極小の「マイクロチップ」を埋め込んだ手をかざし、鍵の開け閉めをしたり、買い物の電子決済をしたり――。スマホすら不要な近未来の世界だが、決して架空の物語ではない。海外ではじわりと広がり、日本でも試す人が出てきた。

【写真】【図】マイクロチップの埋め込み方


■国内で早くも埋め込んだ人は…

 大阪市西区のIT企業「お多福ラボ」。浜道崇(はまみちたかし)社長(39)が、手の甲を入り口のドアに近づけた。「ガチャッ」と音を立て、鍵が開いた。「鍵を持たなくてもいいのはめっちゃ便利ですよ」

 浜道さんは昨年、左手の親指と人さし指の付け根に、カプセルに入ったマイクロチップ(直径約2ミリ、長さ約1センチ)を埋め込んだ。チップは、ドアの脇に設置された通信機器と無線通信して解錠する。米国製で、ネットで購入した。

 社員約15人のうち、浜道さんを含め3人が埋め込んだ。ほかの社員は、カードを使って入室している。

 一般社団法人「日本トランスヒューマニスト協会」(東京都)は昨年、ツイッターでチップ埋め込む人を募集した。費用は無料。2万人以上の応募のなかから20人が選ばれ、埋め込みの準備中だ。追加募集もし、すでに約5千人が希望しているという。

 同協会の朝野巧己代表は、すでにスウェーデンで両手に埋め込んだという。「埋め込みたくない人もたくさんいるだろうけど、自分は便利だと感じる。チップによる電子決済システムを開発する会社をつくることを検討している」と話す。

 チップは専用の注射器で挿入する。厚生労働省によると、注射は基本的に医療行為にあたる。「業」として医療行為をすることは、原則として医師や看護師らに限られて認められている。ただし、「自己注射」は、糖尿病のインスリン注射などでも認められており、問題はないという。

 同協会は、大阪府内のクリニックと連携。チップの安全性を確かめる「臨床研究」として、埋め込む予定という。