今月4日と9日に北朝鮮から発射された2発の飛翔体が世界を騒がせていた最中、約2週間にわたって国連の人道機関が北朝鮮国内36カ所の食糧事情、栄養失調状態を調査。その結果、国全体で約136万トンの食糧が不足し、全人口の44%が飢えに苦しんでいるという惨状が明らかになった。

 こういった事態を見兼ねたお隣の韓国が、2年前に決定した800万ドル相当の食糧支援の準備を始めた矢先に起こった今回の出来事は、韓国の厚意に水を差す北朝鮮の行いだったといえる。しかし、12日にAbemaTVで放送された『Abema的ニュースショー』に出演した北朝鮮事情に詳しいコリア・レポート編集長の辺真一氏は、韓国からの食糧支援は“砂漠の1滴”に過ぎないと断言すると、北朝鮮の苦しい台所事情、さらに金委員長の本音について次のように解説した。

「1100万の国民が飢えている北朝鮮にとって、韓国からの800万ドル相当の食糧支援は砂漠の1滴に過ぎない。国連安保理の制裁によって貿易が規制され、既に20数億ドルの外貨が手に入らない状況が続いている。その20数億ドルが手に入れば、少なくとも全国民4、5年分の食糧危機を解消できる。今年2月のベトナムで行った米朝会談で提示された『先に非核化、後に制裁解除』という無理難題ではなく、より現実的な妥協を(米国に)してもらいたいという金委員長の意向が、今回のミサイル発射に込められている」

 また今回の飛翔体発射について、国際社会からは国連決議違反との批判も上がっているが、そのことについて辺氏は「そもそも北朝鮮は、国連決議を守るとは一言も言っていない」と続ける。

「北朝鮮は当初から国連決議は“不当”だと主張しているため、国際社会のいう国連決議違反には当たらない。そのような状況で百歩譲って1年半も我慢した。それに長距離弾道ミサイルを発射しないとは言ったが、短距離ミサイルを発射しないとも言っていない。『約束違反だなんて、ふざけるんじゃない』というのが金委員長の考え方だろう」


日本と北朝鮮が急接近!? カギは倉庫に眠る12万5千トンの食糧
 とはいえ、前述のように北朝鮮の食糧事情はひっ迫している。韓国の800万ドル相当の食糧支援に代わるカードを北朝鮮は有しているのだろうか。そこで持ち上がるのが、6日に「(拉致問題解決のために)私自身が金正恩委員長と向き合わなければならない。条件をつけずに向き合わなければ」とコメントを出したばかりの安倍首相だと辺氏は指摘する。

「米朝会談を巡って韓国の文大統領がトランプ大統領を説得できないとなれば、トランプ大統領と最も緊密な関係にある安倍首相に近づく可能性がある。安倍首相は『無条件で会う』と話しているが、金委員長が無条件で会うことはない。あるとすれば、食糧支援だ。北朝鮮に対する日本の食糧支援については2004年の時に約束を交わしたうち、未だ半数程度の12万5千トンが倉庫に眠っている。この支援を受けることができれば、北朝鮮はひっ迫した食糧危機から一時的に脱してひと息つくことができる。韓国の800万ドル相当の食糧支援は米に換算すると4000トン程度。それらを考慮すると、安倍首相がボールを投げたこのタイミングで、日本に顔を向ける可能性は高い」

 日本としては拉致問題を解決するまたとない機会となるが、国際政治学者の舛添要一氏が「その時に拉致被害者を返すという決断はあり得るのか」と問い掛ると、「入り口の段階で拉致問題を出さないことが前提になるだろう。日本としては国交正常化というニンジンをぶら下げながら、交渉の出口の段階で拉致問題を解決する。それが安倍首相の本当の狙いだろう」と辺氏は応じた。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190514-00010017-abema-kr&p=2


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