元旦に行われる金正恩党委員長の新年辞が注目されている。

 昨年一年を総括し、新たな方針や政策を打ち出す新年辞は言わば、トランプ大統領の年頭教書や安倍総理の所信表明のようなものだ。

 但し、日米のそれと異なるのは、北朝鮮では金委員長の指示が絶対的で、無条件受け入れ、貫徹することが党・政府・軍幹部にとどまらず全国民に義務付けられている点だ。

 従って、北朝鮮は政治も経済も外交も軍事も何もかもすべてが金委員長の新年辞で始まると言っても過言ではない。実際に今年も金委員長の「大陸間弾道ロケット(ミサイル)試験発射準備が最終段階に達した」の新年辞でのこの一言で北朝鮮のミサイルの乱射とトランプ政権との「チキンレース」が始まっている。

(参考資料:ゴングが鳴った「トランプvs金正恩」の危険な「ガチンコ対決」)

 新年辞は祖父・金日成主席の時代(1948―1994年)は今と同じように肉声で流されていた。それが、父・金正日総書記の時代(1995-2011年)になって突如廃止されてしまった。元旦の労働党機関誌「労働新聞」と軍の機関誌「朝鮮人民軍」、青年同盟の機関誌「青年前衛」による共同社説が新年辞の代替となった。

 金正日総書記が死去し、2011年12月に金正恩氏が最高指導者に就任したものの翌年(2012年)も新年辞ではなく、3紙共同社説であった。新年辞が復活したのは2013年からで、金正恩委員長は祖父の統治スタイルを真似、自らカメラの前で新年辞を読み上げ始めた。

 金正恩委員長の新年辞はライブではなく、事前収録したもので、2015年までは午前9時に発表されていた。それが、昨年(2016年)から正午12時(北朝鮮時間)に変更されている。理由は不明だ。

 金正恩軍最高司令官就任6周年となる昨日(30日)、労働新聞が「世界は2018年、自力自強(自力更生)の偉大な力を余すところなく発揮する我が国の姿にさらに大きな衝撃を受けることになるだろう」と不気味な予告をしたことから明日発表される新年辞で金委員長が何を語るのか、大いに注目されるが、過去3年間の軍事、対米、南北に関する言及は以下のとおり。

 軍事部門

 2015年 「核武力建設と国防力強化で新たな転換を起こし、軍事強国の威力を一層高めなければならない。人民軍は軍力強化の4大戦略路線と3大課業を徹底的に貫徹しなければならない」「国防工業部門では党の並進路線を貫徹し、軍需生産の主体化、現代化、科学科を終え、我々式の威力のある最先端武装装備を積極的に開発し、一層完成させなければならない」

 2016年 「人民軍を党の軍隊として一層強化発展させ、党が提示した4大強軍化路線貫徹で転換を起こさなければならない」「軍需工業部門は国防工業の主体化、現代化、科学科水準を一層高め、敵らを完全に制圧できる我々式の軍事的打撃手段をより多く開発・生産しなければならない」

 2017年 「朝鮮人民軍創建85周年となる今年は軍力強化で熱風を起こさなければならない」「国防部門では我々式の威力のある主体武器をより多く生産しなければならない」

 対米関係

 2015年 「米国は時代錯誤的対朝鮮敵視政策と無分別な侵略策動を止め、大胆な政策転換を行うべきだ」「我々は今後、国際情勢がどう変わろうと、周辺の関係構図がどう変わろうと、我々の社会主義制度を圧殺しようとする敵の策動が続く限り、先軍政治と並進路線を変わらず堅持し、国の自主権と民族の尊厳を守っていく」

 2016年 「米国は停戦協定を平和協定に替え、朝鮮半島で戦争脅威を除去し、緊張を緩和し、平和的環境を作ろうとする我々の公明正大な要求を一貫して無視し、時代錯誤の対朝鮮敵視政策にしがみつき、情勢を緊張激化に追いやっている」「米国は危険千万な侵略戦争演習を止め、朝鮮半島の緊張を激化する軍事挑発を中止すべきである」

 2017年 「米国は時代錯誤的な対朝鮮敵視政策を撤回する勇断をすべきだ」「米国とその追随勢力の核脅威と恐喝が続く限り、また我々の門前で『定例』のベールをかぶった戦争演習騒動を止めないならば、核武力を中枢とした自衛的国防力と先制攻撃能力を引き続き強化する」

 南北関係

 2015年 「民族が外勢によって分裂されてから70年の歳月が流れた。民族分裂の悲劇をこれ以上我慢もできなければ、容認もできない。朝鮮半島で戦争脅威を除去し、緊張を緩和し、平和的環境を作らなければならない」「我々は南朝鮮(韓国)当局が真に対話を通じて南北関係を改善する立場なら中断した高位級(高官)接触も再開できるし、部門別会談も開くことができると思っている。また、雰囲気と環境が整えられれば、最高位級(首脳)会談もやれないことはない。我々は今後も対話と交渉を実質的に進展させるためあらゆる努力を行う」

 2016年 「祖国統一3大原則と南北宣言などを含む民族共同の合意を大切にし、それに基づいて南北関係改善の道を切り開いていかなければならない」「我々は南北対話と関係改善のため今後も積極的に努力し、真に民族の和解と団結、平和と統一を望む人ならば誰とでも会って、統一問題を虚心坦懐、話し合う用意がある」

 2017年 「今年は歴史的な7.4共同声明発表45周年、10.4宣言(南北首脳会談共同声明)発表の10周年の年に当たる。今年、我々は全ての民族が力を合わせて、統一の大通路を開かなければならない」「南北関係を改善し、南北間の先鋭化した軍事的衝突と戦争脅威を解消するため積極的に対策を講じていく。我々は民族の根本利益を重視し、南北関係の改善を望む人とは誰とでも躊躇わず手を握るだろう」

 なお、昨年の新年辞では珍しくも最後に「新しい一年が始まるこの場に立つと、私を固く信じ、一心同体となって熱烈に支持してくれる、この世で一番素晴らしいわが人民を、どうすれば神聖に、より高く戴くことができるかという心配で心が重くなる。いつも気持ちだけで、能力が追いつかないもどかしさと自責の念に駆られながら昨年を送った」と謙虚さを示したうえで「今年は一層奮発して全身全霊を傾けて、人民のためにより多くの仕事をするつもりである」と述べ、しおらしく「人民の真の忠僕になる」と誓っていた。

https://news.yahoo.co.jp/byline/pyonjiniru/20171231-00079961/