「熱狂」の現場はいま
日本勢が過去最多13個のメダルを獲得した、今年2月の韓国・平昌オリンピック。

羽生結弦選手の66年ぶりとなる五輪連覇。金メダルに輝いたスピードスケート小平奈緒選手が、銀メダルに終わったことで涙を流す韓国人選手を抱きかかえる感動のシーン。
多くの人たちが「スポーツの力」に心を動かされたのではないだろうか。

あれから半年…。

「熱狂」の現場は今、とんでもない事になっていた。

江原道の旌善(チョンソン)アルペン競技場。
アルペンスキー競技が開催された正真正銘の五輪会場だ。
しかし今では…

リフトの横を勢いよく流れる泥水。
半年前まで使われていたとは想像できない光景だ。

今にも倒れそうな痩せ細った木。
ところどころで斜面が崩れてしまっている。
既に木の根がむき出しになるほど、土砂が流されてしまっている。

5月、6月に集中豪雨に見舞われた時は、近隣の住民が土砂崩れを心配して避難する事態に。

なぜ、こんなことになってしまったのか。

五輪のために…「生態系の宝庫」破壊で競技場建設
韓国メディアによると、この場所はもともと山林保護区域。樹齢500年を超える樹木や貴重な植物がある原生林で、「生態系の宝庫」とまで呼ばれていた。競技場はその原生林を伐採して一から造られた。当初の計画では五輪終了後、原状回復させて元の豊かな自然に戻すはずだった。

しかし平昌五輪終了後の3月、韓国の文化体育観光省の長官の一言が事態を急変させる。
「政府が予算を出してでも、本来の目的(スポーツ施設)に合う方向で活用案を模索する」

合意形成できず半年間も放置…「大きな厄介者」
これを受けて、地元自治体(江原道)は「2021年冬季アジア大会」の南北共同誘致に乗り出すことを表明。原状回復は「大会終了後」との要望を出した。

これに対して地元の環境団体は「貴重な自然をいち早く全て復元するべきだ」と批判。

一方、地元の住民たちが求めたのは「競技場の保存」。「地域経済を発展させる唯一の希望」などと声をあげ、ソウルの大統領府前で抗議集会を開いた。

結局、韓国政府内でも意見が割れ、管轄する韓国山林庁は「来年春から原状回復作業を始める」との計画を出したが、それぞれの思惑が複雑に絡み合い、合意形成は今もなされていない(18年8月時点)

貴重な自然環境を壊してまで造られた競技場。それが半年間放置され、今では韓国メディアに「大きな厄介者」と揶揄される始末だ。

東京五輪は「環境への配慮」にも注目

東京五輪は「環境への配慮」にも注目
東京五輪はどうだろうか。2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会が公表した運営計画を見てみると、「より良い未来へ、ともに進もう」をコンセプトに「持続可能性」に配慮した形となっている。

5つの主要テーマの中の一つ「大気・水・緑・生物多様性等」には、主な取り組みとして「既存樹木への配慮や在来種による競技会場の緑化により、海上公園等周辺の緑との調和も図りながら生態系ネットワークを創出」などとある。

確かに、韓国の地方都市と大都市・東京を純粋に比べることはできないだろう。ただ、競技を楽しむだけでなくその前提として、「環境への配慮」が十分になされているか注目する必要がありそうだ。記念すべき東京五輪の後味を悪くすることだけは、避けなければいけない。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180910-00010001-fnnprimev-int&p=2