◇衝撃の3ゲーム先取
 とどまるところを知らない14歳の成長。卓球ジャパンオープン荻村杯第4日(北九州市立総合体育館)の9日、男子シングルス準々決勝で張本智和(エリートアカデミー)が「世界一」の馬竜(中国)を倒した。東京五輪のシングルス金メダルも現実味を帯びる勝利。会場は称賛に驚きと感嘆が入り交じった異様な興奮に包まれた。

立ち上がりから小気味よいバックハンド、フォアドライブが馬竜のコートに弾んで飛んでいく。「サービスがあんなに効くとは思わなかった」と張本。3球目、5球目攻撃で先手を取り、あっという間の第1ゲーム先取。第2ゲームも9-9からサービスエース、相手のドライブミスで突き放す。
 第3ゲーム10-6から1点を返されたところで倉嶋洋介監督がタイムアウトを取った。ここが最初のポイントだったが、フォアドライブをストレートに決めた。馬竜がノータッチで抜かれる姿に、「加油(頑張れ)、馬竜」と声援を送っていた中国人観客も声を失った。
 それでもさすがに2015、17年世界選手権を連覇し、16年リオデジャネイロ五輪でも金メダルの馬竜。顔色一つ変えず、第4、第5ゲームは威力のあるサービスと低い弾道の両ハンドドライブで張本のミスを誘って11-3、11-2。やはりこれが両者の実力差なのかと、今度は日本の観客が静かになった。
 しかし、第6ゲームの滑り出しで再び張本のサービスが効き、馬竜らしからぬミスも出て4-1。このリードが大きな「貯金」になった。たまらず中国ベンチがタイムを取る。シャツの袖で汗を拭く場面も増えた馬竜が、4-7からサービスエースなどで2点を連取し食い下がったが、ここでひるまないのが張本。チキータで3球目攻撃のミスを誘い8点目。次は思い切って低く速いサービスを相手のバックへ送り、3球目をバックで決めて9点目。サービスで馬竜を苦しめた試合を象徴する1点で、ゴールが見えた。勝った瞬間、両膝をついて天を仰ぎ、ベンチへ戻ってから倉嶋監督と抱き合った。

◇「馬竜より優勝」
 「一番の憧れだった選手に勝ててうれしいです」。あどけなさの残る笑みがこぼれたのは一瞬。その後は冷静に試合を振り返った。「まさか出だしからあんなにサービスが効くとは思わなかったので。まずはラリーで粘ろうと思ったのに3球目、5球目で決めることができた」。特に効いたのは、最近取り組んでいる投げ上げサービス。カタールオープンで対戦した相手のサービスを取り入れたという。
 今の馬竜は、29歳という年齢のせいもあってフォアで回り込む範囲が狭くなり、バックをよく使うようになった。バックが得意な張本の狙いは、フォアを振らせる前にバック対バックで決めることだったが、サービスが効いたため、ラリーになる前に決める得点が増えた。
 4月にアジアカップ(横浜市)で中国の若手エース格、樊振東を破った時は5ゲームマッチだったが、この日は「7ゲームマッチで勝ち切ったのが評価できる。3-2になった時は嫌なムードになったけど」と倉嶋監督。「勝機はある」と見ていたとはいえ、3カ月間に中国の「2トップ」を倒した成長ぶりに、監督も驚きを隠せない。
 張本は「ラリーになって2ゲームを取られたので、第6ゲームはラリーでも粘ろうと思った」という。それを実行できるところがすごさでもある。馬竜と対戦したのは3年前、小学生の時。「あの時はほぼやっていないみたいなもの。初めてやって勝てる相手ではないので、何回負けてもいつか勝てるようにと思っていた」というが、実際に張本の頭の中にあるロードマップでは、東京五輪までには勝ちたいと思っていた。その日がこんなに早く来た。
 馬竜は「きょうは張本の調子がすごく良かった。バックが良かった。私は0-3になって焦った面があった。3年間で大きく成長したのが分かった」と話した。
 しかし、張本の自己採点は「95点。5点はあしたに取っておきます」。出る大会は全て優勝を目指すのが「張本主義」だ。「自分は中国選手には合うみたい。他の国の選手にも負けないようにしたい。馬竜に勝つことではなくて優勝が目標なので」。切り替えの早さは試合中だけではない。大言壮語に聞こえない静かな口調で、頼もしい言葉が続いた。(時事ドットコム編集部)

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