米中貿易摩擦の裏にあるつばぜり合い

アメリカと中国の貿易摩擦がヒートアップしている。

トランプ大統領が直観頼みで唐突に仕掛けたとか、11月の中間選挙が近づいているので過激になっているなどと言われるが、
これは6月の初めに行われる予定のトランプ・金正恩会談を強く意識したつばぜり合いと見るべきだ。

「貿易戦争なんて楽勝さ!」

トランプの一連の貿易措置が北朝鮮との首脳対話をめぐる動きと絡み合うように進んできていることは、時系列的に見れば明らかだ。

3月1日、文在寅大統領がトランプに電話し、近々特使を平壌に派遣と伝える翌2日「貿易戦争なんて楽勝だ」とトランプ・ツイートで“宣戦布告”

6日、南北首脳会談を4月に板門店でと発表

8日、鉄鋼・アルミ輸入制限(この時点で中・韓は対象国)の大統領令に署名

同日夜、米朝首脳会談を5月までに行うと発表

22日、中国の知財侵害に対し制裁発動の文書にトランプが署名

28日、習近平・金正恩会談

29日、トランプが米韓FTA合意保留

4月2日、中国が鉄鋼アルミで対米報復実施

3日、USTRが知財侵害に対する追加関税品目発表。以降、報復合戦に。

アメリカは中朝首脳会談の動きを事前に察知

後付けの説明になってしまうが、アメリカは3月22日以前に中朝首脳会談の動きを察知していた可能性が高い。
その端緒は、中国の楊潔チ国務委員の訪韓日程が3月半ばに変更されたことだ。

16日付の韓国の聯合ニュースによると、当初は全人代閉幕直後の21~22日の予定だった訪韓が、『中国側の事情で』28~29日に再調整されたという。

結果的に、習近平・金正恩会談に同席した楊潔チが、直後に訪韓して文在寅に会談について説明するドンピシャのタイミングになった。

こういう事は偶然には起こらない。

中朝会談の日程が固まったことを受けて訪韓日程が変更されたのだ。

アメリカは当然、日程変更の背景を探り、中朝会談に先んじて対中制裁の発動文書にトランプが署名したと考えるのが自然だ。

ぴったり時期が重なる制裁発動と米朝会談
アメリカが実際の制裁発動まで2ヵ月程度の猶予期間を置いたことも意味深だ。

妥協案を探っているからと説明されるが、その期間はトランプ・金正恩会談までの期間と重なるのだ。
貿易摩擦と北朝鮮を巡る一連の動きは、始まりも終わりも、そして節目もしっかり連動している。

そもそも、中国に貿易問題で圧力をかけて中国が北朝鮮を動かすように仕向けようというのがトランプの基本戦略だ。

去年4月の米中首脳会談で習主席に「北朝鮮問題で協力するなら、中国は対米貿易でより良い条件が得られる」
と伝えたのと同様、現在は、『米朝首脳会談が成功するよう中国が力を尽くさないと、貿易で残念なことになるぞ』と迫っている。

「中国には影響力がある」だから貿易でプッシュ
中朝首脳会談が急きょ行われたことについても、トランプは『北は中国を頼っている。中国には影響力がある』と受け止めたことだろう。

アメリカが北朝鮮を動かす梃子は、軍事的圧力、制裁圧力、中国経由の圧力の3つだが、現状、軍事圧力は休止中。

制裁は2月下旬にアメリカとして「過去最大の個別制裁」を発表して一段落。
従って今は、中国を貿易でプッシュ!プッシュ!する3番目の梃子が頼りとなる。

米朝が不首尾なら対中貿易で“勝利“して結果オーライ
中朝首脳会談の翌日、大筋合意に達した米韓FTAについて「北朝鮮と合意するまで保留するかもしれない。
どうなるか見てみよう」と述べたのも、同盟国に対してすら、北朝鮮問題と貿易問題を露骨にリンクさせる“トランプ流”を示すもの。

日本も適用除外たりえないことは、鉄鋼・アルミで思い知らされた通り。

そして、トランプにとって北朝鮮と貿易の両天秤戦略は、万一、米朝首脳会談が不成立あるいは不首尾となっても、
貿易で中国と果敢に戦う姿を見せ、「良い取引だ」「俺の勝ちだ!」とコア支持層にアピールできれば損はない。

5月からは中間選挙の予備選が本格的に始まり、トランプにとっては共和党の候補者をできるだけ多くトランプ派にすることが喫緊の選挙対策だ。

貿易交渉を行う上で不可欠なTPA=大統領貿易促進権限の3年延長が6月中に認められる必要があり、そのための議会対策も欠かせない。

中国はそういったトランプの事情・思惑・戦略を読みつつ、中国の面子を保つために、北朝鮮と貿易問題を同時に丸く収める最適解を必死に探しているところだ。

派手に演じられる立ち回りの舞台裏に目を凝らしておきたいものだ。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180410-00010011-fnnprimev-int&p=1