前立腺がんの患者らが、滋賀県にある大学病院に「治療を妨害」しないよう求める、異例の事態が起きています。


96~98%が完治 高評価のがん治療

「仕事辞めてから始めたんですよ」
兵庫県尼崎市に住む、宮野覚蔵さん(66)。定年退職した後、何か新しいことに挑戦しようと、尺八の演奏を習い始めましたが、4年前、前立腺がんと告知されました。

「なんで僕やって思ったんですけど、現実ですからね。逃げられない。どうしようかって必死になった」(宮野さん)

失意の中、ある医師の存在を知り、治療を受けます。

「96~98%完治する、発症(再発)しないというデータ見せられましたので安心しました」(宮野覚蔵さん)

治療したのは、滋賀医大病院の岡本圭生(おかもと・けいせい)医師(58)です。岡本医師が手掛けるのは、「小線源治療(しょうせんげんちりょう)」。小線源治療は、放射線が出る5ミリほどのチタン製のカプセルを50個から100個、針を使って前立腺に埋め込み、がん細胞を死滅させます。

「不十分でもダメ、やり過ぎでもダメ、これ以上もこれ以下もないっていう(治療)、それをどれだけの精度でやれるか」(岡本圭生医師)前立腺がんの治療は、「再発リスク」が大きな課題ともいわれています。通常は30%~50%とされている再発率ですが、岡本医師は、これまで、がんが進行している患者でも、再発率を5%以下に抑える、優れた治療実績を残しています。その繊細な治療方法は「岡本メソッド」と呼ばれ、国際的にも、高い評価を受けています。

宮野さんは去年、「岡本メソッド」を受けてから、血液検査での異常がなくなりました。今は、自転車で瀬戸内海のしまなみ海道を渡るのを楽しみにしています。

「Q.岡本医師はどんな存在?」
「そりゃ命の恩人でしょ」(宮野さん)

岡本医師の治療で、救われた患者は他にもいます。神戸市の柴山忠一さん(62)は4年前、前立腺がんが、体の別の場所にも広がっていると告げられました。

「終活をやっていました。私がやっていたことを家内に引き継いでいくということをやっていました」(柴山忠一さん)

一度は死を覚悟した柴山さんでしたが、岡本医師の治療を受けた後、「完治が確定した」という報告を受けます。大好きだった山歩きも、今では心置きなく楽しめるようになりました。
「毎日同じ朝が来るということがいかに大切なことだったか。当たり前のように日々過ごしていたということはすごく感じました」(柴山さん)
多くの患者が望む治療が受けられなくなる
 年間7万8000人がなるといわれる前立腺がん。「岡本メソッド」はこれまで、1000人以上の患者を救ってきました。評判を聞きつけ、多くの患者が治療を希望していますが、実は、滋賀医大病院で岡本医師の治療を受けることができなくなるのです。いったい、何が起きているのでしょうか。

「なんとかして治療を継続していただきたいと思います」

4月、滋賀医大病院の前に、前立腺がんの患者らおよそ30人が集まりました。彼らが強く訴えているのは、岡本医師による治療の継続です。

岡本医師は病院で、小線源治療の「寄付講座」を受け持っています。寄付講座とは、民間企業の寄付金で患者の治療や研究を行うもので、岡本医師の給与も支払われています。そんな中、病院は寄付講座の期限にかかわる規定を変更。岡本医師が受け持つ講座は今年いっぱいで閉鎖されることになり、岡本医師も病院を去ることになったのです。

さらに病院は、「治療後は6ヵ月の経過観察が必要」だとして、7月以降の治療は実施しないと発表。このため、岡本医師の治療を受けたくても受けられない、いわゆる「待機患者」が生まれることになったのです。

「待機患者」の一人、尼崎市の鳥居浩さん(62)は1年前に前立腺がんと告知され、岡本医師の治療を待っていました。

「実際には6月以降になるから僕は受けられない。えっ?ていう感じでしたね。ショック、自分では間に合うと思っていましたから」(鳥居浩さん)

患者のためにも、しばらくは治療を続けさせてほしいと岡本医師は訴えています。

「6ヵ月という数字に妥当性はない。治療1ヵ月後のMRIは当院でやらなければならないですけど、私がどこかでフォローアップできればいいわけじゃないですか。今の待機患者さんを治療しない理由にはならない」(岡本圭生医師)

病院での経過観察は、治療後1ヵ月あれば十分で、今年11月までは、治療を続けられるというのが岡本医師の主張です。1週間に3人の患者を治療すれば、11月までには、60人の患者をみることが可能だといいます。鳥居さんをはじめ、治療を待ちわびる待機患者たちは今年2月、治療の継続を求め、大津地裁に救済を訴えました。

「自分の中にがん細胞がいるんやと思うと、一刻も早くという気持ち。最悪あかんかっても岡本先生がどこかでやられるなら、スタッフも道具もそろってやられるなら、たとえ遠くてもみんな行くと思います」

「岡本先生は治した後も大丈夫って、僕に任せたら完璧に治るからっていう安心感を与えてくれた。他ではそういうの味わってなかったので」

病院が治療を認めないその理由とは
 治療を希望する患者がいて、実績十分の医師がいるのに、病院が治療を認めない、異常事態。なぜ、こんなことになったのでしょうか。実は、寄付講座の規定が変更される2年前、病院である出来事が起きていたといいます。
「4年前、滋賀医大病院では、23人の前立腺がんの患者の治療が計画されていました。しかし、この治療は、岡本医師によるものではありませんでした」(ABCテレビ・濱田記者)

病院によりますと、治療は、「岡本医師の指導のもと」、A医師が実施することになっていました。一方、岡本医師は、「患者への面談もできず、治療当日、そばで立ち会うだけだった」と主張しています。さらに、A医師は、岡本医師の治療を一度見学しただけだったというのです。岡本医師が治療の中止を学長に求めましたが、そのことが理由で、病院から追放されることになったと訴えています。

「私が内部告発して問題提起して患者の人権が損なわれていると言っているわけでしょ、それがいなくなればもう追及できなくなる。つまり、なかったことにしたいわけですよ。そういうことをやると追放されるかもしれない、それを恐れて黙っていることはできなかったし、今も黙っていない」(岡本圭生医師)

決めるのは患者自身だ
 岡本医師の治療を望む患者らは、経験のない医師が治療しようとしたのは説明義務違反だとして、去年8月、損害賠償を求める訴えを起こしています。

「自分がどういう治療を受けるかということは患者自身が決める権利がある。そのために必要な情報を医師は提供しなければいけない。自分自身が未経験であることも説明したうえで患者の自己決定権を保障すべきである」(患者側代理人・井戸謙一弁護士)

患者らの主張を、病院はどう思っているのでしょうか。ABCテレビの取材に対し、滋賀医大病院は「係争中の事柄に影響を及ぼす恐れがあるので回答は控えさせていただきます」とコメントしています。そして、7月以降は、A医師らによる小線源治療を開始すると発表しています。岡本医師の治療を7月以降も継続するよう求める患者たち。大津地裁は5月中に判断を示すことになっています。

待機患者の鳥居さんは現在、薬の力でがんの進行を遅らせながら、岡本医師の治療を待っています。

「Q.がんが治ったらしたいことはある?」
「家内と世界一周、まずは日本一周の船に乗りたい」(鳥居さん)

「希望する医師による治療を受けたい…」。患者らの声は、届くのでしょうか。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190516-00010001-asahibc-l25&p=3


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