賑やかな露天市場で、派手な柄の服を着た女性たちが10種類ほどのバナナ、タロイモのチップス、山盛りに積まれた炎のように赤いチリ・ペッパーが載ったテーブルの後ろに座っている。

ここは、南太平洋に浮かぶ島国バヌアツの首都ポートビラの食料品ショッピングの中心地。地元の人たちが旬の農産物を買いに来る場所だ。小さな岩ほどの大きさのグレープフルーツのような果物が、何十個ものエメラルド色のアボカドの隣に並んでいる。だが、どこにもビニールの買い物袋は見当たらない。この市場にも、南太平洋に浮かぶこの島国中のどこにも、ないのだ。


バヌアツは使い捨てのビニールの買い物袋、飲料用のストロー、そして発泡スチロールの食物用容器をこの7月に禁止した。この国の海岸から海の中に至るゴミの流れを食い止めるための大胆な試みだ。首相のシャーロット・サルワイ氏が企業にも買い物客にも等しく与えた準備期間はほんの数ヶ月で、今では違反者は175ドルから900ドルの高額の罰金が課せられる。

住民たちは驚くほどすぐにこの方策を受け入れ、政府はさらに多くの使い捨て製品を制限し、世界で最も厳しいプラスチック禁止令をさらに一層厳しいものにする準備にとりかかっている。

「私たちは環境を保護したいのです」ポートビラの露天市場で週に6日農産物を売っているエレン・ジミーさんは言った。彼女はビニール袋をやめても商売には影響していないし、買い物袋を持たない客がパパイヤを脇に抱えて家に持ち帰るのを躊躇うことはめったにない、と指摘した。

この国の外務大臣のラルフ・レゲンバヌ氏は、政府は現在の禁止令にたくさんの使い捨ての製品を加える予定だと2月17日に発表した。規制の対象になっているのは、使い捨てオムツ、プラスチック製のナイフ・フォーク類、ネットや2つ折りタイプの食品容器だ。禁止令の次の決行は12月までに実施される可能性がある。

海洋プラスチックは、ハワイの遥か離れた沖の海中に漂い、南極の氷原に打ち上げられ、世界中で災難のもととなっている。海洋生物に大惨事を引き起こし、私たちの食物連鎖を汚染してさえいる。国連は、毎分ゴミトラック1台分のプラスチックが海洋に投棄されているのを知って、最近海洋ゴミに対して「宣戦布告」した。

バヌアツの全人口は27万5000人あまりで、世界廃棄物統計によると、海洋プラスチックゴミの原因の0.1パーセントにも満たない。太平洋島諸国全体でも、海に流れ込む不法投棄プラスチックの原因の1パーセントに満たない。

バヌアツの指導者たちは、プラスチック製品の手軽さと便利さから自らを解き放ち、世界の他の国々、それも特に最大のプラスチック消費者であるアメリカが施行できるような基準を打ち立てたいと望んでいる。

しかしアメリカの政治家たちは、バヌアツよりもはるかに少ないプラスチックを禁止するのにずっと苦労している。ニューヨーク州は何年もレジ袋を州全体で禁止しようとしてきていて、アンドリュー・クオモ知事は先月、2019年に再びその実現に向けて努力するつもりだと言った。

左寄りのカリフォルニア州だけが法律によって全面禁止にこぎつけている。ハワイも州の全ての郡が独自の法案を可決し、事実上禁止令を敷いている。いくつかのアメリカの都市も禁止令を持つか、レジ袋の購入に僅かな料金を課している。

しかし、アメリカの大部分では、この薄っぺらいレジ袋は以前と変わらず容易に手に入る。アメリカ人は毎年約1000億枚のレジ袋を使っていて、そのうちリサイクルされているのはほんの数パーセントだ。

バヌアツのプラスチックとの戦いはFacebookでのキャンペーンから始まった。

クリスティエル・チーフリーさんとジョルジュ・クンボさんはともにフランス生まれで、バヌアツに住んで20年以上になる。彼らが2017年3月にレジ袋禁止を呼びかけるFacebookページを始めた時、自分たちの提案がうまくいくとは思っていなかった。

