降って湧いたように、日中友好時代が到来した――。

 今回の「日中友好」は、①日本の経済界、②中国の経済界、③安倍晋三政権、④習近平政権の4者4様の異なる「思惑」が、一致した結果と言える。以下、順に見ていこう。

①日本経済界の思惑
 先週20日から26日まで、日中経済協会、経団連、日本商工会議所の合同訪中団250人あまりが、43回目にして史上最大規模の北京詣でを行った。そのメインイベントは、21日午後に人民大会堂で行われた李克強首相との面会だった。

 李首相との面会は2年ぶりだったが、前回よりも友好ムードで、時事通信の報道によれば、榊原定征・経団連会長は、「一帯一路を含むグローバルな経済協力を進めることが、日中のウインウインの関係につながる」と強調した。

 また、室岡正二・日中経済協会会長は、一帯一路構想に向けた日中協力の基盤をつくるため、インフラ整備などに関する共同研究体制の構築や、両国企業が協力できるプロジェクト候補の情報窓口設置などを盛り込んだ提言書を首相に手渡した。

このように、日本の経済界の思惑の大きなキーワードの一つが、「一帯一路」なのである。

 一帯一路(ワンベルト・ワンロード)というのは、習近平主席が2013年から提唱している中国のユーラシア大陸における外交戦略で、中国とヨーロッパを陸上で結ぶ「シルクロード経済ベルト」と、海上で結ぶ「21世紀海上シルクロード」から成る。政策・貿易・インフラ・金融・人心の5つを、中国が中心になってこの地域に通すという壮大な目標を掲げていて、今年5月には習近平主席が、「一帯一路国際提携サミットフォーラム」を北京で開催した。

 中国政府が作っている一帯一路の公式HPによれば、「中国と70ヵ国との架け橋」となっている。ベクトルが中国から西方へ向かっているせいか、中国の東方に位置する日本は抜け落ちている(だがユーラシア大陸に位置しないパナマが入っていたりする)。

 日本の経済界としては、一帯一路を新たなビジネスのビッグチャンスと捉えており、これに加わりたい。だが、安倍政権はこれまで、「一帯一路は中国による新たなユーラシア支配」と警戒して、慎重な態度を取ってきた。そのため5月のフォーラムにも、二階俊博自民党幹事長や今井尚哉首相首席補佐官らが駆けつけたものの、日本政府としての参加は見送っている。

 この一帯一路に、日本の大手企業で一等早く参入の名乗りを挙げたのは、日中国交正常化(1972年9月)の前から、中国政府に「友好商社第1号」に指定されていた伊藤忠商事である。

 2015年1月、同社の岡藤正広社長は、「国有企業集団のCITIC(中国中信)に6000億円投資する」と発表した。タイの巨大財閥CPと折半で、1兆2000億円を投じ、中国及び第三国市場を開拓するとしたのだ。

 日中関係が低迷している時期に、伊藤忠は日本企業として史上最大規模の対中投資を発表したため、当時は「無謀な賭け」と冷やかされ、株価は下落した。だがいまや経済界では「伊藤忠モデル」と呼ばれ、同社の株価はこの半年間で、1500円台から1900円台へと、大きく値を上げている。

 10月に共産党大会を終え、政権基盤を盤石なものにした習近平政権は、少なくともこれから5年続き、ひょっとすると2035年まで続くかもしれない。日本企業にとっては、いくら共産党の一党独裁だろうが、安定政権というのは投資リスクが軽減されるので、大きな魅力である。そこで雪崩を打ったように、再び中国に目を向け始めたというわけだ。

 このように「一帯一路に加わりたい」ということが、日本経済界の第一の思惑である。そして第二の思惑が、「チャイナマネーの魅力を自社に引き寄せたい」ということだ。それは今月、中国に「二つの爆買い」を見せつけられたことが大きかった。

 一つ目は、今月のこのコラムでも詳細を報じたが、トランプ大統領の訪中時に米中企業が交わした「28兆円契約」である(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53488)。

 11月9日に北京の人民大会堂で、トランプ大統領と習近平主席が見守る中、アメリカを代表する29社の代表が、ホクホク顔で壇上に登って契約覚書に署名した。

 「国家エネルギー投資集団がウエストバージニア州でシェールガスや化学製品を生産するため837億ドル投資、中国石油化学がアラスカ州で液化天然ガスを開発するため430億ドル投資、中国航空器材集団がボーイング社からB737を260機、B787とB777を40機、計300機を370億ドルで購入、小米、OPPO、vivoが、クアルコム社から携帯電話の部品を120億ドル分購入、中国が来年までにアメリカの大豆を1200万トン分、50億ドルで追加輸入、吉祥航空がB787のエンジンをGM電気などから35億ドル分購入……」

 これほど巨額の爆買いは、世界広しといえども中国にしかできない。そこで日本企業としては、改めてチャイナマネーの威力を思い知ったというわけだ。

 もう一つは、中国全土で11月11日に繰り広げられた「双十一」(シュアンシーイー)というインターネット通販消費者デーである。中国のネット通販最大手アリババが、2009年11月11日に始めた「双十一」は、いまや春節(旧正月)や中秋節(旧盆)を超える最大の消費イベントに成長した。

 アリババは上海のイベント会場から、時々刻々と累積していく消費額を発表した。

 「開始11秒で1億元(1元≒17円)突破、28秒で10億元突破、3分1秒で100億元突破、11分14秒で200億元突破、9時間4秒で1000億元突破……」

 結局、24時間で、前年比39.4%アップの1682億6800万元を売り上げたのだった。邦貨にして、2兆8600億円!  楽天の年間取扱額3兆円にほぼ匹敵し、日本の全百貨店の半年分の売り上げと同等である。

 アリババが運営する天猫(ティエンマオ)サイトでのショッピングの成立件数は、24時間で計14.8億件(前年比41%増)に達した。中国の全国民が平均1回は買った計算となり、1秒当たりに換算すると、25.6万件! 

