フィリップ・トルシエは、日本が2大会ぶりのワールドカップ勝利を収めたコロンビア戦をどう見ているのか。


西野朗監督の勝利、日本サッカーの勝利と評する理由はどこにあるのか。トルシエが語った。

今大会の勝利の鍵はセットプレーである。

――コロンビア戦、試合は見ましたか? 

 「見た。信じられなかった」

 ――どう分析しますか? 

 「私が思うに、これは日本の勝利にしっかり値する試合だった。たしかに85分間を11人対10人で戦うのは容易であるともいえるが……。

 この試合では、3つのセットプレーから得点が生まれている。PKとFK、CKからだ。今大会の特徴のひとつとして、開幕から多くのゴールがセットプレーによって決まっている、という現象がある。今大会、しくじった2本のPKまで含めて、セットプレーが違いを作り出しているといえる。これが、おそらく勝利を得るための今大会の非常に有効な手段なのだろう。

 前半の日本は、さらに違いを作った。ただ、いくつかの得点のチャンスを作り出し、試合を終わらせることすらできたはずだった。先制点の後にも何度か得点の機会はあったが、日本の選手たちにここで試合を決めてやるという気概は見られなかった。相手の気持ちを折ろうとする意志も感じられなかった。

 だから、私はハーフタイムにはむしろ少し不安を感じたほどだ。日本が優位を生かすチャンスを、みすみす逃していくように見えたからだ。先制点を挙げた優位、人数がひとり多い優位を。

 日本代表の選手たちは、パーソナリティーを欠いたうえにナイーブさを露呈したようにも見えた。コロンビアの同点ゴールを見た瞬間には、せっかくの機会を台無しにしてしまったと思ったほどだ。

 しかし後半はとても成熟したプレーを見せた。逆にコロンビアは、今日は勝てないと感じたのだろう。引き分けならば悪くはないと彼らは思ったはずだ。だから試合をそのまま終わらせようとした。疲労も明らかだった。最終的には……日本の方がずっと成熟しており、目的のために試合をよくコントロールしていたと言えるだろう」

これはまさに「西野監督の勝利」である。

――日本のペースで試合を進めていた、ということですね。

 「たしかに11人対10人で、容易だったという背景こそあるが、日本は決してしくじることはなかったと思う。特に後半は、数的優位を生かし切った戦いを見せた。前半はナイーブなサッカーに陥り、パスも不正確で得点のチャンスも決めきれなかった。

 相手にもっと恐れを感じさせることすらできたのに……だから同点ゴールを決められたときには信じられない思いだったよ。しかし一転、後半は急にプレー内容が良くなった。コロンビアとしては“今日は日本の方が強い、自分たちは勝てない”と認識していったはずだ。

 これはまさに『西野監督の勝利』である。

 柴崎や乾、香川、原口、大迫らを起用して彼は攻撃的なチームを見事に作りあげた。しかも、目指したのは日本式のパスサッカー、それも両サイドの酒井と長友が高い位置に上がる攻撃的なサッカーだった。そんな戦略プランが見事に当たったゲームで、試合中の指示も的確だった」

同点の後は、自滅する可能性さえあった。
 ――数的不利になった後、コロンビアは引きすぎたきらいはありませんか。常識的な対応だったのでしょうか? 

 「引いたわけではない。彼らは戦略的に攻撃の機会をうかがっていただけだ。実際にチャンスも作り出したが、正確性を欠いて決められなかった。ボールを簡単に失ったのは、彼らが個人技に走ったからではなく、責任の重圧が選手にのしかかっていたからのように見えた。ところが日本もまたナイーブで、選手たちは確固としたパーソナリティーを欠いた。

 繰り返しになるが、同点の後は自滅する可能性さえあったと思うし、私の脳裏には実際にハーフタイムにはそうした疑念が渦巻いていたくらいだ」

2010年ワールドカップを思い出した。
 「チャンスを逃さずにモノにした日本は勝利に値した。11人対10人の優位はあったものの知的で決意にあふれ、とても攻撃的だった。そして自らの長所であるコレクティブなプレーを披露した。両サイドの長友と酒井は高い位置から攻撃を仕掛けて……」

 ――聞いている限り……つまり、西野ジャパンは急激に進化したということですか? 

 「もちろん11人対11人だったらどうなっていたかはわからない。それはわからないが、今日の試合はこれまでのテストマッチとはまったく異なっていた。

 このチームを見て私は2010年ワールドカップを思い出した。まったく同じことが起こっているように思える。大会前は誰もが日本に不安を感じ、危機的な状況にあった。だが、カメルーン戦の勝利が、南アフリカワールドカップを素晴らしい大会へと変えた。それと同じ感覚を私はこの試合で覚えた」

つづく

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180624-00831161-number-socc&p=1


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