制裁を行えば、大打撃に
 いわゆる元徴用工問題で、日本政府が韓国に報復する見通しが強まってきた。麻生太郎副総理兼財務相は3月12日、国会で関税引き上げなどを例に挙げて「(制裁を)具体的に検討している」と述べた。文在寅(ムン・ジェイン)大統領はどうするのか。

 安倍晋三政権も「ここまで来れば、やむを得ない」と腹をくくったようだ。麻生氏は具体的措置として、関税引き上げのほか、ビザ(査証)の発給停止や送金の停止を挙げた。自民党はかねて、フッ化水素の輸出禁止も検討課題に挙げている。

 フッ化水素は半導体の製造に不可欠な原材料だ。高品質なフッ化水素は日本企業の独占生産状態になっている。戦略物資に指定されているため、韓国に輸出するには経済産業省の輸出承認が必要になるが、これを承認しない措置を検討する。

 そうなると、たとえばサムスン電子は事実上、高性能の半導体を製造できなくなる。半導体は韓国の主要産業なので、韓国には大打撃だ。さらに日本は現在、観光や商用目的など90日間までの短期であれば、韓国人のビザなし入国を認めているが、これを凍結する案もある。

 関税引き上げにしろ、送金の停止にしろ実行されれば、韓国には大打撃になる。それでなくても落ち込んでいる経済が一段と冷え込むだろう。安倍政権はこれらを段階的に実施して、文政権に対応を迫る構えだ。

 いわゆる元徴用工訴訟の原告らは、新日鉄住金や三菱重工が韓国に保有している特許権や商標権などの資産差し押さえに動いている。前者については、原告側が差し押さえ資産の現金化を裁判所に申し立てる方針と報じられた。現金化は秒読み段階とみていい。

 日本が報復の制裁措置に踏み込むべきかどうか、については、識者の間でも議論がある。

 たとえば『月刊Hanada』4月号では、作家の百田尚樹氏と元駐韓国大使の武藤正敏氏が激論を戦わせている。百田氏は「経済制裁を行うべし」との立場だが、武藤氏は「長期的に考えて経済制裁には反対」と主張している(https://www.amazon.co.jp/月刊Hanada4月号-花田紀凱責任編集/dp/B07NB9BK3X/ref=sr_1_1? ie=UTF8&qid=1552441286&sr=8-1&keywords=月刊+hanada)。興味深い論争なので、ここでポイントを紹介しよう。

韓国政府と国民を分けて考えるべきか
 武藤氏は「文政権に対する制裁なら効果があると思う」としながらも「韓国国民を敵に回すような施策は避けるべきだ」と主張する。「報復措置をとることで韓国国民を反日に追いやり、文政権と同調させるのは、日本の国益に対してもマイナス」という理由からだ。

 一言で言えば「韓国の政府と国民は別にして考えるべきだ」という意見である。

 これに対して、百田氏は「それがダメなんです!」と批判する。「あの国の政府と国民は一緒。文政権が軍事クーデターで成立した政権であるなら話は別ですが、文在寅は正当な選挙で選ばれている。あの政府は韓国国民が作ったもの」と反論している。

 百田氏は「(日本の報復措置によって、韓国が)経済危機に陥った時、国民の不満の矛先が誰に向くか。『文在寅のせいや! 』と文在寅に向けられると私は思っています」と指摘した。「むしろ、制裁で文政権に対する批判が国内で高まる」とみているのだ。

 私は百田氏の意見に賛成である。実際、1月にテレビの『そこまで言って委員会NP』で武藤氏と隣り合わせになった際も、私は「ビザなし入国の凍結を検討すべきだ」と述べた(1月20日放送)。当時から武藤氏は制裁に反対だった。

 たしかに、日本が報復制裁すれば、韓国の反日機運が一層、高まる可能性はある。そうだとしても、それがいまさら何だというのか。韓国は国を挙げて「もう十分に反日」である。それなら、目が醒めるまで、日本は毅然として報復すべきだ。

 百田氏が言うように、日本の制裁が文政権批判を巻き起こすなら、それこそ日本に望ましい。韓国の国民がどういう政権を作ろうと、日本はそれに文句を言えない。だからこそ、韓国国民に対するメッセージとしても、日本は制裁すべきである。

 韓国をここまで反日にしてしまったのは、日本がこれまで事を荒立てまいとして、妥協に妥協を重ねてきたという面もある。

 先のレーダー照射事件でも、岩屋毅防衛相は当初、日本の自衛隊哨戒機が撮影したビデオ録画の公開に反対した。「韓国を追い詰めてはいけない」という理由からだ。こういう姿勢が韓国を増長させてきたのだ。それを押し切って公開したのは、安倍首相の判断である。
協議に応じても、応じなくても
 文政権は昨年秋から反日のギアを上げていた(2月15日公開コラムなど、https://gendai.ismedia.jp/articles/-/59896)。元徴用工問題では、日本側の再三の要請にもかかわらず協議に応じていない。事態に介入する姿勢も見せていない。 こうなれば、日本が報復措置に踏み切るのはやむを得ない。

 報復したからといって、韓国と協議しないわけでもない。報復をきっかけに、韓国が協議のテーブルにつく可能性もある。逆に何もしなければ、資産差し押さえの動きは一層、広がるだろう。

 ここへきて、韓国がようやく重い腰を上げて、14日にはソウルで外務省の局長レベル協議が開かれた。とはいえ、局長レベルで解決できる問題でないのは明らかである。

 結局は、日韓請求権協定に基づいて第3国委員を交えた紛争解決のための仲裁委員会の開催を求める展開になるだろう。日本は世界に主張の正当性を示すためにも、報復措置を発動したほうがいい。「黙っていても、世界は理解してくれる」と考えるのは間違いだ。

 文政権はどうするつもりなのか。

 日本が報復措置を検討しているのをみて、韓国外務省は「我が政府はさまざまな可能性を念頭に事案を検討中。日本に慎重な対応を求めている」という(https://www.jiji.com/jc/article? k=2019031100758&g=int)。にわかに慌て始めたニュアンスがある。

 協議に応じれば、それでよし。応じなければ、日本は段階的に制裁を強めるだけだ。韓国経済はますます疲弊する。文政権は北朝鮮問題に続いて、反日運動でも自分の首を締める結果になった。まさに落日の政権である。

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https://gunosy.com/articles/RPerp

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