【記者:Jorg Luyken】
 ドイツ特殊部隊に所属するあるエリート兵士は、退役した隊員が日常生活に適応できるよう支援する組織を立ち上げ、私利私欲のない博愛主義者として名をはせていた。しかし、それははうわべの姿にすぎず、実際には、元軍人を集めて組織を作り、武器を集めて政治家たちを殺害する機会をうかがっていたのだった──。

 それはまるで、安っぽい長編小説に出てくる策略のようだった。だがこれは実際の話で、小説ではない。今回、「ハンニバル」のコードネームを持つ兵士、アンドレ・S(Andre S)の計画について独メディアがこぞって報じ、この精鋭部隊についてドイツ国内ではほとんど知られていないという事実が浮き彫りになった。

 一連の報道では、ハンニバルが慈善活動を通じて知り会った特殊部隊の元兵士らを、過激思想主義の「影の軍隊」に密かに入隊させていたということが伝えられた。

 独週刊誌フォークス(Focus)が先ごろ報じたこの驚くべき疑惑は、プレッパーと呼ばれる陰謀論者と世界終末論者を対象とした、連邦警察当局による捜査の内部情報に基づいているとされる。

 2016年、ドイツ連邦軍の将校フランコ・アルブレヒト(Franco Albrecht)被告が、テロ行為を計画したとして逮捕された事件以降、ネオナチが軍に入り込んでいる可能性があるとの考えに、ドイツの人々は神経をとがらせている。

 また、こうした事件や捜査を受け、特殊部隊を取り巻く「秘密性」に対しても疑問の声が上がっている。これについては、戦後広がった軍国主義に対する無関心さが、過激主義者の軍への浸透を分かりにくくしているとの意見も出ている。

 アルブレヒト被告は2016年4月、オーストリアのウィーン空港(Vienna Airport)のトイレに隠してあった武器を回収しようとした際に逮捕された。

 検察当局は、同被告が一般の人々の殺害を計画し、その責任を実在しない難民に負わせようとした極右思想の持ち主だと主張している。逮捕に至るまでの数か月間、アルブレヒト被告はシリア・アレッポ(Aleppo)出身の露天商を名乗り、いわゆる二重生活を送っていた。アラビア語はまったく話せないにもかかわらず、難民認定までされていた。

漏れ聞こえてくる捜査情報

独日刊紙ウェルト(Die Welt)と独紙ターゲスツァイトゥング(Tageszeitung)は、アルブレヒト被告と特殊戦団KSKのエリート兵士らとのつながりを報じた。また、ターゲスツァイトゥングが伝えたところによると、ハンニバルとアルブレヒト被告らは暗号化された同一のチャットグループに入っていたという。このチャットグループは、「影の軍隊」の隊員のための隠れ家も運営していたとされる。

 他方で、別のあるKSK兵士は軍のパーティーで、国内で違法行為とされているナチス・ドイツ(Nazi)式の敬礼を、繰り返し行っていたとして罰金刑が科された。鍛え上げられた精鋭兵士が、ナチス信奉者であったことに多くの人が恐怖を覚えた。

 ドイツ連邦軍の高官たちが、ハンニバルを手助けしていたことを示す証拠もある。手助けの行為が意図的だったかどうかは定かではないが、軍の内部情報部門に所属するある兵士が、秘密組織のメンバーに強制捜査が差し迫っているとの情報を漏らしたとされているのだ。この兵士は現在、裁判にかけられている。

 こうした捜査情報が次々と漏れ聞こえてきているにもかかわらず、独国防省は、軍当局の潔白を主張している。

 フランクフルト(Frankfurt)の高等裁判所は6月、アルブレヒト被告がテロ行為を企てていたことを示す証拠が弱いとして、訴えの請求を退けている。今後の裁判は、武器の不法入手およびその他数件の犯罪行為について下級裁判所で審理される。【翻訳編集】AFPBB News

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