若い世代で増加する“精神的日本人”
「南京事件はなかった」
「おれの父は安倍首相」

最近、中国のネット上で“炎上”した書き込みだ。
旧日本軍の軍国主義を美化する現象は中国で“精日”=精神的日本人と呼ばれ、特に若い世代が多いとされる。中国政府は禁止する法律も作ったが、後を絶たない。背景に何があるのか。
旧日本軍が江蘇省南京で多数の中国人を殺害した(中国側は30万人が殺害されたと主張)とされる南京事件の生存者の94歳女性が亡くなったと、現地の記念館が公式SNSに掲載したところ、30歳男性が「南京事件はなかった。記念館はすぐに閉鎖し神社にすべきだ」とコメントし炎上。警察が捜査に乗り出した。

(画像)旧日本軍の軍服姿でコスプレをして喜ぶ中国人の若者

「俺の父親は安倍首相」と書き込み拘束
「俺の父は安倍首相」
今年8月、中国版ツイッターのウエイボに18歳男性が投稿したものだ。

「前世で犯罪をしたから、中国人に生まれ変わるという罰を受けたのか。今の人生で善行をして台湾の人や日本人に生まれ変わりたい」とも発言。民族感情を冒とくした、などとして拘束された。

このように、中国を卑下・敵視し、旧日本軍の軍国主義を美化・称賛するなどして日本を崇拝する行為は“精日”と呼ばれる。注目を集めたきっかけは、去年から今年にかけ、旧日本軍の軍服姿で日中戦争時代の遺跡などで撮影したコスプレ写真を、ネットにアップする若者が相次いだり、南京に来た27歳男性が、仕事が見つからない不満から「南京は悪い街だ。もう一度日本人に虐殺させるべき」などと発言する映像を投稿したことだ。彼らは当局に身柄を拘束された。

「中国人のクズ」を法律で取り締まる政府
日中戦争で旧日本軍と戦った中国にとって、その時代を美化したり、当時戦った英雄たちを侮辱する行為は許されない。記者会見の場で“精日”について聞かれた王毅外相が「中国人のクズだ」と感情露わに罵るなど、中国政府は侵略戦争を美化しているなどとして厳しく批判してきた。今年5月に「英雄烈士保護法」という法律を施行し、“精日”行為を禁止・処罰する措置をとった。

また今年8月には、江蘇省南京市の議会が「南京市国家公祭保障条例」の草案を提出。中国政府が主張する南京事件の犠牲者数などを否定したり、国家施設や戦争遺跡などで旧日本軍のコスプレ撮影をしてネットにアップしたり、日本軍国主義や侵略戦争を美化するような行為を“精日”と規定し、禁止するものだ。罰則規定もあるという。

“精日”が起きる背景は?
なぜ精日現象が起きるのか。中国メディアも様々な分析をしている。

国営新華社系のメディアは、「精日は病気で重症。治療が必要」との論評を出した。背景に、日本のアニメや漫画やゲームなどの文化が描く“理想の日本への憧れ“があり、「人生の価値観が形成されていない若者が自分の生活に焦りや不安、挫折や苦しみを感じ、自分が良い生活を送れないなら他人にも最大の侮辱で攻撃しようと、侵略された民族の尊厳への攻撃を始める」と分析している。

また、別のメディアでは専門家が、精日は「民族文化を卑下する人が多く、日本文化と触れる中で民族精神の挫折を感じている」と分析。「日本に行ったことはないが自分を正当な日本人または中国国籍の日本人とみなし、日本人になるためなら中華文明との徹底的な決裂はためらわない。民族の良心を失い、同胞への侮辱で日本の優位性を強調している」として、”超えてはいけない一線“を法律で設けることが社会の認識だと指摘した。

ドラマ宣伝の為に軍服着たら拘束された
最近では、ドラマの宣伝のために軍服姿で街を行進した男性らが拘束され刑事処分を受けるなど、精日の意図はなくても、行為が厳しく批判され摘発されるケースもあり、当局が厳しく目を光らせていることがうかがえる。また、ネット上などでの発言を部分的に切り取られて意図的に「精日だ」と非難されるケースもある。

精日が、ただの“日本好き”と違うのは、日本賛美と同時に“中国への敵視や侮辱”を表現するからだ。“理想的な日本”と対比し、中国人である自分の恵まれない境遇や現状への不満を表現するのは、形を変えた政府への反発とも言える。中国共産党=中国政府は、共産党の(八路)軍が旧日本軍に勝ったことで中国が救われたということを正当性の根拠としており、こうした厳しい対応をとるのは、日本が好き、が、中国が嫌い、現状がダメという反発や批判が次第に大きくなり共産党政権に向かうとの懸念を抱くからかもしれない。連日、反日ドラマが放送され、愛国主義的傾向を強める習近平政権の元で、反日教育を受けた若い世代が精日に向かうこの動きは今後どうなってゆくのだろうか。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181026-00010009-fnnprimev-int&p=2