大阪府警は12日、大阪・ミナミを拠点とする「半グレ」と呼ばれる不良グループの男女49人を傷害などの疑いで逮捕したと発表しました。半グレは暴力団に属さない新興の組織犯罪集団ですが、ミナミの繁華街で何をしていたのでしょうか。

ミナミの繁華街に捜査員200人 
今年8月の蒸し暑い夜。大阪・ミナミの繁華街に約200人の捜査員らの姿があった。

「大阪府警の捜査員がガールズバーに家宅捜索に入ります」(記者リポート 今年8月/大阪・中央区)

警察はこの日、あるグループの壊滅に向け、大規模な捜索に乗り出した。

「なんじゃオラァ!やかましいわオラァ!」(捜査員が入った店内から聞こえてくる声)

店の中で捜査員と激しく言い争う男たち、彼らは「半グレ」と呼ばれる不良グループのメンバーだ。警察は、代金をめぐりトラブルになった男性客3人の顔を殴ってけがをさせたなどして、岩尾奏良被告(20)らを逮捕・起訴。さらに、リーダーの当時19歳の少年とナンバー2の野口直人被告(20)らを他のバーの経営者を襲撃する目的で金属バットを持って集まり催涙スプレーを噴射したなどとして、傷害や凶器準備集合などの罪で逮捕・起訴した。これまでに、グループのメンバーあわせて49人が逮捕された。取り調べに対して、リーダーの少年は「知らない」と容疑を否認。ナンバー2の野口被告は「リーダーの指示に背けば集団リンチにあうのでやるしかなかった」と供述しているという。

暴力団対策法も暴力団排除条例も適用されない「半グレ」
ミナミには複数の半グレ集団が乱立しているが、約3年前に暴走族出身のリーダーが「アビスグループ」を結成、男女100人以上で構成される府内最大規模の半グレ集団となった。警察が取り締まりを強化している「半グレ」は一般人と暴力団員との中間的な存在で、「グレーゾーン」や「グレる」と言った言葉から派生したもの。その名づけの親とされるノンフィクション作家の溝口敦氏はこう指摘する。

「(半グレの)一番の特色は暴力団に籍を置かないっていうこと。そのため、暴力団対策法も暴力団排除条例も適用されない。法的な扱いとしては一般人と何ら変わらない」(ノンフィクション作家 溝口敦さん)

アビスグループはミナミなどでガールズバー17店を経営し、毎月5000万円以上を売り上げていたという。

「大阪府警の捜査員がこれから鑑識活動に入ります。この店で客の男性が監禁された疑いがもたれています」(記者リポート 今年6月/大阪・中央区)

グループは去年の夏頃からガールズバーを始めたというが、65万円の代金を請求し支払いを拒んだ男性客を暴行して重傷を負わせるなどの事件を次々と起こした。今年10月までの1年間で、「ぼったくりにあった」という警察への相談は約150件にのぼっている。リーダーはグループの幹部12人にガールズバーの経営を競わせ、それぞれの店から利益の約半額にあたる175万円を上納するよう指示していたという。目標額を納められなかった幹部は他の幹部らから集団で暴行されるため、ぼったくり行為をせざるを得なくなったという。

ミナミの街で、アビスグループについて聞いてみると…

Q.アビスグループを聞いたことは?
「あります。あんま、よくないらしいっすよ」
Q.アビスグループを知っていますか?
「そらねー、ミナミにおったらね。あんま触れない方がいいグループ。僕らも触れたくないから…。いろんな事件が起こるから、身の危険…」

皆、報復を恐れてか口を開こうとはしない。そんな中、1人の男性が顔を映さないことなどを条件に取材に応じてくれた。

「しょせん若い連中の集まりなので最初は相手にされなかったが、だんだんえぐいことをしだして。傷害事件とかいっぱい起こしてるので、揉めたらやばいっす。拉致されたりとか、ぼこぼこにされたりとか。僕の仲の良いキャッチの子は間違えられてやられてますからね」(アビスグループを知る男性)

さらに取材班は、今年8月に大阪市中央区の路上でグループのメンバーから集団暴行を受けたという男性の話を聞くことができた。

「(道の)向こうから20人くらい来たので、真ん中に入って行って『お前らやり過ぎちゃうか、一般人に迷惑やろう』と(言った)」(暴行を受けた男性)

すると、男性は対立する別のグループの幹部だと勘違いされ袋叩きにあったという。

「警棒で殴られたり、腹を思いきり殴られたり。(グループ側は)いろいろ武器を持っていた。自転車のサドルで頭を殴られたのは覚えているんですけど」(暴行を受けた男性)

男性は顔を骨折するなど、全治3か月と診断された。

暴力団の“隠れ蓑”との指摘も

1960年代の最盛期には10万人を超えていた暴力団組員は、今や約3万4500人と減少の一途をたどっている。暴力団対策法や暴力団排除条例という包囲網により、みかじめ料などの資金源を確保できなくなったからだ。

「暴力団に入らない方が得だという若い人たち、典型的には暴走族。暴力団が退潮した後の隙間を担う役、半グレを何とか生かせないかという感じで、半グレたちに対して理解のある暴力団が多いんじゃないか」(ノンフィクション作家 溝口敦さん)

暴力団の衰退とともにその勢力を広げてきた半グレ。大阪では6年前、アマチュア格闘技団体「強者(つわもの)」のメンバーが傷害事件などを次々と起こし、警察はこの頃から半グレへの警戒を強めていった。

「自分たちは暴力団でなくカタギの人間だから警察に捕まることもないし、おおっぴろげにそういうこと(みかじめ料徴収など)ができると言っていた」(強者が関わったトラブルを知る人)

「強者」はその後、解散したものの、グループの残党が新たな半グレ集団を生み出したという。

「(半グレは)親分子分のきちんとしたピラミッド型組織じゃなく、せいぜいのところ先輩後輩、兄貴分弟分程度の付き合いでしかないから、トップがとられたら下がトップになって、そういうことは永遠に続くでしょうね」(ノンフィクション作家 溝口敦さん)

日に日に存在感を増しつつある半グレ。しかし、その実態は表立った活動が難しくなった暴力団の「隠れ蓑」になっているという指摘もある。警察は、アビスグループの売上金の一部が指定暴力団任侠山口組系の組織に流れていたとみて、グループの実態解明を進めている。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181214-10000001-mbsnews-l27&p=2


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