お花見目当ての中国人訪日客は さらに激増しそうな気配
 私はここ数年、中国人のお花見に関する取材を行ってきたが、昨年ごろから強く感じ始めたのは、中国人が入手する情報の多様化、そしてマニアック化に、より拍車がかかっているということだ。

桜だけに限らないが、昨今の中国では、ウィーチャットで情報を集めれば、海外に関することでも、かなり詳細なことまで手に入る。日本に住む中国人留学生の友だちとのやりとりや、日本に詳しいKOL(キー・オピニオン・リーダー)と呼ばれる人々の発信をフォローしているだけで、あっという間に自分も「日本通」「桜通」になれてしまう。前述したような「寒緋桜」もそうだし、静岡県の「河津桜」、福島県の「三春滝桜」などもすでに通(つう)の間では有名。名所だけでなく、地方の開花時期、「桜を窓から鑑賞できる東京都内のカフェ・レストラン」情報まで、もう彼らは知っているのだ。それほどウィーチャットには、ありとあらゆる情報があふれている。


 そんなSNSの恐るべきパワーも後押ししているのか、中国メディア「彭湃」によると、今年の3~4月にかけて日本にやってくる中国人観光客は過去最高の約60万人に達し、消費総額は約80億元(約1348億円)に上るという。中国最大の旅行会社、シートリップがまとめた中国の国内外でのお花見トレンド情報によると、3月になってから「日本+桜鑑賞」などの検索件数が前月比で4倍に増えており、3月下旬から4月下旬にかけて、お花見目当ての中国人の訪日客が激増しそうな気配だ。

 中国では4月上旬に清明節(今年は4月5~7日)という3連休あるが、日本と学校制度が違うので、子どもたちは3月は春休みではない。むろん、仕事も平常通りだが、「せっかくだから会社を休んで日本にお花見に行きたい」という人が少なくないということだろう。

ちなみに、日本政府観光局が発表した昨年(2017年)の中国人月別訪日客数を見ると、突出して多いのは、夏休みシーズンの7月と8月で、3月と4月はどちらかというと多くなかった。2月の春節にたくさんお金を使い、3月は休日が少ないということも関係していると思われるが、どうやら今年は様相が異なるようだ。

「季節限定」のレア感、 「桜=日本」というイメージが広まる
 中国に住む友人たちに、なぜそんなに桜が見たいのか、素朴な疑問を投げかけてみた。すると大きく分けて2つの回答が返ってきた。
ひとつは時期モノというレア感だ。

 「やはり、“季節限定”というところが中国人の心をくすぐるし、ポイントでしょう。この時期しか見られないものですから、何としても見に行かなくちゃ、という感じ。しかも1週間くらいしか咲かないので、何度か日本に来ていても、タイミングが合わなくてまだ自分の目で桜を見ていない人もいます」(上海在住、20代の男性)

 2つ目は桜=日本という強いイメージが、以前よりも多くの中国人に伝わってきたことだ。

 「桜、富士山、ラーメンの3つは以前から日本のイメージでしたが、最近では生活に余裕が出てきたせいか、中国国内でも“お花見”を目当てに旅行する人が増えました。たとえば内陸部の農村に行って菜の花畑で自分の写真を撮るとか。桃や梅のお花見に行くとか。北京や上海、武漢にも桜の名所があり、それらに関する報道も増えてきたのですが、それなら、桜の本場、日本にも行って、ぜひ『日本の桜』を見たいと思うようになったのではないでしょうか」(杭州在住、50代の女性)

これらに加え、同僚が行くなら自分も行く。親戚が行ったのだから、自分だって行かなくちゃ、という横並び意識が彼らの間にあることも関係しているのではないか、と感じている。

 ちなみに、桜の季節になると、日本の百貨店や専門店でも桜をモチーフにした和菓子や洋菓子、桜を描いたピンク色のパッケージの雑貨、化粧品などが次々と限定販売される。日本人にとっては毎年見かける光景であり、春を感じさせてくれるものだが、ある在日中国人の友人は大手コーヒーチェーンで販売していた桜のデザインのマグカップをたくさん買い、4月に中国に帰省するときのお土産にするのだと話していた。限定商品は他のプレゼントよりも喜ばれるのだそうだ。この話を聞いて、私は「なるほど」と思わせられた。越境ECなどで日本製品は常に人気だが、今後は季節限定で発売される商品の需要も高くなってくるのではないだろうか。

 桜といえば日本。日本といえばやはり桜なのだ。中国人のお花見ブームはまだしばらくの間、続きそうだ。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180321-00010001-wedge-cn&p=3