【カイロ=佐藤貴生】対米関係悪化という要素を除いても、トルコ経済がいずれ行き詰まるとの懸念は、以前から指摘されていた。エルドアン政権の経済政策が首をかしげざるを得ないものだったからだ。通貨リラが急落した10日を「トルコのブラック・フライデー」と称する海外メディアも現れ、経済手腕への不信感が高まっている。

 トルコ経済の傷口が広がった最大の原因は、リラが今年に入り対ドルで40%も下げ続けたのに、政策金利の大幅引き上げを避けてきた点にある。

 市中のカネがだぶついて通貨の価値が下がった場合、供給量を絞る金利引き上げが最も有効な手段の一つとなる。しかし、利上げで景気が冷え込むことを嫌うエルドアン大統領はこれに反対し、中央銀行の通貨政策に介入し“切り札”を封じてきた。6月の大統領選で再選した後には、娘婿を財務相に起用し、市場の不信感を増幅させた。

 トルコ・バフチェシェヒル大のギュルセル教授によると、同国の人口増加率は1%以上に上り、働く女性も急増。就職口を大量に増やす必要があり、そのためにはGDP(国内総生産)成長率を5%以上で維持しなくてはならない。同教授は「エルドアン氏は高いGDP成長率を維持し、雇用を拡大して失業率を下げたかったのだろう」とみる。

 補助金の増額や減税の実施などを行った結果、内需を刺激し昨年のGDP成長率は前年比7.4%を確保。今年4月には失業率も9.6%と10%台からやや持ち直したが、インフレ率は最近、15%を突破した。経済の拡大成長を重視しすぎるあまり、リラ安とカネ余りがインフレを加速させた形だ。

 トルコ企業は政府の後押しもあり、多額の借入金を抱えている。中でも欧州の金融機関の外貨建て債務が多いとされ、リラ急落でドルやユーロ建ての返済額が膨れ上がり負担となって重くのしかかりそうだ。在トルコの西側外交筋は、「エルドアン氏は経済通というよりも、大型の建設プロジェクトなど“ハコモノ好き”だったのではないか」との見方を示している。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180815-00000593-san-m_est


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