米中貿易戦争でアメリカとつばぜり合いを続ける中国。アメリカに対して強気姿勢を見せているウラで、じつは中国国内では新しい問題が次々に勃発している。日本のメディアが報じないそのヤバイ現実を、『未来の中国年表』著者の近藤大介氏が明かす。

アメリカが最も恐れていること
 米トランプ政権が、中国製品に関税をかけたり、中国からの投資に規制をかけようとしたりと、「なりふり構わぬ」格好で、中国を潰しにかかっています。

 なぜトランプ政権が、このような行為に及ぶのかと言えば、それは「未来の中国年表」を見ると一目瞭然です。「未来の中国年表」とは、「人口はウソをつかない」をモットーに、人口動態から中国の行く末を予測したものです。

 現在の米中両大国の人口を比較すると、中国は、アメリカの約4.2倍の人口を擁しています。

 経済規模(GDP)については、2017年の時点で、63.2%まで追い上げています。このペースで行くと、2023年から2027年の間に、中国はアメリカを抜いて、世界ナンバー1の経済大国となるのです。

 先端技術分野に関しては、アメリカにとってさらに深刻です。

 国連の世界知的所有権機関(WIPO)によれば、各国の先端技術の指標となる国際特許出願件数(2017年)は、1位がアメリカで5万6624件ですが、2位は中国で4万8882件と肉薄しています。

 しかも企業別に見ると、1位が中国のファーウェイ(華為)で4024件、2位も中国のZTE(中興通訊)で2965件。

 3位にようやくアメリカのインテルが来て2637件となっています。トランプ政権がファーウェイとZTEの2社を目の敵にしているのも、アメリカの焦燥感の表れなのです。

 これに加えて、消費に関しては、14億中国人の「爆消費」が世界経済を牽引していくことは、「未来の中国年表」から見て、間違いありません。5年後には、中間所得者層が4億人を突破し、彼らの「爆消費パワー」は、計り知れないのです。

 例えば、世界最大の電子商取引企業アリババ(阿里巴巴集団)は、毎年11月11日を「消費者デー」に指定して、24時間の特売を行っています。

 昨年のこの日の売り上げは、1682億元(約2兆8000億円)に達し、これは2016年の楽天の年間取扱額に、ほぼ匹敵する額です。

 中国でアリババのライバルである京東も、6月1日から18日までを「消費者デー」に定めて、同様の特売を行っています。今年のこの期間の京東の売り上げは、1592億元(約2兆7000億円)に達しました。

 このように、近未来の世界のマーケットは、まるで中国という巨大な掃除機に吸引されていくかのように動いていくことになります。それは、日本企業もアメリカ企業も同様です。

急増する「空巣青年」問題

それでは、近未来の世界は中国の天下になるのかと言えば、必ずしもそうではありません。EU28ヵ国、ASEAN10ヵ国のそれぞれ2倍以上の人口を擁する中国は、悩みもまた2倍以上(? )と言えるのです。

 たとえば中国は、1978年に始まった改革開放政策に伴って、「一人っ子政策」を、2015年まで続けました。憲法25条に「国家は一人っ子政策を推進実行する」と明記し、違反者には厳しい罰則を定めました。

 21世紀に入って、「一人っ子政策」の弊害が多方面に表れてきましたが、その最たるものが、いびつな男女差です。

 特に農村部では、どうせ一人しか産めないなら男児を産もうということで、さまざまな方法を使って男児を産んだため、子供の男女比が120対100くらいまで開いてしまったのです。

 国連では107までを「正常国家」と定めているので、中国は明らかに「異常国家」です。

 その結果、2年後の2020年には、結婚適齢期の男性が、女性より3000万人も多い社会になります。中国では「3000万人独身男の憂鬱」と題した記事も出ています。

 彼らは「剰男」(余った男)と呼ばれていますが、嫁を探しにアフリカまで出かける「剰男」も出ているほどです。

 さらに、結婚を半ば諦めた「空巣青年」も急増中です。親元を離れて都会で一人暮らしをし、スマホばかり見て引きこもっている若者を「空巣青年」と呼ぶのです。

 若者に関して言えば、2022年に大学の卒業生が900万人を超えます。中国の大学生は昨年9月現在、3699万人もいて、世界の大学生の2割を占めます。日本の約13倍の学生数で、経済規模は日本の2.5倍もないので、就職先がまったく足りません。

 若年失業者が増すと、反政府運動などを起こすリスクも増すので、中国政府は必死に起業を勧めています。昨年は、年間600万社以上が創業し、1351万人の新規雇用を確保したと誇りました。

