ドイツはトーネード戦闘機の後継候補にF-35、ユーロファイター、F/A-18Eを挙げていましたが、早々にF-35は候補から外れました。購入を決める前の段階なのでキャンセル扱いにはなりませんが、この流れは大方の予想通りと言えるものでした。ドイツは自国産業の保護を優先し、フランスと組んで新型ステルス戦闘機を開発するFCAS計画を発動しているので、ステルス戦闘機はFCASで確保できるとして、トーネード後継は間に合わせの機体でよいという考え方です。

 そしてもう一つの大きな政治の流れがトーネード後継の選定に影響を与えています。ドイツはアメリカとの核兵器シェアリングでB61戦術核爆弾の供給を受けますが、トーネードはB61戦術核爆弾を搭載する核攻撃機です。しかしドイツでは核兵器シェアリングという政策自体を再検討する動きが出て来たのです。

SPDはこのほど、冷戦時代の合意である「核の共有」の利点も含め、戦略や外交・安全保障政策に関する党の立場を見直す委員会を設置した。党幹部が明らかにした。核の共有とは、ロシアが欧州を攻撃した場合、ドイツの軍用機を使って米国の核兵器を発射し反撃するというものだ。

SPDによる委員会の設置は、基盤がぜい弱なメルケル政権に一段の圧力をかけることにもなる。政権の保守派は国防費増額を支持しており、米国の核兵器運搬が可能な米国製の軍用機を調達することで、老朽化している独空軍の装備を刷新したい考えだ。国防相は、米ボーイングの戦闘機「FA18」を最大45機購入する計画を提案しているが、SPD幹部はこれを阻止する構えを見せている。

 トーネード後継の候補3機種のうち、F-35はこれからB61戦術核爆弾の運用能力を付与予定、ユーロファイターは付与予定なし、F/A-18Eは既に付与済みです。そのためF/A-18Eがトーネード後継の最有力候補だったのですが、ドイツ与党SPDの核兵器シェアリング見直しという政策変化の流れから、最有力候補がユーロファイターに移ろうとしています。

ドイツ与党SPDは核兵器シェアリングを終わらせようと動く一方、メルケル政権は維持したいと考えています。もしドイツが核兵器シェアリングを終わらせた場合、ドイツに貯蔵されているアメリカのB61戦術核爆弾はアメリカ本土に戻るか、NATOの別の国に移設される可能性が出て来ます。核攻撃能力を持つ戦闘機を配備している国が候補となるでしょう。そしてB61戦術核爆弾が自由落下方式の核爆弾である以上、ロシアとの前線になるべく近い方が理想です。

ドイツは核兵器シェアリングという、自国の国土に攻め込んできた敵に対して自国の手で核爆弾を投下する壮絶な役割をもう止めたい。そんな役割は他国に押し付けたい。ゆえに核攻撃機であるF-35やF/A-18Eを拒否したい。つまりドイツ空軍のトーネード戦闘機後継は政治的な理由で決まるものであり、個別の戦闘機の空戦性能などはあまり考慮されていません。そしてステルス戦闘機であるF-35はレーダーに探知され難く、B61戦術核爆弾の運搬役としては最も優れています。だからこそ拒否しなければならなくなったとも言えます。

https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20190628-00131932/