“言いまつがい”連発の大臣

「大臣、韓国で犬肉を食べましたか?」――こんな質問が国会で、しかも予算委員会で飛びだした。おそらく憲政史上初だろう。おまけに答弁を求められたのは、あの桜田義孝五輪相(68)なのだ。

本題に入る前に、まずは桜田大臣に関し、どのような報道が行われてきたのか、新聞などの記事から振り返ってみよう。

◆大臣の自宅や所有する土地は、つくばエクスプレス沿線。「所得等報告書」によると、1億4000万円超の売却益を手にした(週刊新潮:11月1日号)

◆10月2日の就任会見でパラリンピックを「パラピック」と3回続けて間違え、オリンピックを言い忘れた。その後は官僚が用意した原稿を読み上げたが、読みあげるべき部分を間違えて、事務方が慌てた。
(産経新聞:11月2日付「新閣僚就任1カ月 『政治とカネ』不安なお 資質問われる局面続く」)

◆11月5日の参院予算委で、立憲民主党の蓮舫参議院幹事長(50)が質問。大臣選出の理由を問われると「なぜ選ばれたか分からない」と答弁。
 さらに東京五輪・パラリンピックの大会ビジョンを訊かれると、桜田大臣は大会の基本コンセプトと混同するなど、答弁は迷走。やっとのことで「スポーツには世界と未来を考える力がある」と回答するが、正確には「未来を変える」で、桜田氏は最後まで間違い続けた。
 五輪への政府の直接支出額の答弁も混乱。金額を問われても「しっかり支援していきたい」と的外れの回答。蓮舫氏が金額を問い続けると、「1500円」、「1500億円」、「1725億円」と訂正を重ねた。
 ある幹部は「内容をきちんと理解できていないと思われる。このままでは臨時国会は耐えられない」と心配していたが、国会答弁初日でその不安は的中した。
(毎日新聞:11月6日付「参院予算委:初入閣組『不安』的中 桜田氏、五輪支出『1500円』のち訂正/片山氏、生活保護批判で『おわび』」)

◆桜田大臣は6日の閣議後の記者会見で、蓮舫氏が事前に質問通告を行わなかったことが一因と主張。だが蓮舫議員が「事実誤認ではないか。私は通告している」と反論した。
(時事通信:11月6日「桜田五輪担当相『質問通告なし』=蓮舫氏は反論」)

◆6日の記者会見で北朝鮮の2020年東京五輪・パラリンピック参加問題への対応を問われ、「(所管)分野外だ」と回答。政府関係者は、この発言を「事実誤認」と認めた。
(時事通信:11月6日「北朝鮮の五輪参加『所管外』=桜田担当相が事実誤認」)

◆国会の予算委員会で何度も答弁に詰まった桜田義孝五輪担当相が、6日の記者会見で五輪関係の質問に「知らない」を連発し、答弁能力を不安視する声が広がっている。
(朝日新聞:11月7日付「桜田五輪相『知らない』連発 国会に続き会見も…」)

◆桜田義孝五輪担当相は9日午前の記者会見で、国会で答弁に何度も詰まったのは野党から質問通告がなかったからだと述べたことについて、「事実と若干違う」として撤回した。謝罪はしなかった。5日の参院予算委員会では、桜田氏が蓮舫氏の名前を「レンポウ」と間違えて蓮舫氏から指摘を受けたが、9日の会見でもまた間違えた。
(朝日新聞:11月9日付「桜田五輪相『質問通告なし』撤回 釈明一転、謝罪はせず 詰まった国会答弁巡り」)

◆桜田義孝五輪担当相が9日の衆院文部科学委員会でも言い間違いを連発した。所信聴取で、10月に開かれたばかりのジャカルタ・アジアパラ大会の開催年を「2028年」と発言するなどして、野党議員から間違いを指摘された。
(毎日新聞:11月10日「桜田・五輪担当相:間違い連発… 『れんぽう議員』」)

 改めて並べてみると、相当な分量だ。有権者としては呆れるやら、ため息がでるやらという心境なのは間違いない。では、こうした流れを踏まえていただき、11月7日の参院予算委員会に話を進めよう。

 質問を行ったのは国民民主党の大島九州男議員(57)。福岡県の直方市議を経て2007年に参院選で初当選を果たした。日蓮系統の新宗教「立正校正会」の会員であり、会の支援を受けていることでも知られている。

 この大島議員が桜田大臣に対して行った質問は、議員の公式サイトで動画を閲覧することが可能だ。これを元に、質疑応答を以下に再現する。

「犬肉でしたか?」と質問

大島九州男参院議員(以下、大島):桜田大臣、お友達や有権者の皆さんと韓国に訪問されたこと、ございますよね? 

