韓国最高裁は29日、10月末の新日鉄住金に続き、三菱重工業にも元徴用工らへの賠償を命じる判決を言い渡した。韓国は従軍慰安婦問題でも日韓合意に基づいて設立した「和解・癒やし財団」の解散方針を発表し、日韓関係は冷え込む一方だ。韓国外務省傘下の研究機関、国立外交院の尹徳敏(ユンドクミン)前院長と木宮正史・東京大大学院教授(朝鮮半島地域研究)に今後の展開や両国が取るべき方策を聞いた。

■「強硬、日本の不利益に」 東京大大学院教授 木宮正史氏
 日韓関係に与える悪影響を憂慮している。韓国政府が発表した慰安婦財団の解散に対する反応も含めて、日本政府の姿勢は予想以上に強硬な印象だ。「国際約束が守られなければ、国と国との関係が成り立たなくなる」(安倍晋三首相)、「国際社会への挑戦だ」(河野太郎外相)など強い言葉が次々に出ている。韓国が海上自衛隊に自衛艦旗である旭日旗の掲揚自粛を求めた問題もあり、不満がたまっているのだろう。

 ただし、元徴用工や元挺身隊員の補償問題はまだ司法の判断にすぎない。文在寅(ムンジェイン)政権は一連の判決を積極的に支持しているわけではないと考える。司法判断は尊重しなければならないが、政府としてどう対応すべきか、苦慮している状況だ。現時点で、韓国政府が元徴用工らの補償問題は1965年の日韓請求権協定によって「完全かつ最終的に決着している」との立場を崩していない点も重要だ。

 日本政府が強硬姿勢を続ければ、韓国内で反発が強まり、安易な妥協を許さない世論が高まって韓国政府の選択の幅を狭める。それは日本の不利益になる。

 慰安婦財団の解散も影を落としそうだ。「財団方式」を韓国政府が否定したことで、同様の枠組みを採用しにくくなった。

 北朝鮮の非核化は米韓だけでなく、日韓の協力も欠かせない。中国の大国化に伴い米中関係が変容していく中で、日韓はいかに発言力や存在感を維持するかという共通の課題もある。歴史問題を巡る対立を続けるのか、国の存立にかかわる問題に連携して向き合うのか。両国は岐路に立たされている。だが、双方ともその認識は希薄なようだ。

■「両国での財団、最善策」 前韓国国立外交院院長 尹徳敏氏

日本企業に韓国人の元徴用工らへの賠償支払いを命じた韓国最高裁の一連の確定判決は、日韓国交正常化の原則となった1965年の日韓請求権協定を根底から揺るがしている。これまで日韓が直面したことのない大きな危機だ。

 解決のためには、文在寅政権はまず、請求権協定を順守する方針を改めて明確に示す必要がある。その上で、韓国政府と韓国企業が資金を拠出して財団をつくり、元徴用工らの救済に乗り出してはどうか。その際、(訴訟の被告になった)日本企業の自発的な参加が実現すれば一番良い。

 韓国は65年の請求権協定で日本から巨額の資金(計5億ドル)を受け取り、道路やダムなどの社会資本整備に充てて急速な高度成長を果たした。その資金は本来、元徴用工らにも渡すはずだったが、十分ではなかった。日本からの資金の恩恵を受けた韓国政府や韓国企業が改めて元徴用工らの救済のために資金を拠出するのは道理にかなっている。

 ただ、日本の植民地支配を「不法」と認定した最高裁判決を得た原告やほかの元徴用工らが韓国の資金による救済に納得するだろうか。一連の最高裁判決で態度を硬化させる日本政府が財団に資金を出すとは思えず、これも韓国の世論の不満を招くかもしれない。

 それだけに文氏から対応策を任された李洛淵(イナギョン)首相も慎重に検討しているようだ。どんな策がまとまっても、解決には時間がかかる。日本政府も過激な発言などで韓国の世論を刺激するようなことをせず、韓国政府の対応を待つ度量が必要だ。日韓が互いに信頼して、粘り強く交渉する姿勢が今こそ求められている。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181130-00010008-nishinpc-int&p=2