韓国駆逐艦から海上自衛隊P1哨戒機が火器管制(FC)レーダー照射を受けた問題で、防衛省は21日、P1の電子戦の能力が知られかねない探知音の異例の公表に踏み切った。

P1の電波受信能力だけでなく、同じFCレーダーを台湾、タイ、カナダなどが使用しており、同省はオペレーションに影響が出ないよう「ナマの音」を一部加工して、ホームページ(HP)上に公開した。政府関係者によると、照射問題の一連の対応は「音の公開」を含め首相官邸主導だったという。

 防衛省によると、2回にわたる実務者協議で日本側は収集したデータと、韓国駆逐艦の火器管制レーダーの使用記録などを突き合わせ共同で検証することを提案したが、韓国側は拒否。同省は「協議継続はもはや困難」と判断。証拠の切り札の「探知音」まで公表したものの、照射問題をめぐる約1カ月に及ぶ日韓の応酬は、着地点が見えないまま幕引きとなる。

 ◇「探知音」、機密の塊
 「めちゃくちゃすごい音だ」。防衛省が昨年12月28日に公開した映像では探知音を聴いたP1のクルーが音の大きさを表現する場面があったが、探知音自体は伏せられていた。音の強弱と駆逐艦からの距離を解析すれば感度が分かり、P1にどの程度、電波収集能力があるかも推測できるからだ。それだけに自衛隊OBは「韓国側が歩み寄る可能性はないのに、機密の塊の探知音まで出すのか」と驚く。

 今回、防衛省は公表した「音」が既に公開されている映像のどの部分に当たるかは「機密保全」を理由に明らかにしなかった。自衛隊関係者によると、専門家が音と合わせて映像を見れば、どのタイミングでFCレーダーを受信しているかP1の能力と警戒監視のオペレーションが分かるからだという。

 海自によると、FCレーダーの電波はピンポイントで標的に絞って追尾するため指向性があり、変換された音は大きく連続性があり、途切れることはない。公開された「音」は、18秒間甲高い音が続く。

 P1には「ESM」と呼ばれる電子戦支援装置があり、受信した電波の周波数や波形、信号の強弱が画面に表示され、電波は音に変換される。「センサーマン」と呼ばれるクルーがヘッドホンを付け、担当している。防衛省幹部は公開に当たり「生の音を専門家が聴けばパルス幅や信号の特性などFCレーダーの細部が分かる。同じFCレーダーを使う第三国に迷惑を掛けることになるため、音を一部加工した」と説明した。

 ◇情報戦、溝深まり終結
 昨年12月20日に照射問題が発生した当時、自衛隊内では「韓国海軍が謝罪するよう、制服組同士で協議する時間をもう少し作るべきでは」との声もあった。しかし、首相官邸の強い意向を踏まえ照射翌日に公表され、海自関係者は「この時点で自衛隊の手を離れ、完全に政治問題になった」と話す。2013年の中国艦船による護衛艦への火器管制レーダーの照射では、発生から6日後に公表されただけに、今回は対応の違いが際立つ。

 自衛隊幹部は「青瓦台(韓国大統領府)マターになれば、謝罪する退路が断たれることが分かっていたはずだ」と、韓国軍の対応を残念がる。ホームページでの発信を含め日韓の「情報戦」が繰り返されたが、両国の溝だけが深まった。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190121-00000106-jij-soci


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