■常套手段の数字かさ上げでトランプ氏惑わす

 【上海=河崎真澄】訪中したトランプ米大統領が習近平国家主席と立ち会った総額2535億ドル(約28兆4千億円)ものビジネス調印から19日で10日が経過する。巨額商談を前面に押し出したことで、「貿易摩擦や人権、北朝鮮問題をめぐる米側からの圧力をかわす作戦に成功した」(上海の経済学者)との声が中国で広がっている。中国の常套(じょうとう)手段である数字のカサ上げに、トランプ氏ら米側が惑わされた可能性が高い。

 巨額商談について中国メディアは、「最大の勝者はトランプ大統領と米国企業だった」などと強調。一方で、トランプ大統領は昨年3470億ドルの貿易赤字だった中国に対し、「中国の問題ではなく歴代大統領の責任だ」と批判の矛先を変えており、中国側は実のところ“勝者”になった。

 1980年代に日米貿易摩擦が起きた際、米国に押されて日本はきまじめに米国からの輸入拡大策を推進した。「中国は日本の“前例”を反面教師に、米国向けに巨額商談を打ち出す交渉で臨んだ」(岡三証券上海駐在チーフエコノミストの後藤好美氏)という。孫子の兵法にある「攻撃は最大の防御」を実践した。

 商談を“厚化粧”してみせる手法はさまざまだ。

 ボーイングの旅客機300機輸入で370億ドルの商談は、2015年の習氏訪米時に調印ずみの300機の契約を、ほぼそっくり持ち出したと指摘される。

 ウェストバージニア州でのシェールガス事業837億ドルは、一方的な破棄も可能な覚書の交換のみ。中国投資(CIC)とゴールドマン・サックスの50億ドル投資基金も拘束性はない。

 電子部品や大豆、牛肉などの輸入で中国の民間企業も名を連ねた。「金融当局が海外送金を大幅制限しているが、今回の巨額契約に乗れば大手を振って貿易代金として米国に資金逃避できる」(市場関係者)というメリットが生まれる。

 ただ今後、米中貿易不均衡が縮小に向かわなかったり、北朝鮮問題で進展がなかったりすれば、再びトランプ政権は対中攻勢に転じる恐れがある。中国の“ドヤ顔”がいつまで続くかは予断を許さない情勢だ。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171119-00000060-san-cn


PDF