 このサイトには、中国内外の100万社以上が、約1500万種類の商品を陳列した。その中で24時間の売り上げが1億元を突破した企業は、「億元クラブ」(億元倶楽部)と呼ばれるが、今年は167社に達した。

 注目すべきは、この「億元クラブ」のベストテンに、日本企業が2社も入っていることである。6位のユニクロと、7位のシャープだ。

 ユニクロは今年8月末現在、日本国内831店舗に対し、中国大陸では555店舗を展開している。今年8月決算(2016年9月~2017年8月)では、国内売り上げ8107億円に対し、海外売り上げは7081億円。まもなく中国市場を主力とした海外での売り上げが、日本での売り上げを超える勢いである。

 シャープも周知のように、一時は倒産しかけたが、昨年、鴻海が買収し「中国系企業」となったことで、業績はV字回復。10月に発表した今年度の業績予測は、売上高21.3%増、営業利益は516倍!  V字回復の陰に中国市場アリなのである。

 他にも、今年の「双十一」には、多数の日本企業が参加したが、天猫サイトにある17ヵ国・地域のショッピングモールの中で、「日本館」での売り上げはダントツだった。「越境ビジネスいま盛りなり」である。

 こうした中国企業や中国人の旺盛な爆買いを見せつけられた日本企業は、日中の政治環境が持ち返したこともあいまって、改めて中国ビジネスに注目しだしたのである。


②中国の経済界の思惑

 一方、中国のビジネス界は、やや違った見方をしている。先日、日本と関係が深い旧知の中国の経済官僚と、広東省の電機メーカー社長が来日したが、彼らは私に、次のように述べた。

 「習近平主席が11月11日にベトナムで、李克強首相が13日にフィリピンで、それぞれ安倍首相と首脳会談を行ったことで、中日関係に好転の兆しが見えてきた。そのため今後、両国間で『5度目の経済ブーム』が到来するだろう。

 わが国が改革開放政策を始めた1980年代に、日本企業に第1次中国進出ブームが起こった。続いて、1992年に鄧小平が『改革開放を加速せよ! 』と唱えた後が、第2次中国進出ブーム。2001年にWTO(世界貿易機関)に加盟した時に第3次ブームが、2008年に北京オリンピックを開催した前後に、第4次ブームが起こった。

 だが今回の第5次ブームの特徴は、初めて中国企業による日本市場への本格的な進出が始まることだ。すでに中国とほとんどの国との間の経済関係は、中国からの投資額が中国への投資額を上回っている。これまで中国企業は、政治リスクを抱える日本への投資を躊躇していたが、もう安心というわけで、2018年は中国企業の『日本進出ラッシュ元年』となるだろう」

 たしかに、前述のアリババのアリペイ(電子決済)が、日本の百貨店やコンビニなどでも、徐々に浸透し始めた。日本では、まだ電子決済の普及率は10%にも満たないが、中国ではすでに5億人が、日々アリペイ決済を利用している。財布から現金を取り出すという光景はもはや見られず、完全なキャッシュレス社会の到来である。しかもスマホ決済は日々進歩していて、指紋認証時代を経て、顔認証時代が始まっている。

 つまり、中国はあらゆる消費の基礎となる決済の部分で、すでに日本の数歩先を行っているのである。この一点を取ってみても、「日本=先進国、中国=途上国」という20世紀的発想は崩壊していることが分かる(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/52000)。

 他にも11月2日には、富士通と中国パソコン最大手の聯想(レノボ)が記者会見を開き、富士通のパソコン部門を聯想に売却すると発表した。

 聯想は2011年にNECのパソコン部門も買収しているので、これで日本のパソコン市場の4割強を握ることとなった。われわれがこれからパソコンを買うと、二人に一人は中国の会社のものを買うことになるのだ。ちなみに聯想は、中国政府傘下の中国科学院から興った会社で、いまでも北京の本社は中国科学院の敷地内にあり、最大の株主となっている。

 また11月8日には、タクシー日本最大手の第一交通産業が、東京・大阪・福岡・沖縄・北海道で、配車アプリ世界最大手の滴滴出行(ディーディーチューシン)と提携する協議を行っていると発表した。すでに羽田空港を始め、日本の各空港などには進出し、中国人観光客を運んでいるが、来年以降は完全に合法的に進出することになる。

 シェアサイクル中国最大手の摩拝単車(モバイク)も、すでに札幌で試験運営を始めた。今後は日本全国にあるコンビニとマッチングしていくことなども考えられる。

 火鍋チェーン中国最大手の海底捞(ハイディラオ)も、東京・池袋に300席もある巨大店舗が上陸。「池袋の象徴」と言われる西武百貨店を出ると、激辛火鍋の匂いが、鼻をプーントと突いてくる。海底捞も、ゆくゆくは全国展開を狙っているという。

 前出の広東省の電機メーカー社長は、私にこうも言った。

 「今後、日本企業の買収に向けて、東京出張が続くだろうから、今回とりあえず、お台場に寝泊まり用の億ションを買った。同タイプの物件としては、広州より3割安かった。ここ数日、10社近い日本企業を回ったが、技術は高く、社員は勤勉で、おまけに買収額は安い。中国企業にとって日本市場は、まさに『宝の山』だ」
つづく

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171128-00053627-gendaibiz-int&p=1


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