チキンを愛する韓国人

突然だが韓国には「起承転鶏」という言葉が ある。「起承転結」をモジったもので「キ・スン・チョン・チキン」と発音する。「色々迷ったけど、結局チキンを食べよう!」という意味だ。「チキン」と、韓国語でビールを指す「メクチュ」を合わせた「チメク」という造語もある。仕事終わりのサラリーマンや学生は「チメク行こうぜ!」を合言葉にチキン専門店に向かう。手ごろな値段のフライドチキンとビールで一日の疲れを癒し、明日への活力を得るのだ。

韓国人はチキンを愛している。
しかしこの庶民の味方チキン店が、韓国経済急降下の直撃を受け「チキン残酷物語」とも言える悲劇に見舞われようとしている。

韓国中に溢れかえるチキン店
KB金融持株経営研究所が6月3日に公開した「チキン店現況および市場条件分析」という報告書によれば、2018年末現在、韓国では約8万7000店ものチキン店が営業中だという。セブンイレブンやファミリーマートなど日本にあるコンビニチェーン店の総数が約5万6000店。韓国の人口が日本の半分以下である事も考慮すれば、韓国のチキン店舗数8万7000店というのがいかに多いのか分かるだろう。チキン店は飽和状態なのだ。

なぜこんなに多いのか?報告書はその理由として高い失業率をあげた。2019年4月現在、日本の失業率は2.4%だが、韓国の失業率は4.4%に達する。韓国では仕事をクビになった人の再就職は難しく、自分で飲食店を開業する人が多い。事業経験が無い人はフランチャイズ店と契約してノウハウを教えてもらいながら店を経営するのが一般的だ。チキンは「国民のおやつ」と言われるほど人気が高く、調理も比較的簡単で、出前での売り上げ比率が高いため店舗が狭くても経営が成り立つ事から、多くの失業者がチキンのフランチャイズ店に人生を賭けるのだという。しかし、あまりにも店舗数が多く競争が激しいため、つぶれる店も多い。2015年以降、毎年6000~8000店が新規創業しているが、同時に毎年8000店以上が廃業している。それだけ、夢破れた人が多いのだ。

チキン店のこうした厳しい経営状況に、最近の韓国経済の急降下などがさらに拍車をかけている。

急降下する韓国経済
韓国銀行は6月4日、2019年第1四半期の経済成長率が前期比-0.4%となり、韓国経済がマイナス成長に転落したと発表した。リーマンショックによる世界的な金融危機の影響を受けた2008年第4四半期以来10年ぶりの事だ。韓国メディアによると、経済成長率を公表しているOECD・経済協力開発機構の加盟国22か国中、韓国は最下位だった。また2019年第1四半期の国民総所得(GNI)も約452兆6千億ウォン(約41兆1866億円)と前年同期比0.5ポイント減少し、総貯蓄率は34.5%と前期比0.9ポイント下落した。総投資率も30.7%と前期比0.7ポイント下落していて、ほぼ全ての経済指標が悪化している。

韓国経済研究院は、韓国経済の成長をさらに押し下げる可能性がある対外的な要因として、「米中貿易摩擦の激化」「貿易規模の縮小」のほか、「主要国の成長率下落などによる対外輸出減少」「半導体価格の下落傾向の持続」「国際資本市場の不確実性増大」などをあげる。将来は暗い。輸出・投資・消費が同時に落ち込み、三重苦だ。

不況と人件費増のダブルパンチに苦しむチキン店
さらに文在寅政権の政策も足を引っ張っている。文大統領は、就任した2017年には6470ウォン(約613円)だった最低賃金を8350ウォン(約760円)まで急激に引き上げたのだ。所得を増やす事で経済を成長させるという独自の「所得主導成長理論」を実践したのだが、蓋を開けてみれば、チキン店のようなアルバイトを雇う形態の自営業者は、人件費の増額による利益減少により一層窮地に立たされたのだ。この政策にはメディアなどからも「失策だ」との批判が出ているが、韓国大統領府は政策を変える姿勢は見せていない。

最近はソウルの繁華街ですら空き店舗が目立ってきており、チキン店の廃業は年間8000店どころでは済まなくなるかもしれない。脱出口が見えない韓国経済。チキン店廃業の増加が象徴する庶民生活の厳しさは、日増しに大きくなっている。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190608-00010003-fnnprimev-int&p=2


PDF