彼らはポートビラ周辺のビーチのゴミの量がますます増えていくのに気づき、やむにやまれず行動を起こした。彼らが1990年代に初めてここに移り住んだ時、この地はまだ「ほとんど手付かずの環境」だった、とチーフリーさんは語った。「ますます多くのゴミが打ち上げられるにつれ、状況が変化してきたことに気づいたのです。ビーチがプラスチックだらけになったのです」

このFacebookページは支持者をどんどん増やし、このカップルが作った添付の嘆願書には数週間で約2,000の署名が寄せられた。彼らの努力は議員の注目を引き、2017年7月に首相が恒例の独立記念日の演説で翌年の末までにこの国はレジ袋を撲滅すると言った。2018年1月に正式に法律が導入され、6カ月の猶予期間を経てその年の7月に施行された。

「バヌアツで問題なのは、ゴミの95パーセントが輸入された物から、とういうことです。ここで作っているのではないのです」と、外務大臣のレゲンバヌ氏は2月に語った。「だから私は禁止に熱心なのです。外から入ってこないようにすればいいんですからね。禁止できるものはできる限り禁止するつもりです。」

プラスチック禁止令の展開は他の国ではもっと困難が伴っている。オーストラリアでは、2つの最大手スーパーのチェーン店がレジ袋の段階的な廃止を決めた時、国中に相次ぐ「レジ袋の怒り」が吹き荒れた。この新しい方針を開始してほんの数日で何人かの激怒した客がレジ係を襲い、結局スーパーマーケットは方針をいったん撤回してから、猶予期間を設けた上でレジ袋廃止の方針を再開することとなった。

バヌアツでスムーズに事が進んだ理由の一つは、ここでは環境への敬意が文化に織り込まれているということだ。使い捨てのプラスチック製品に代わる手工芸品産業が、何世代にもわたって繁栄しているのだ。こういったことがあり、使い捨てのレジ袋からの変更は苦痛を伴わないばかりか人気を博したのだ。

また、方針の変更はすぐに目に見える結果を生んだ。地元の人たちは、禁止令が施行される前と比べて、ポートビラの繁華街にはほとんどゴミがなくなったと指摘している。

「本当に大きな変化です」と地元の手工芸品協同組合のメンバーであるレベッカ・ブラさんは言った。「一人の市民として、ビーチに1枚のレジ袋も風に舞っていなくて、きれいな場所を見て本当に誇らしく思います。禁止令は本当に助かりました」

ブラさんは伝統的な手工芸品で生計を立てている多くの女性の一人だ。パンダヌスという地元のヤシに似た木の葉を編んで作ったバッグは、バヌアツの人々が使い捨てのレジ袋の代わりによく用いているものだ。このトートバッグは複雑な模様が編み込まれていて、何年も持ち完全に生物分解可能なものだ。

この国で「ママ」の名で知られているセリーナ・カルソンさんのような編み職人は、技術を年長の世代の人たちから学び、またその技術を若者たちに伝えていく。異なる島には異なる編み方の技術がある。過去6カ月の売上が増加してきているので、プラスチック禁止令は「ママ」たちにすでに恩恵をもたらしているし、禁止令が広まるにつれてこの傾向が続いてくれるといい、とブラさんは語った。

カルソンさんは、バヌアツの首都から北に20マイルも離れていないマンガリリゥ村に住むが、複雑なバッグをおよそ1日で1つ仕上げられる。彼女の町の女性たちは島の目抜き通りからちょっと外れたところに店を持っていて、バッグ、バスケット、トートバッグや敷物を約15ドルから35ドルで売っている。売上のおかげでカルソングは最近家に電気を引くことができた。

地元の人たちは観光客と同じ額の代金を支払うことはめったになく、家族の一員にそういったバッグを作ってもらうことが多い。バヌアツの住民の多くがそのバッグをあらゆる場所に持ち歩いている。

