噂の心霊スポットで写真を撮ると、そこには自殺した老婆の霊が……。女性タレントは悲鳴を上げ、男性司会者は慌てて撮影を打ち切らせるーー。

 視聴者の背筋を凍らせる「心霊番組」。この夏も、各局で相次いで特別番組が放送された。

「この世に心霊なんていませんよ。なぜなら、番組で使われている写真や映像は、すべて私たちが作っているんですから(笑)」

 そう話すのは、映像企画制作会社を経営するU氏。心霊写真を提供した番組数は、誰もが知る有名番組を含む50以上。大手レンタルビデオチェーンにも、自社レーベルの心霊・ホラービデオのコーナーがある、業界の有力者だ。

「今まで500カ所以上の心霊スポットを訪れました。しかし、一度もそういった現象に遭遇したことはありません。先週の撮影もそう。霊媒師さんが、『あそこに黒い影が!』と叫び、我々はカメラを向けるわけですよ。だけど何も見えないし、映らない。それだと怖さが出ないので、画像を加工するのです」

霊媒師なんて、誰でもなれるとU氏は言う。

「過去に弊社も、ある売れない役者を霊媒師に仕立て上げたことがあるんです。アイドルを心霊スポットに連れていってもらい、『あそこに女が!』と叫ばせたり、霊に憑依されてもらったり(笑)。

 最初は『演じるってやっぱ楽しいですね』なんてノリノリだったんですが、ほどなく辞めてしまいました。霊ではなく、罪悪感に取り憑かれたようです(笑)」

 現在では、U氏の会社は心霊映像制作がメインだが、映像の中に静止画像を差し込むなど、作り方は、心霊写真と基本的に変わらない。

「1980~1990年代のブームのときは、大変でした。画像を切り抜いて、重ねて、その上から写真を撮る超アナログ作業。現場に直接仕込むケースもありました。いまは、心霊写真1枚作るのに要する時間は、わずか数十分ですよ」

 では、心霊写真はどのようにして作られるのか。

「心霊写真を作るうえで重要なのは、“自然な合成” と “エピソード” です。素材は、ネット上の適当な写真を拾って、誰だかわからないように加工して使うこともありますが、弊社の場合は、心霊の役となるおばあさんを連れてきて、貸しスタジオで撮影することが多いですね」

なんと、心霊の役は完全な素人。町中で「心霊モデルしませんか?」と声をかけるという。定番のスカウトスポットは、巣鴨や地域の公民館。拘束時間はだいたい1時間で、ギャラは1万2000円だ。

「やはり、心霊に向いているのは年配の女性ですね。老人の独特のシワや輪郭は、フォトショップ(画像加工ソフト)では作れません。自然な素材を生かしたほうが、いいものができるんです(笑)。

 友人を紹介してもらうことも多いですが、『自分は心霊を演じた』と外部に漏らされないよう、NDA(秘密保持契約)もちゃんと結んでいます」
こうして撮影した素材が、数千枚はストックされているという。写真は、会社のPCでさらに加工する。

「まず、女性を切り抜いて、合成させたい写真に配置します。あとは、全体的なバランスを調整しながら、色味を変えていきます」

 エピソード作りにもノウハウがある。

「心霊エピソードには、実際に、その場所で事故や犯罪があったパターンと、ゼロから創作するパターンがあります。撮影部隊がアドリブで話しているセリフに合わせて、ナレーション原稿を作ることもあります。ホラー映画の設定をパクって、アレンジして使用することも多いですが、やはり現実のエピソードには敵いませんよ」

実は、業界にも変革の波が押し寄せている。

「ピーク時は、テレビ局からのギャラは、写真1枚2万円以上で、数十枚を受注していました。ピーク時より儲けは落ちましたが、他ジャンルの人たちからすれば、『こんな低予算で、こんなに儲かるの?』と思われると思います(笑)」

 だが、10年ほど前は全国で数社しかなかった心霊画像の制作メーカーは、現在は数十社が乱立。市場は食い合い状態だという。

「大ヒットした心霊ビデオシリーズのスタッフが相次いで独立したあとは、DVDは1カ月に50作品以上は出ていると思います。さらに、画像加工ソフトが普及して、テレビ局が自分たちで心霊映像を作ってしまうことも増えてきました。素人に毛が生えたくらいのスキルでも簡単に作れちゃうので、外注は減ってきていますね」

現在は、他分野の映像制作も請け負うようになったというU氏。現在の「心霊班」は3人で、そのほかにアルバイトの学生部隊がたくさん在籍している。

「サークルの飲み会や、ゼミの授業風景をゲリラで撮影してもらい、映像ひとつにつき5000円で買い取っています。撮られている側は、心霊映像に使われているとは思わない。いまは視聴者の目が肥えてしまって、作りものだと承知のうえで、いかに怖がらせてくれるかを楽しみにしている。撮影方法は過激化しています」

そんな杜撰な制作態勢だけに、トラブルもつきものだ。

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