北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が要請した米朝首脳会談に、トランプ米大統領が応じた。1950年の朝鮮戦争勃発後、70年近く敵対し続ける両国の最高指導者が、5月までに対面する見通しになった。北朝鮮の核・ミサイル開発が進展し、米本土への核攻撃の脅威が現実化する中、トランプ氏は直接交渉で非核化に向けた事態打開に動きだす。英断か、拙速か。急展開する動きを各国が見守っている。

 ◇自ら広報役
 「午後7時に韓国が重要声明を発表する」。トランプ氏は8日午後5時(日本時間9日午前7時)すぎ、ホワイトハウスの記者会見場にふらりと登場。声明の内容は明かさず、記者団をじらすように自ら「広報役」を買って出た。歴史的会談に臨む腹を固め、高揚感を抑えられなかったもようだ。

 韓国大統領府高官によると、金委員長のメッセージを携えて訪米した鄭義溶国家安保室長とトランプ氏の会談は現地時間9日にセットされていた。だが、鄭氏が8日午後、ホワイトハウスでマティス国防長官らに説明中、トランプ氏側が会談を催促。すぐに会談がセッティングされたという。

 米政府高官は「独裁体制下で意思決定できる唯一の人間は金正恩だけだ」と指摘。不動産王としての「交渉術」を売りにしてきたトランプ氏が「(金委員長からの)会談の招請を受けることは理にかなっている」と述べ、首脳同士の直接交渉が有益だと正当化した。

 ◇「素人外交」に懸念も
 鄭氏は6日夜、南北合意発表後に記者団に対し、発表項目以外にも「米国に伝える北朝鮮の立場が別にある」と明らかにしていた。韓国政府高官によれば、鄭氏は北朝鮮から韓国に戻った直後の同日夕、マクマスター米大統領補佐官(国家安全保障担当)と電話会談をしており、米政権側がこの時点で金委員長による米朝首脳会談の提案を把握していた可能性が高い。

 拙速な米朝首脳会談を警戒する声もある。トランプ氏は8日、ツイッターへの投稿で「金正恩は核開発の凍結だけでなく、非核化に言及した。大きな前進だ」と強調した。だが、北朝鮮は具体的な行動を示しておらず、外交筋は「(北朝鮮問題に)素人であることを逆にさらけ出した」と厳しい見方だ。

 ◇読めぬ真意
 平昌冬季五輪を機に南北対話は進んでいるものの、これまで金委員長や北朝鮮高官から直接、非核化に言及した発言は出ていない。すべて韓国政府による伝達で、北朝鮮の真意がどこにあるかも不明だ。

 米国との首脳会談は、先代の故金正日総書記時代から求めてきた北朝鮮外交の悲願でもある。米韓両政府は「過去の失敗を繰り返さない」と訴えるが、核交渉は北朝鮮のペースに巻き込まれつつあり、日米韓など関係国の外交は正念場を迎えている。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180310-00000025-jij-int