昨年10月、韓国で行われた国際観艦式に日本の海上自衛艦が参加するかどうかで論争を呼んだ旭日旗問題。その火種は映画の世界でも炎上している

皆さんはこのポスターを見て何を感じるだろうか? 2019年3月29日にアメリカ公開が予定されているディズニー映画「ダンボ」のメインポスターが今韓国で議論を呼んでいる。2018年11月にメインポスターとして披露された後、主人公ダンボの後ろの背景が旭日旗に見えるとネットを中心に話題となった。何も考えずに見るとただのサーカスのテントのデザインだと見えるが、旭日旗問題に敏感な韓国人からすると、放射線に伸びる赤い線は「植民地時代の象徴」であり「軍国主義」を連想させるのであろう。

韓国で炎上した『ダンボ』のポスター

2018年11月14日にディズニーの公式SNSで公開されて以来、このポスターはネットを中心にただのテントのデザインか、はたまた旭日旗に見えるかで意見が割れている。右下にテントが波打っているように見える部分があり、それがテントの天井を表していると主張するネチズン(network citizen=ネット住民)がいる一方、放射線状の紅白は何でも気に食わないといった過激な反対意見をいうネチズンもいるのだ。

だが、旭日旗問題は今に始まったことではない。今までにも色々なデザインが問題にされてきた。

■ボヘミアン・ラプソディと旭日旗?

現在、日本でもヒット中の映画「ボヘミアン・ラプソディ」。日本では観客動員508万人だが、韓国ではなんと日本の倍近い940万人を動員する大ヒットとなっている。これだけ韓国でブームを巻き起こしている映画だが、5月15日に20世紀FOXが公開していたティーザー映像では、ロジャー・テイラー役のベン・ハーディーが旭日旗柄に漢字で「有名」と書かれたTシャツを着ている1シーンがあった。

このシーンについて韓国ソンシン女子大学教養学部ソ・ギョンドク教授がフェイスブックに「クイーンは、まさに世界的に多くのファンをもった最高のロックグループだ。 その映画のティーザー映像に旭日旗が登場するなんて本当に大変なことだ」と指摘するなど、韓国ネチズンらは速攻で抗議。驚くことに20世紀FOX側は翌日にはワイン色のTシャツにCGが施された映像に差し替えた。

また、「ボヘミアン・ラプソディ」でクイーンのメンバー、ブライアン・メイ役を務めた俳優グウィリム・リーが映画のプロモーションのために2018年11月に東京を訪れた際、自身のSNSに掲載した写真が、背景に旭日旗のように見えるポスターが映り込んでいたことも韓国ネチズンは問題視。結局グウィリム・リーはこの写真をSNSから削除した。

このほかにも、ドラマ「ウォーキング・デッド」で人気となった韓国俳優スティーヴン・ユァンは、自身が主演する映画の監督がSNSにアップした旭日旗のTシャツを着た幼少時代の写真に「いいね」をしたことが非難され、謝罪文を韓国語と英語で掲載。2016年には少女時代のメンバー(当時)、ティファニーが光復節(8月15日、日本による植民地支配からの解放を祝う祝日)に旭日旗を連想させるロゴの入った写真をSNSにアップしたことで、謝罪と当時出演していたTV番組を降板する事態となった。

洋の東西を問わずあらゆる放射線デザインがやり玉に
このように、繰り返し起こる旭日旗問題。韓国では旭日旗はナチスドイツのハーケンクロイツとともに“戦犯旗“と呼ばれ、戦争犯罪を象徴するものとされているが、法律で規制があるかというとそういうものはない。実際のところ、旭日旗禁止法はことあるごとに発議されてきた。2013年には当時の与党セヌリ党から発議があったが通らず。また去年の10月、済州島で行われた国際觀艦式で日本の自衛艦が旭日旗を使用するかどうかで問題となった際にも立法化の提案があったが未だ実現されていない。つまり旭日旗問題は、あくまで感情論として韓国のネットを中心に問題が炎上し、それを追うようにメディアで報道され謝罪や修正が繰り替えされているようだ。

しかし民間レベルでは規制に向けた動きが出ていて、2018年12月12日、前述のソ・ギョンドク教授が「全世界学校旭日旗退治キャンペーン」を開始すると宣言した。カナダのある学校の壁に描かれた旭日旗を在カナダ韓国人たちの働きかけによって消した“反旭日旗運動“をきっかけとして、世界各地の旭日旗デザインをなくそうというキャンペーンだ。ソ教授は、旭日旗問題を解説した冊子や映像を作り、またニューヨークタイムズに意見広告を出すことなどを準備中だという。

旭日旗問題は、日本や韓国以外の海外でも頻繁に起こっている。2018年11月スペインで開催された映画祭の公式ポスターについて韓国国内で批判が集中した。紅白の放射線の背景に招き猫が描かれており、韓国映画「Monstrum(物怪)」も招待されていた映画祭だったから、韓国内でも報道されて問題視されたようだ。

ほかにも、2018年4月に初韓国公演を行ったアメリカバンドOneRepublicのリーダー、ライアン・テダーがSNSで自身の旭日旗柄タトゥーをアップしたことが問題となったり、2月にはイギリスの歌手エド・シーランの広報映像が放射線の背景であることから旭日旗を連想させると非難されている。また、歌手エリック・クランプトンの2016年東京公演記念ポスター、イギリスのバンド、ミューズのミュージックビデオ、歌手ビヨンセが着ていた服など、韓国のネットでは旭日旗に似たデザインは常に非難の的となっている。

日韓以外の国ではこの旭日旗問題の認知度が低いためか、多くのアーティストが日本のモチーフとして旭日旗のイメージを使用しているようだ。もともと日本の国旗がシンプルなため、日の丸よりインパクトの強い放射線状の旭日旗を使用することが多いのかもしれない。

だが韓国の反応を見ていると、日本をイメージさせようとしているのではなく、ただデザインとして真ん中から放射線状に徐々に外側へ太くなっている線のデザインに対してもすべて駄目出しするようなところがある。

冒頭の映画「ダンボ」のポスターの件もまったく日本とは関係なく、ただ単にサーカスのテントの模様である。もちろん、偶然にそう見えてしまうことで気分を害す人が韓国にいるのなら、韓国内に「旭日旗禁止法」がたとえ執行されていなくとも、韓国向けのポスターは配慮してデザインを変える必要性を配給会社は考慮するべきだろう。

ただ、それによってデザイナーの知恵の結晶であるオリジナルデザインが見られなくなってしまい、それを残念に思う人がいるかもしれないことも忘れてはならない。また、まったく違う意図でグラフィックデザインとして使われている放射線すべてを排除するのも芸術的な点からやり過ぎな気もする。

ちなみに映画「ダンボ」のポスターだが、今現在韓国内では公式ポスターどころか公開日も3月以外未定のままである。唯一、ダンボの影のシルエットが壁に映っているティーザーポスターだけが宣伝素材という寂しい状況だ。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190105-00010000-newsweek-int&p=2