察署)への報告、流動人員(通行者)の統制を含む緊急指示が下された。


指示内容を聞かされた住民は露骨に不満の意を表した。まず、特別指示の理由は次のようなものだった。

「トランプが南朝鮮(韓国)を訪問したことで、南北関係が緊張し、南朝鮮が中国経由で特攻隊を送り込んでくるかもしれない」

国境を流れる鴨緑江を挟んで中国と向かい合うこの地域、最も近いところでも韓国から200キロ以上離れている。海外からの情報が遮断されていた昔ならともかく、今は韓国、米国のラジオや携帯電話を通じて情報が入ってくる時代だ。当局は、トランプ訪韓をネタに内部の引き締めを図ろうとしているのだろうが、両江道の人びとにこんな子供だましの話が通じるわけがないのだ。

寝ていたのに叩き起こされて会議に呼び出された人は「何事かと思ったらまた特別警備か」と露骨に不満を示したという。

さらにある人は、「米国の大統領が韓国に行くのを、その前日に人民に知らせるほど当局は海外の情報をよく知っているわけだ。そういう情報を、お上が知れば体制保衛だが、庶民が知ればスパイ扱いされる。そんなダブルスタンダードがどこにある」という発言に出席者が同意し、人民班長はぐうの音も出なかったという。

情報筋は、次のように語る。

「庶民の関心事は米国大統領の動向ではなく、いいかげん南北が仲良くして経済制裁が緩和されることだけだ。特別警戒などには興味を持たず無視する人が多い」

北朝鮮で民主主義が実現し、こういった人々の中から指導者が出れば、東アジアはどれほど平穏になるだろうか。

https://news.yahoo.co.jp/byline/kohyoungki/20171109-00077910/