◇職を辞した夜、報道陣の前に姿見せ、深々と頭を下げて

 学校法人「森友学園」(大阪市)に大阪府豊中市の国有地が格安で売却された問題の発覚から、1年あまり。「記録は廃棄した」「データはない」。国民の財産を管理する責任者でありながら疑惑への説明を拒み、国税庁長官に就いた佐川宣寿(のぶひさ)氏が9日、辞任した。在任中、一度も記者会見に臨むことはなかったが、職を辞した夜、報道陣の前で頭を下げた。

 国税庁が入る東京・霞が関の財務省。9日午後7時10分過ぎ、佐川氏は集まった数十人の報道陣から矢継ぎ早に質問を浴びせられたが、無言のまま厳しい表情で2階にある大臣室に向かった。

 午後9時ごろ、佐川氏は再び報道陣の前に姿を見せた。今度は「国会対応に丁寧さを欠き、審議の混乱を招いた」「確定申告期間中に辞職となったことにおわびを申し上げます」と謝罪の言葉を重ね、深々と頭を下げる場面もあった。だが、森友学園の国有地売却に関する決裁文書が書き換えられたとの疑惑をただされると「捜査中」を理由に説明することはなかった。

 森友学園問題に揺れた昨年の通常国会。「財務官僚による安倍政権へのそんたく」を追及する野党側に対し、同省理財局長だった佐川氏は学園との交渉記録を廃棄したことを盾に「ゼロ回答」の答弁を連発した。

 通常国会閉会後の昨年7月、税務行政のトップに。野党側は「論功行賞人事」と批判を強めたが、理財局長からの国税庁長官登用は4代連続だったこともあり、麻生太郎財務相ら政権側は「適材適所」と擁護した。しかし、国税庁記者クラブが再三、要請した恒例の長官就任時の記者会見は「諸般の事情」を理由に行われなかった。先月16日、確定申告の受け付けが始まった以降も外部向けの発言はまったく聞かれず、国税庁前では辞任を求める市民団体のデモが起きた。

 国税庁次長時代の佐川氏は事務運営の効率化に精力的だったと言われる。同庁関係者は「非常に仕事に厳しい人だった」と振り返る。だが、ある税務職員は「国会答弁が注目されてしまい、動きにくかったのだろうが、その意味では『適材の長官』とは言い難かった」と嘆いた。

 今年に入ってからも学園側との事前交渉をうかがわせる音声データや内部文書の存在が相次いで発覚。佐川氏の虚偽答弁が疑われる事態となり、霞が関の官僚たちの間でも「いつ辞めるのか」とささやかれていた。

 佐川氏の辞任を発表したこの日も、麻生氏は「長官として不適任という認識はない」とかばってみせた。だが、別の税務職員は「今後も税務調査や確定申告の場で、納税者から国会答弁を引き合いに苦情や嫌みを言われるのだろう」とため息をついた。

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