しかしプラスチックが完全になくなったわけではない。使い捨ての水のボトルはいまだによくみかけるし、現在の禁止令の対象にはなっていない。国のリサイクルプログラムはまだ始まったばかりで、住民は使うといらだってしまうようなプログラムだと言っている。だから、空の容器1本につき4セントがもらえるボトル返却金プログラムがあるのに、水のボトルは結局地元のゴミ集積場に捨てられてしまうことが多い。

ポートビラやエファテ島の他の地域のゴミ集積所であるブーファ埋立地では、プラスチックごみがいたるところに見られる。

このゴミ集積所で働いて10年になるロイ・アリックさんは、前はもっとひどかったと話している。彼は禁止令の効果にすぐに気づいた。つまり、ほとんど一夜のうちに島のゴミに含まれる使い捨てのプラスチックの量がはるかに少なくなったのだ。しかし、彼はまだまだ道のりは長いと言った。

「レジ袋はすでに禁止されましたが、ここにあるもので食い止めなくてはならないものがあります」とアリックさんは言って、使い古した靴や電子レンジの筐体を突っついた。「まだまだプラスチックはあります」

この新たなプラスチック禁止令をかいくぐる一部の使い捨て製品が出始めた。露天の市場では、一部の果物や野菜がプラスチックのネットに入れられて売られている場合がある。

市の食料品チェーン店のオ・ボン・マルシェも果物や野菜をネットに入れ始めた。この法律が最初に告知された時、このチェーン店はすぐにレジ袋廃止に動いたのだが。

レゲンバヌ大臣は、禁止令を今後改善させ、こういった新製品の一部を対象にする予定だと言った。

「我々政府の人間にとってこの禁止令は、人々は次に私たちが禁止しなければならなくなる他のものを思いつくものだ、ということの見本だったのです」と彼は言った。

バヌアツの最善の努力にもかかわらず、この国には未だに古いボトルのフタやスナックの包みがビーチに打ち上げられるのが見られる。レゲンバヌ大臣は、これはバヌアツが、プラスチックゴミの山に対処するのに限られた廃棄物処理インフラしかない他の国々に近いためだと言った。

「実際に、プラスチックごみをただ排出し続けている国もあります」と世界で最大の海洋プラスチック汚染国に含まれるフィリピンとインドネシアについて話す。それらの国々は近年大きな経済的成長を遂げたが、それと同時にプラスチックの生産と使用も増加している。「これらの国々は本当に改善する必要があります」とレゲンバヌ大臣は言った。

環境保護グループは、よりすぐれた廃棄物管理システムを開発する努力は重要だが、海洋プラスチック問題の責任の多くは産業にある、と言っている。

民間企業は長い間非難をかわし、その代わりに消費者を責めてきた、とグリーンピースのプラスチック汚染のグローバルプロジェクトリーダーのミリヤム・コップさんは言った。

「プラスチックに関する問題は、単なるゴミ問題ではなく、企業が引き起こし、政府が管理を誤った汚染問題であり、プラスチックは本質的に危険な物質として取り扱うべきなのです」とコップさんはメールで述べた。

「ごみ問題について消費者を非難し、消費者に行動を変えることを要求するのでは決してこの問題の解決にはなりません。使い捨てのプラスチックが環境に入り込まないようにする唯一の確実な方法は、発生源でこの問題に取り組み、生産を阻止することなのです」

レゲンバヌ大臣は、バヌアツの努力は小さな国でしか実際にはうまく行かない、特異な事例かもしれない、と指摘した。この国にはプラスチック製品を製造する大企業は1社しかなく、政府はその企業に直接協力し、新しい方針に適応する手助けを行ってきた。

「私たちの国が非常に小さいからこそ、そういうことができるのです。この国は、こういう事ができる、小さな実験室のようなものなのです」と外務大臣は言った。「この国の一つの利点は、非常に小さな国なので、他の場所では不可能だと考えられるようなことを行うことができるということです」

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