桜田義孝五輪相(以下、桜田):あります。

大島:そこで、すき焼きのような食事をされたことはありますか? 

桜田:すき焼きは食べたことあります。

大島:その肉が、犬肉だったんじゃないかというのをお友達から聞いたんですけど、犬肉をそこで食べたという話なんですけど、犬肉でしたか? 

桜田:お答えします。私は犬の肉は一切食ったことがないので分かりません。

大島:すき焼きのようなものを食べた場所にはいらっしゃったことはありますよね? 

桜田:私はどこの場所だかも全く分かりません。韓国に行ったことはあります。そして焼肉も食べたこともあります。しかし、犬はございません。記憶も何も。友達もそういうことを言った人はいないと信じております。

大島:まあ、それはそれで(一部の議員が笑う)いいんですが、あのですね、動物愛護の運動が今、色んな盛んに活動されておられる方がいらっしゃいますけど……。

 文字面からは分かりにくいが、動画の桜田大臣は仏頂面で口調は荒く、不機嫌になったことは一目瞭然だ。

 ところが、大島議員の桜田大臣に対する質問は、これで終了してしまう。大臣が放置された格好になるのも構わず、大島議員は「日本における食用犬肉の輸入量」などの質問を続けていく。

 そして大島議員は根本匠厚労相(67)に「台湾で犬肉禁止の法律が制定されたのをご存じでしょうか?」と問う。根本大臣は「昨年4月に台湾において犬や猫の肉を食べることが禁止された、の報道があったことは承知しています」と答弁する。

 大島議員は安倍晋三首相(64)に「日本でも必要ではないか?」と質問。安倍首相は明確な回答を避けるが、消極的な姿勢を示す。すると、政権が入管法改正を進めていることを前提に、大島議員は以下のように指摘した。

「外国人が多く(日本に)入ってきて、その食文化、まさに中国、ベトナムの人は犬肉を食べる文化がある。そういう人たちが増えて、(犬肉料理を提供する)お店も(日本国内に)ある」

 各国固有の食文化を尊重することは重要だ。しかしオリンピックで外国人観光客が今以上に増加し、入管法改正が実現すれば、今以上に外国人労働者へ門戸が開かれる。こうしたことを踏まえ、日本も台湾のように「犬肉の食用禁止」を法制定すべきではないか――。大島議員は、こう主張したわけだ。政治担当記者が言う。

「まあ、基本的に予算委員会では閣僚や官僚に対して、どんな質問でも行うことが可能です。特に野党議員の場合、質問の自由は最大限に尊重されなければなりません。とはいうものの、本当に桜田大臣に『犬肉を食べたのか?』と質問する必要があったのか疑問ではあります」

 大島議員の公式サイトを見てみると、動物愛護運動に力を注いでいるのは明らかだ。そういう意味では、政治家としてのライフワークに根ざした質問だったのは間違いない。

「大島議員は『オリンピックで様々な食文化を持つ外国人観光客が来日する』ということを質問の理由にしていました。とはいえ、やはり“話題の桜田大臣を攻めておこう”という意図も見え見えでした。もし桜田大臣が犬を食べたことを認めれば、法律に抵触するようなことではなくとも、何らかの形で報道された可能性がある。動物保護に熱心な有権者が離反する可能性も考えられます」(同・政治記者)

 冒頭の質問で「つかみはOK」といった感じの質疑応答が行われた後は、大島議員は桜田大臣を放置してしまったのは、先にご説明した通りだ。

「桜田さんは、ちょっとダシに使われたようなところもあり、その点は同情します。答弁でも桜田大臣は立腹を隠せない様子が鮮明でしたが、委員会が終わると、本当に怒り狂っていたそうです。『とんでもない質問だ。オレは犬なんか食べていない』とね。とはいえ、犬を食う自由も存在するわけなんですが……」(同・政治記者)

 質問した議員にも問題はあるだろうが、大臣が狙われるのも、元はと言えば「身から出た錆」である。まさに、どっちもどっち。国政の場で、こんな議論が行われた。笑えるような、笑えないような、奇妙な味わいの一幕だった。

 桜田大臣が“大臣病”に罹患していたのは永田町では有名な話だったという。しかしミスを連発して恥をかき、こんな“ドッグファイト”も仕掛けられてしまう。ひょっとすると今になって、病は急速に完治したかもしれない。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181112-00551628-shincho-pol&p=2