【バンコク西脇真一】タイで違法薬物のまん延が深刻化している。押収量は昨年、覚醒剤約18トン、低純度の錠剤型覚醒剤「ヤーバー」は約5億錠と共に過去最高を記録。一部は日本など国外へ流れている。タイ軍事政権も取り締まりや使用者の社会復帰に力を入れるが、追いついていないのが実情で、課題は総選挙後に発足する新政権に持ち越される。

 昨年6月26日夕、バンコク港を1隻の貨物船が出港した。行き先は韓国・釜山。7月6日に到着後、韓国の捜査当局が積み荷の機械の中から覚醒剤90キロを見つけた。韓国で過去最大の押収量だった。密輸には多国間の組織が関与しており、日本や台湾、韓国の6人が逮捕され、日本などの4人が国際手配された。

 機械の輸出手続きに関わった会社はバンコクにあるが、登録住所地は住宅。そこに暮らす女性は「ずいぶん前に会社は移転した。たまに関係者が郵便物を取りに来るが、警察が調べに来たことはない」と言う。摘発されるのは氷山の一角だ。

 タイ麻薬取締委員会事務局によると、覚醒剤は原料が中国からミャンマーの少数民族武装勢力の支配地域に運ばれ、密造される。そこからタイに持ち込まれ、世界各地へ密輸されているという。

 一方、タイ国内では「どこでも覚醒剤が手に入るので、使用者が300万人いると言われる」(捜査関係者)。覚醒剤の末端価格も下がっており、ヤーバーは1錠150バーツ(約530円)。使用の低年齢化も目立つ。

 国連薬物犯罪事務所の統計では、軍政が発足した2014年と昨年の押収量を比較すると覚醒剤は約18倍、ヤーバーは約5倍増加。また使用者が自発的に申告した場合は罪を問わずに、「患者」として更生医療施設へ入所させる制度を導入しており、昨年は約21万人が利用した。

 委員会事務局のウィラワット・テンアムヌウェイ副長官は「(未成年者らの)薬物乱用は親の子供への無関心など社会問題と関係しており、刑務所に送るだけでは解決しない」と強調し、制度の長期継続を訴える。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190323-00000024-mai-int


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