 2人で起業した企業が600万社できれば、それだけで1200万人の雇用を確保したというわけです。

 ところが、600万社がその後、どうなったかについては、発表がありません。おそらく、死屍累々の状況が生まれているはずです。それでも、「その日の就業」を最優先するという究極の自転車操業社会です。

「マンション離婚」がとまらない理由
2024年になると、年間600万組が離婚する時代になります。つまり1200万人で、これは東京都の人口に近い数です。ちなみに日本の離婚件数は21万7000組(2016年)なので、中国では日本の27.6倍も離婚していくことになります。

 北京や上海などの大都市では、離婚率はすでに4割に達しています。離婚率が5割を超えるのもまもなくです。

 逆に結婚件数は5年で3割減っているので、中国は近未来に、年間の離婚件数が結婚件数を上回る最初の国になるのではという懸念も出ているほどなのです。

 なぜこれほど離婚が多いのかと言えば、その大きな理由として、やはり「一人っ子政策」の弊害が挙げられると思います。

 彼らは幼い頃から、「6人の親」に育てられると言います。両親と、両親のそれぞれの両親です。

 祖父母が4人、親が2人、子供が1人であることから、「421家庭」という言葉もあります。そのため、男児なら「小皇帝」、女児なら「小公主」と呼ばれ、贅沢かつワガママに育つのです。

 そんな彼らが結婚しても、我慢することが苦手で、かつ便利な両親の実家が近くにあるため、容易に人生をやり直してしまうのです。

 さらに、中国特有の離婚も急増中です。それは「マンション離婚」と呼ばれるものです。

 マンション投資が過熱すると、価格が急騰して庶民が買えなくなるため、政府は2011年以降、「ひと家庭に1軒のみ」といったマンション購入制限令を出してきました。

 それならば「離婚してふた家庭になれば2軒買える」というわけで、「マンション離婚」が急増したのです。そのため、例えば北京市役所は「1日の離婚届受け付けを1000件までとする」という対策を取っているほどです。

 2025年になると、中国は深刻な労働力不足に見舞われます。15歳から64歳までの生産年齢人口に関して言えば、すでに2015年頃から減少しています。

 労働力の絶対数が減り続ける上に、一人っ子世代は単純労働を嫌うので、大卒者の給料よりも単純労働者の給料のほうが高いという現象が起こってしまうのです。

 中国政府は、労働力不足の問題を、AI(人工知能)技術を発展させることでカバーしようとしています。世界最先端のAI大国になれば、十分カバーできるという論理です。

超高齢化社会・中国の末路
しかし、労働力不足はある程度、AI技術の発展によって補えたとしても、来る高齢社会への対処は、困難を極めるはずです。

 国連の『世界人口予測2015年版』によれば、2050年の中国の60歳以上人口は、4億9802万人、80歳以上の人口は1億2143万人に上ります。

 「私は還暦を超えました」という人が約5億人、「傘寿を超えました」という人が、現在の日本人の総人口とほぼ同数。まさに人類未体験の恐るべき高齢社会が、中国に到来するのです。

 しかし現時点において、中国には介護保険もないし、国民健康保険すら、十分に整備されているとは言えません。そのため中国では、「未富先老」(未だ富まないのに先に老いていく)という嘆き節が流行語になっているほどです。

 実はこの未曾有の高齢社会の到来こそが、未来の中国にとって、最大の問題となることは間違いありません。日本に遅れること約30年で、日本の10倍以上の規模で、少子高齢化の大波が襲ってくるのです。

 そうした「老いてゆく中国」を横目に見ながら、虎視眈々とアジアの覇権を狙ってくるのが、インドです。インドは早くも6年後の2024年に、中国を抜いて世界一の人口大国になります。

 しかも、2050年には中国より約3億人(2億9452万人)も人口が多くなるのです。15歳から59歳までの「労働人口」は、中国より3億3804万人も多い計算になります。

 2050年のインドは、中国と違って相変わらず若々しいままです。

 つまり中国にしてみれば、21世紀に入ってようやく、長年目標にしてきた日本を抜き去ったと思いきや、すぐにインドという巨大な強敵を目の当たりにするのです。

 中国は2049年に、建国100周年を迎えます。その時、「5億人の老人」が、しわくちゃの笑顔を見せているとは限らないのです。

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近藤大介(こんどう・だいすけ)
中国・朝鮮半島取材をライフワークとする。25冊目の新著『未来の中国年表 超高齢大国でこれから起こること』(講談社現代新書)が好評発売中

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180828-00056400-gendaibiz-int