スイスでは2001年、男が地方議会に侵入し14人を殺害した後に自殺した事件以来、銃乱射事件は起きていない。

同国では人口830万人のうち、およそ200万人が銃を所有している。2016年、銃による殺人事件が47件発生したものの、国全体での銃による死亡率はゼロに近い。

全米ライフル協会(NRA)は、銃の所有に関して、現状以上の規制は不要とする根拠として、しばしばスイスを例にあげる。2016年、NRAはスイスには個人所有の銃が数百万丁あり、また狩猟用の銃は許可が不要にもかかわらず、銃による死亡率が世界で最も低いとブログに記した。

だがスイスには、銃の使用に関して明確なルールと規制がある。

Business Insiderは銃に関するスイスの歴史を探り、なぜスイスではアメリカよりも銃による死亡率が低いのかを探った。
(※全ての写真は記事上部のリンクからご覧になれます)

スイスでは銃の技術が重視されている。毎年、13~17歳の子どもを対象にコンテストが開催される。
チューリッヒで毎年開催されている「クナーベンシーセン(Knabenschiessen)」は、1600年代に始まった伝統的なイベント。

簡単に訳すと「少年による射撃」という意味、かつては男の子のみが対象だったが、1991年からは女の子も参加できるようになった。

スイス各地の子どもたちが、毎年9月に開催される、軍用ライフルを使用する大会にこぞって参加する。子どもたちは射撃の腕を競い合う。

正確さが何よりも重視され、優勝者は「シュッツェンケーニッヒ(Schutzenkonig)」– 射撃の王様、あるいは女王と呼ばれる。

市民が銃を所有していることはスイスが200年以上、中立を保ってきたことの一因。


スイスは、永世中立国。

1815年以降、いかなる国際紛争にも関わっていない。だがスイス軍は世界中で平和維持活動に参加している。

多くのスイス人は、銃を所有することは祖国を守るための基本的な義務の一部と考えている。

スイス男性のほとんどは、銃の使い方を学ぶことを義務づけられる。
アメリカと違い、スイスでは男性に兵役義務がある。

18~34歳の「兵役に適した」男性はピストルまたはライフルを与えられ、訓練を受ける。

兵役を終えた後、通常は軍で使っていた銃を買い取ることができる。もちろん許可が必要だ。

近年、スイス政府は軍を縮小する決定を下した。

スイスは綿密にデザインされた要塞のような国。

スイスの国境は基本的に、命令によって爆破できるように作られている。
四方を他国と接する内陸国のスイスには、橋、道路、鉄道、トンネルなど少なくとも3000カ所の爆破地点が設けられている。

ジョン・マクフィー(John McPhee)氏は著書『La Place de la Concorde Suisse』に次のように記している。

「スイスのドイツ国境付近では、全ての鉄道とハイウェイのトンネルが爆破によって封鎖されるようになっている。
付近の山々には軍の全部隊が入れるような多数の穴が掘られている」

銃を所有するスイス国民のうち、約4分の1は兵役あるいは警察での任務に就いている。
2000年に行われた調査では、銃所有者のうち25%超が自分の銃を兵役または警察での任務に使用すると答えた。
一方、同様の答えはアメリカでは5%以下。

兵士が所有する銃に加え、スイスには個人所有の銃が約200万丁ある。
ただしその数は過去10年で大幅に減少した。
スイス政府は個人所有の銃のうち、約半数が兵役で使用されたライフルと推定している。
だがスイスの銃所有率は減少しているというサインもある。

2007年、スモール・アームズ・サーべイ(Small Arms Survey)の調査では、
スイスの銃所有率は100人あたり46丁、アメリカ(89丁)、イエメン(55丁)に次ぐ、世界第3位の比率だった。

だがこの数字はこの10年で減少したようだ。現在では、国民の約4人あたりに1丁と推定されている。

銃販売者には厳格なライセンス手続きがある。
スイスでは地域レベルで銃所有の許可についての決定が下される。
また地域内、すなわち州で誰が銃を保有しているかを記録している。
ただし猟銃と一部の銃は許可が免除されている。

だが州警察は銃のライセンスを安易に扱っているわけではない。
州警察は精神科医に相談したり、銃の購入希望者が以前住んでいた州当局に問い合わせをして、購入希望者の審査を行う。

アメリカでもニューヨーク、ニュージャージー、コネティカット、ロードアイランドといった州が同様の方法の導入を検討している。

暴力的な人や不適格な人の銃所有は許されない。
スイスでは有罪判決を受けた人、あるいはアルコールやドラッグ依存の人の銃購入は許されていない。

また法律も「暴力的あるいは危険な態度を示す」人は銃の所有を許可されないと記している。

「自衛目的」で銃を携行する所有者は、銃弾を適切に装填し射撃できるかどうかを証明し、ライセンスを取るためのテストに合格しなければならない。

スイスは世界で最も富裕で健康、そしてある観点では最も幸福な国。
スイスは国連の「2017 世界幸福度報告書」で第4位となった。

「幸福をもたらす全ての主要な要素、すなわち福祉、自由、寛容さ、誠実さ、健康、収入、そしてすぐれた統治」で高い評価を受けていると報告書は記した。

一方、同報告書によるとアメリカでは過去10年、幸福度が下落している。

「その理由は、社会的支援の減少や政治的腐敗の増加」と報告書は記した。

だが、銃に関して完璧というわけではない。
スイスはまだ、ヨーロッパにおいて銃による事件の発生率が最も高い国、そして死亡事件のほとんどは自殺。

世界を見れば、法による強力な銃規制と銃による死者の少なさには関連がある。スイスでも同様。
スイスでは過去数百年間、各州が銃の規制について定めてきたが、1990年代に犯罪率が増加したことから、1999年に初めて国としての規制を定めた。

以来、銃規制をEUと同等レベルにするためにさらなる条項を加えた。自殺を含めた同国の銃による死者は減少を続けている。

2015年時点で、国民の11%のみが軍で支給された銃を兵役後も自宅に保有していると推定されている。

スイスではほとんどの人が銃の携行を許可されていない。
スイスでは、銃の携行許可を得ることは難しい。軍関係者や警察でなければ、ほぼ許可されない。

「我々は銃を自宅に所有しているが、あくまでも平和的な目的のため。自宅から銃を持ち出すことには意味がない。スイスでは銃を持ち歩くことは違法だから」とチューリヒ大学のマーティン・キリアス(Martin Killias)教授は2013年、BBCに語った。

これほぼ真実。猟師と射撃競技の選手は自宅から射撃場まで銃を携行することを許可されている。だが途中で銃を携行したまま、コーヒーを買いに行くなどということはできない。

また携行中は弾を抜いておかなければならない。スターバックスのような場所での暴発事故を防ぐためだ。アメリカでは少なくとも過去に2度、暴発事故が発生している。