【北京=西見由章】毛沢東の肖像画を掲げている中国・北京の「天安門」前では25日、安倍晋三首相の訪中に合わせて10対の日の丸と中国国旗「五星紅旗」が数十メートルおきに設置され、全国から押し寄せた中国人観光客の頭上で翻っていた。

 安倍首相は同日夜の李克強首相との非公式晩餐会に続いて、26日昼には李氏夫妻主催の歓迎昼食会、夜は習近平国家主席夫妻との夕食会も予定される“熱烈歓迎”ぶり。昨年12月に韓国の文在寅大統領が訪中した際、中国要人との会食が少なく「一人飯」批判が起きたのとは対照的だ。

 2012年9月、尖閣諸島(沖縄県石垣市)の国有化に反発した中国当局は全土で官製の反日デモを展開し、日系工場は破壊され日章旗が焼かれた。その前月には駐中国大使の公用車が襲われ国旗が奪われる事件まで起きた。6年前の出来事だが隔世の感がある。

 米中貿易摩擦の泥沼化を背景に中国が対日接近を強める中、共産党内でじわりと存在感を高めているのが李氏だ。5月の訪日については「日中関係を正常な軌道に戻した」と自ら成果を強調する。習氏による権力集中の陰でかすんでいた李氏だが、共産党関係者は「今年3月以降、李首相の権限を強める方針が決まったようだ。象徴的な変化が訪日だった」と指摘する。

 中国メディアの対日論調も一変している。これまで安倍首相に「右翼の政客」とレッテルを貼っていたタカ派の環球時報は25日付の社説で「中国社会は日本が軍国主義を復活させようとしているとのイメージを抑制しなければならない」と主張し、日本の軍事的な脅威や侵略への警戒心を鼓吹しないよう訴えた。まさに手のひら返しだ。

 中国メディアの関係者によると、安倍首相の訪中を前に当局の宣伝部門は国内の報道機関に対し「対立する問題への言及を極力控え、プラスの面を取り上げる」よう指示。中国の巨大経済圏構想「一帯一路」と日米豪印の「インド太平洋戦略」との対抗を強調しないよう求めた。また首脳会談で東シナ海などの海洋問題について進展があった場合には、積極的に報道するよう指示したという。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181025-00000580-san-cn