国内経済・社会に蔓延する危機的状況とマケドニア・トルコとの小競り合いの行方は
ギリシャは2010年以降、経済の低迷に苦しんでいる。元凶は、長年の借金によって財政赤字が膨らみ、破綻の瀬戸際に立たされたことだ。

EUは、加盟国であるギリシャの救済に乗り出した。それと引き換えに厳しい緊縮財政を強いられたギリシャ国内では、緊縮策への反発からEU離脱を支持する声も吹き荒れた。

それに加えてギリシャは、隣国マケドニアに攻め入る意思をちらつかせている(原因は「マケドニア共和国」という国名だ)。さらに長年の宿敵であるトルコとは、領有権を争う島々や沖合にありそうなガス田をめぐって対立している。

ギリシャは一体なぜ、これほどの火花をヨーロッパにまき散らすのか。

10年にデフォルト(債務不履行)への不安からギリシャ国債が暴落すると、ギリシャ危機はユーロ圏を崩壊させるかに思われた。ギリシャの失業率は08年の約8%から15年には約25%に上昇し、この間にGDPは実に約45%縮小。ギリシャがユーロ圏を離脱し、デフォルトに陥るというシナリオも想定された。

しかしギリシャの10年以降の低迷は、「怠惰」なギリシャ人が引き起こしたものではなく、ユーロ圏の構造的な問題と、10年頃からの世界的不況が原因だ。統計によれば、ギリシャ人の労働時間はドイツ人よりも長い。

<社会保障を7割カット>

いま表面化しているマケドニアやトルコとの対立の歴史も、財政危機のはるか前にさかのぼる。ギリシャは数十年もの間、ギリシャ北部のマケドニア地域について、同じ名前の国、マケドニアが領土的野心を示すことを危惧していた。一方で、トルコとの領土紛争は、ギリシャが1832年にオスマン帝国から独立したときから続いている。

ギリシャ国内の反EUムードは、ギリシャ危機後にEUによって課せられた緊縮政策によるところが大きい。ギリシャは、危機への対応策として予算を均衡化するため年金と社会保障を7割カットし、公益事業などの民営化や増税に踏み切った。

締め付けは、経済的にも社会的にも政治的にも厳しく、疲弊したギリシャはユーロ圏からの離脱を選択するのではないかと懸念された。緊縮財政によって当然ながら失業率は急上昇し、賃金は約2割低下した。

状況は少しずつ改善

ギリシャで反EUの風潮が強まったのは、こうした流れの中でのことだ。ポピュリズムは右派と左派の双方で台頭した。長いことくすぶっていたマケドニアとトルコとの間の火種は、ナショナリストにとって勢力拡大に使える格好の道具になった。

しかし、現在のギリシャの状況は少しずつ改善しているようにみえる。

GDPは過去1年で2.3%の伸びを見せ、失業率は約21%に低下。今年6月にはユーロ圏と3回目にして「最後」となる10億ユーロの追加支援策に合意した。こうしてギリシャはこの8月、金融支援から8年ぶりに「卒業」し、負債は今後30年で返済できる見込みだ。

マケドニアについても風向きはいくらか改善しており、9月末にはマケドニアが国名を「北マケドニア共和国」に変更する是非を問う国民投票を実施する。昨年はトルコのエルドアン大統領が、同国の大統領としては65年ぶりにギリシャを訪れた。

しかし、火種はまだ消えていない。ユーロ圏は今もギリシャに、60年まで2.2%の成長率維持を義務付けている。

来年、ギリシャは議会選挙を控えている。経済が改善されながらも困窮が続く状況では、これからも国民の不満が反ユーロ圏政策という形で表面化していくだろう。

経済の改善を帳消しにしたり、反EU感情に火を付けるには、新たな危機が1つあれば十分だ。マケドニアかトルコと衝突する政治危機か? それともアメリカ主導の世界貿易戦争という経済危機か?

しかし国民の最大の関心は、景気低迷から脱することにあるはずだ。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180814-00010003-newsweek-int&p=1