【AFP=時事】現代文明から隔絶されたインド・アンダマン・ニコバル(Andaman and Nicobar)諸島の島に上陸し、弓矢を浴びて殺害された米国人宣教師のジョン・アレン・チャウ(John Allen Chau)氏(27)について、専門家らは遺体が島から運び出されることはないかもしれないとの見通しを示している。


先住民の人権に関する専門家らは、同諸島にある北センチネル島(North Sentinel Island)の人々にとって、チャウさんが単独で島に侵入したことは非常に脅威であったため、殺人罪が島民らに問われることはなく、世界でも最後とみられる新石器時代以前の暮らしを送る彼らを保護する観点から、チャウさんの遺体は島にとどめ置かれることになるだろうと指摘する。

 北センチネル島に国内法を適用しようとしないインド当局は、外部者に対して長年にわたり敵対的な行動を取ってきたこの島の先住民に対し、警察を上陸させて事情聴取しようとすらしていない。

 一方で警察は23日、北センチネル島付近に、チャウさんが殺害されて以降2度目となる船舶の派遣を実施。「特に脆弱(ぜいじゃく)な民族集団である彼らの生活を混乱させたり、苦痛を与えたりすることがないよう、正当な予防策を講じた」と説明している。

 チャウさんは、島の5キロ以内に近付くことは違法と知りながら、キリスト教を布教するために何度か島への上陸を試み、島の先住民に複数の矢で射られて死亡した。

 風邪といった軽い現代の病気でも、感染すれば先住民は絶滅する恐れがあり、電力やインターネットを体験することで生活様式が徹底的に破壊されるかもしれないという懸念から、先住民は外界と隔離したままにされている。

 そうして守られた世界に、チャウさんは「イエス(Jesus)は皆さんを愛しています」というメッセージを携えて侵入した。

 先住民の人権に関する専門家で、同諸島に関する著作もあるパンカジ・セクサリア(Pankaj Sekhsaria)氏は、チャウさんの遺体を収容しようとするのは「無益な試み」だと指摘。AFPに対し「(北センチネル島の)近くに行くことが良いアイデアとは思わない。現地社会との対立を生むからだ」と語った。

 先住民らの権利保護団体「サバイバル・インターナショナル(Survival International)」の研究者であるソフィー・グリグ(Sophie Grig)氏も「作業者とセンチネルの人々双方を危険にさらすことなく、遺体を収容するための安全な方法があるとは考えていない」と話す。

 デリー大学(University of Delhi)で人類学を教えるアヌプ・カプール(Anup Kapoor)教授は、センチネルの人々と対話を持ちたい人は誰でも「同じ水準」であることを示す必要があったと指摘。「何も着るな、そうしたら何らかの関係が築くことが期待できるかもしれない」と話した。カプール教授はかつて同諸島の別の先住民であるオンゲ(Onge)の人々に対し、「下着以外、自分の服全部を脱いでから」接触した経験を持つという。

 その一方、同諸島の警察は、チャウさんの遺族の祈りにどう応えるか、また北センチネル周辺で先住民の生存にとって必須である隔離をどう維持するかというジレンマに頭を悩ませている。

 アンダマン警察トップのデペンドラ・パタック(Dependra Pathak)氏は、遺体発見に向けたスケジュールは出し得ないと述べている。

 またセクサリア氏も、当局はチャウさんをまねる行動を防ぐため、北センチネル周辺の監視を強化する必要があるかもしれないと指摘。同氏は詳細について明らかにしなかったものの、「行政側はこの問題を承知している。彼らは監視についてすでに検討している」と述べた。

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