「PAC-3」は湾岸戦争のPAC-2とは別物のミサイル

そこで、「餅は餅屋」ということで、最初から弾道ミサイルの迎撃に特化したミサイルを用意することになった。それがPAC-3計画である。PAC-3とは厳密にいうと、ミサイル単体ではなく、発射器やレーダーなども含めたシステム一式のことだ。

そこで使用するミサイルについて、レイセオン社とローラル社が競合した結果、パトリオットの開発・製造元である前者を押しのけて、後者の採用が決まった(その後の企業買収により、現在はロッキード・マーティン社の製品になっている)。

それがERINT(Extended Range Interceptor)と呼ばれるミサイルで、PAC-2以前のモデルとは全くの別物だ。PAC-3システムでは、レイセオン製の発射器などに、ロッキード・マーティン製のミサイルを組み合わせた形になっているわけだ。


そのERINTは、従来のパトリオットと比べると細身で、パトリオット1発分のスペースに4発を収容できる。射程距離はPAC-2より短いが、撃てるミサイルの数が増えるので、迎撃成功の確率は向上すると考えられる。一つの目標に対して2発を連射するのが通常の迎撃手順になっている。

操縦の手段は、尾部に取り付けたフィンを動かす空力操舵ではなく、弾体の側面に横向きに取り付けた多数の小型ロケット(サイドスラスタ)を吹かす方法に改めた。空力的な操縦ではないから、速度・高度・大気密度に関係なく、同じ機動性を発揮できる。

最大の相違は、炸薬弾頭を持たず、直撃による破壊(Hit-to-Kill)を企図している点にある。弾頭を炸裂させても効果が怪しいのであれば、直撃して木っ端みじんにする方が良いという考え方だ。なお、日本での導入が取り沙汰されたTHAAD(Terminal High-Altitude Area Defense)もロッキード・マーティン社の製品だが、同様の直撃破壊型である。

つまり、迎撃に使用するミサイルが全くの別物だから、湾岸戦争におけるPAC-2の実績を基にしてPAC-3の有用性を論じることには、実のところ意味はないといってよい。

つづく
次は:日本における弾道ミサイル防衛手段とPAC-3の位置付け

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171130-00010006-binsider-int&p=2


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