【AFP=時事】フランス人にとって、マクドナルド(McDonald’s)といえば長年、悪口を言いたくなるブランドだった。


マクドナルドは1970年代以降、美食で知られるフランスの地に「ひどい食事」を上陸させ、何百万というフランス人に高カロリーの米国風ファストフードを広めてきたと責められていた。

 また世界のどの国よりも自国の言葉や文化の保護に熱心で、グローバリゼーションに今も懐疑的なフランスで、マクドナルドは米国の経済や文化帝国主義のシンボルとして、特に左派の抵抗を受けた。

 かつて大統領選に出馬したこともあるフランスの農民運動家ジョゼ・ボベ(Jose Bove)氏は、1999年に仏南部で店舗を破壊するなどマクドナルドへの反対運動を通じて、政治キャリアを築いていった。

 しかし、事態は反転。食に関するフランスの純粋主義者たちはむせ返るかもしれないが、南部マルセイユ(Marseille)の貧しい郊外では、政治家を含む運動家たちが今、マクドナルドを閉鎖に追い込むためではなく、救うために動いている。

 先月、マルセイユのマクドナルドを訪れた左派強硬派の地元議員、ジャンリュック・メランション(Jean-Luc Melenchon)氏は歓声と拍手を浴びながら、こう述べた。「外から見れば、他のレストランと変わらないかもしれない」「しかし、この店はこの地域で唯一続いている場所であり、友人と一緒に何か飲んだり食べたりできる場所である」

 マクドナルドの閉店を回避しようというこの運動には、地元の社会党や共産党の関係者も加わり、多国籍企業への反対運動で知られる政治家らが、異例の展開を繰り広げている。

 だが、この運動によってもう一つ、フランスの貧しい郊外で、米国のファストフードチェーン大手が地域コミュニティーの柱になっていること、つまり、そうした郊外には他の施設やビジネスチャンスがないことが浮き彫りになっている。

■麻薬と貧困
 このマクドナルド店舗は、マルセイユ市北部の荒廃したサンバルテルミー(Saint-Barthelemy)地区にあり、脇には一部完成している幹線道路が通っている。この地区はイスラム教徒が多い多民族地域で、同市の最貧困層が住む団地もある。

 労働組合員らによると、この地区でマクドナルドは地元スーパーに次ぐ2番目に大きな雇用主として、77人を雇い入れている。

 住民らは、店や会社が徐々にこの地区から撤退する一方で、麻薬の密売が横行し、地元の失業者たちに実入りは良いが危険な仕事の機会を与えていると嘆く。

 そうした中、マクドナルドは1992年のオープン以来、犯罪行為の阻止に一役買ってきたと、従業員や労働運動家らは話す。従業員の一人、ノルディーヌ・アクリル(Nordine Aklil)さん(27)は「マクドナルドはいわば、僕を救い出してくれた」「刑務所から出てきて、マクドナルドは要するに更生の機会をくれたんだ」と語り、「人生をもっと安定させることもできた」と続けた。

 この地区の労働者階級による共同体(コレクティブ)「SQPM」のメンバーのサリム・グラブシ(Salim Grabsi)さんも、マクドナルドが「社会的役割」を果たしてきたという意見に同意する。「実務研修を受けていない若者たちは、ここに来る」と言う。「学校に行きたくない、学校に興味を失った子どもたちが、ドラッグなどへたどり着くのを防ぐために就く最初の仕事は大抵、マクドナルドだ」

■立派に巣立つきっかけ
 しかし今、このマクドナルドは閉店の危機にある。同社フランス法人との合弁でこの店舗を運営しているフランチャイズオーナーが、赤字店舗だとして、ムスリム住民をターゲットとするハラルフードチェーンに売却したがっているのだ。

 だが、従業員らは採算が取れないというオーナーの主張に反論し、数か月にわたって抗議を続けている。売却は余剰者解雇手当の支払いを避けるためのオーナーの策略だと彼らは主張し、裁判に訴え出た。

「マクドナルドの給料が悪かろうと、労働条件が悪かろうと、この地区の住民の生活すべてが、この仕事、この店を中心に回っている」と、従業員側の弁護士は語る。「マクドナルドはそのことに気付く必要があるし、彼らにはそこから立派に巣立つことが必要なんだ」

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