朝鮮半島の非核化に向け2度目の米朝首脳会談へのステップが着々と進む中、本来であれば手を取り合うはずの日韓の間には問題が山積みだ。

 元徴用工の問題、レーダー照射問題と、次々に浮上する日韓の違い。そして文在寅政権はなぜ日本への非難を強めるのだろうか。18日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、間もなく行われる日韓外相会談を前に、文大統領の思惑と、日本の方向性について考えた。


■文大統領の人となり、目指す世界とは
 まず、恵泉女学園大学の李泳采准教授は、文大統領の人となりについて、次のように説明する。

 「大学では法学部で、後の盧武鉉大統領の弁護士事務所で人権弁護士として労働者などを支えてきた。そして誘われて大統領秘書室長になり、盧武鉉を陰でサポートしていた。もともと“政治家にはならない“と言っていたが、盧武鉉が自殺をしてしまい、その継承者として国会議員に当選した。そして朴槿恵前大統領の問題が起きた。国民は韓国が経済的にも進んだ先進国だと思っていたが、実は検察、財閥、政治家、ほとんどが腐敗していた。キャンドルデモが盛り上がり、腐敗のない政治家が社会を立て直さないといけない。それができるのは文在寅氏しかいないということで、特に若い人の圧倒的な支持を得て大統領になった。軍事独裁政権に抵抗して拘束されたこともあるので非常に正義感が強く、国家の暴力で被害を受けた人々と共に闘ってきた人だから、日本の歴史問題にも厳しい。その道徳心と理念が外交的にも日本に向けられている側面は否めない」。

さらに李准教授は、“北朝鮮寄り“と呼ばれる文大統領の姿勢についても、そのルーツが影響していると話す。

 「韓国の5000万人のうち、1000万人くらいが離散家族だ。文大統領も、朝鮮戦争の時に北朝鮮から避難してきたお父さんが、お酒を飲んで泣きながら亡くなる場面を隣で見ていた。分断され、家族に再会できない離散家族の苦しみを身近に見てきたし、南北の格差も核問題も、停戦状態では安定した“家“は構築できない、だから何があっても任期中に朝鮮戦争だけは終結させるというのが自分の使命だと考えている。そして南北が平和共存すれば、鉄道や道路がつながり、経済もヨーロッパまでつながるという夢を持っている」。
共同通信編集委員の磐村和哉氏も「理想主義“夢見る大統領“だと思う」と指摘。「李先生がおっしゃったように、“正義を実現する“という意欲がものすごく強く、それが日本にも向いてきてしまっている。だからイデオロギー闘争になっている。格差の無い、平等・公正な社会を実現するという正義を実現するのと同時に、自分たちの民族的が寄って経つのは分断された国家ではなく、北朝鮮と平和に共存する一つの大家庭を実現したいということだ」と解説した。

■会見場に掲げられた「100」の意味
 また、磐村氏は、先日行われた文大統領の記者会見で大きく掲げられていた「100」という数字に注目する。「あれがキーワードだ。今年は日本の植民地時代に起きた三・一独立運動から100周年。この過去の関係ではなく、これからの100年の関係を作っていくんだという理念的な存在として日本を捉えている。ところが日本は韓国が投げてくるボールをひとつひとつ打ち返そうとしているので、土俵が全く違う。韓国は100年という、民族的な意識の軸で日本に色々と言ってきているが、日本は今の日韓関係、現実問題という軸でしか見ていない。そういった違いがある」。

 これに対して李准教授は「日韓には、35年間にわたる戦前の不幸な歴史がある。しかし1965年の協定でそれは解決済みだという認識のもと、戦後を作ってきた。ただ当時は冷戦時代で、韓国は軍事独裁政権。国民の意思が反映されないままに色々なことが決まってしまった。それが今は人権が大事にされ、個人が声を上げる時代になっている。日本でも、辺野古問題で国の利益を優先するのか、住民たちの権利を優先するのかが問題になっている。徴用工の問題なども、日韓両政府で全部解決済みだというのか、弱い立場に置かれている市民に寄り添って一緒に考えていくのか。今の韓国社会は、後者の立場になっている。文大統領の会見での“100“の下には、“共に生きる社会“と書かれていた。権力者、金持ちだけが豊かな社会から、格差を縮めながら一緒に生きる社会を作りたいということ。その願いの中には、日韓が未来へ向けて生きながら、歴史的に弱い立場に置かれ、自分の権利の問題が解決できなかった人々も共存していきましょうというようなメッセージもある。これらは国内向けのもので、日本から見れば非常に反日的に見えるかもしれないが、決してそうではない」と主張。

その上で「南北が統一すれば、日本の隣に人口8000万人くらいの大きな国ができる。それが日本にとって脅威になるのか、それとも協力相手になるのか。歴史的に日本は日清・日露戦争、第1次・第2次大戦と、朝鮮半島を影響下に置いておかないと脅威になる、という認識でやってきた。しかしそれでは国防費を増やし、日米安保体制でいくしかない。そうではなく、南北統一国家が日本も含めた東アジアでどう共存するか、新しい発想で次の100年を考えていく、というのが文大統領の考え方だ。こうした将来を日韓が同時に考えなければならない」と訴えた。

 磐村氏は「南北が擬似的な統一状態になるとことについて、これが反日になるのか、親日になるのかという問題はこれから考えないといけないし、実は中国やアメリカはすでに考えていて、反中国、反アメリカにならないように準備もしている」と指摘。そして、来る日韓外相会談については「いわば新日本プロレスのイデオロギー闘争、“棚橋vsケニー・オメガ“みたいな構図になっている。まったくやり合っている土俵が違うので、希望的な予測をすることは難しい」との見方を示した。

■「プロレスでいいのではないか」
 両氏の議論を受け、韓国の官僚とも仕事をしたという元経産官僚の宇佐美典也氏は「韓国の憲法には、100年前に日本からの独立を求めた伝統、独裁政権の弾圧に挫折した経験、そして祖国の統一に向けて歩もうというコンセンサスがあり、そこが日本とは異なってくるところだ」と指摘、「日本は日本として守るものを考えたほうが良い」と話す。

 「今、むしろ良い関係に向かっているとも思う。米中貿易戦争があり、日本はTPPのこともあってアメリカ寄りで、韓国は中国寄り。そして韓国は中国と自由貿易協定(FTA)を結んでいるが、日本は結んでいない。しかし日本は半導体など電化製品の材料を韓国に輸出し、韓国は完成品を中国に輸出している。つまり経済的には、日本が材料を韓国に輸出すれば、韓国が中国に売ってくれるという互恵関係がある。これを守ることが大事だ。だから外交・安全保障では歩み寄る余地すらない状況であっても、中韓が経済的な関係をしっかり維持していてくれれば日本には間接的な恩恵がある。だから磐村さんがおっしゃったように、“プロレス“でいいと思う。プロレスの観客というのは、その構図をわかった上で楽しむ。僕たちも韓国といろいろなこと一緒にやっていこうと無理したり、いちいち怒ったりせず、実利的な付き合いでいいのではないか。そして、そういう構図を理解した上で日韓関係を見ていくリテラシーが求められている時代なのではないか」。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190120-00010002-abema-kr&p=1


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