米ワシントン州シアトルの連邦地裁は31日、3Dプリンターで銃が造れるソフトウエアについて、一般への公開差し止めを命じた。

銃所持の権利を訴える団体「ディフェンス・ディストリビューテッド」は今年6月に、銃の製造方法をインターネット上に公表する許可をめぐる訴訟でトランプ政権と和解し、1日にソフトウエアのダウンロードを可能にする予定だった。

しかし、8つの州および首都ワシントンのコロンビア特別区は、連邦政府による許可の差し止めを求めて先月30日に提訴。追跡不可能な銃が出回ることは安全を脅かすと主張した。

シアトル連邦地裁のロバート・ラズニック判事は、ソフトウエアが悪の手に渡る可能性があるとして、日付が公開予定日の8月1日に変わる数時間前に暫定的差し止め命令を出した。

ラズニック判事は、「3Dプリンターは公立大学や一般に公開された場所に存在しており、取り返しの付かない損害を生じさせる可能性がある」と述べた。

ラズニック判事は8月10日に再び審理を行うとした。

ディフェンス・ディストリビューテッドによる公開予定は1日だったが、先月27日以降、1000人以上が半自動ライフル銃「AR15」を造れるソフトウェアをダウンロードしている。AR15は、米国で起きた銃乱射事件の多くで使われている。

トランプ政権の決定に対する訴訟は、ワシントン州のボブ・ファーガソン司法長官が起こした。

ニューヨーク、ニュージャージー、マサチューセッツ、コネティカット、ペンシルベニア、オレゴン、メリーランドの各州に加えて、コロンビア特別区が訴訟に参加している。

原告は、8月1日に予定されていたソフトウエア公開を「一度鳴らせば、なかったことにはできない鐘」だ述べている。

原告は、「許可に伴う国家安全保障上の影響や、主権が与えられた米各州の、州内の人々を守る能力への影響について、政府は判断していない」と指摘した。

これに加え、州検事総長20人が国務省と司法省に対して、3Dプリンター銃の設計図のネット公開について書簡を送っている。

差し止め命令への反応連邦地裁の前で記者会見したワシントン州のファーガソン司法長官は、差し止め命令を「完全で圧倒的な勝利」だと述べた。

「ラズニック判事は我々が求めていた全てを認めた」とファーガソン長官は語り、「(製造に関する)情報を誰かに提供することは誰であっても非合法」にするよう、ドナルド・トランプ大統領に求めた。

トランプ大統領は31日、ツイッターで、「3Dプラスチック銃の一般販売について調べている。NRA(全米ライフル協会)とすでに話をした。どうも理屈が通ってないな!」とコメントした。

しかし、ディフェンス・ディストリビューテッドを創設したコーディ・ウィルソン氏はBBCに対し、3Dプリンター銃は公衆の安全を脅かさないと語った。

「犯罪に使われたのを見たことがない」とウィルソン氏は述べ、「私が知る限り、過去にこの銃で逮捕されたのは1人だけで、作り方に興味を持った日本の男性だった」と話した。

3Dプリンター銃はどうやって生まれたのか

3Dプリンター銃をめぐる議論は、ウィルソン氏が2013年に世界初の3Dプリンター銃を公開したことがきっかけになった。

直後に、ディフェンス・ディストリビューテッドのウェブサイトで3Dプリンター銃を作る方法を説明したファイルがダウンロード可能になり、ダウンロード件数は何十万にも達した。

これを受け米国務省は、ネット上でのファイル公開を停止するよう同団体に命令した。

ディフェンス・ディストリビューテッドはこれに対し、銃所持の権利を擁護する団体で、市民が武装する権利を認める合衆国憲法修正第2条から名称をとった「セカンド・アメンドメント・ファウンデーション」と共に、国務省を提訴。法廷論争は4年間にわたった。

米司法省が6月に3Dプリンター銃のソフトウエア販売を認め、ディフェンス・ディストリビューテッドと和解したことは、驚きをもって受け止められた。司法省は、米国民が技術的なデータを「手に入れ、意見を交換し、使用し、再現する」のを許可すると述べた。

ウィルソン氏は、「ダウンロード可能な銃の時代」の幕開けになったと語り、自分の主張が認められたことを歓迎した。

しかし、政府が存在を把握できず、追跡もできない未登録の銃、いわゆる「幽霊銃」が大量に出回ることを懸念する声が出ている。

訴訟が始まって以降、ディフェンス・ディストリビューテッドは銃の新たなデザインの開発に取り組んできたほか、「ゴースト・ガナー」の名前で知られる、ネット上で購入した部品を組み立てることで銃を完成させる装置100万台を製造した。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180801-45027899-bbc-int