6月30日、トランプ米大統領の「ツイッター提案」から始まった板門店(パンムンジョム)でのサプライズ米朝首脳会談の推移を、韓国メディアは固唾を呑んで見守った。

韓国メディアが関心を寄せたのは、会談そのものの成否だけではない。それに劣らず、文在寅大統領の「立ち位置」が注目の的となったのだ。というのも、北朝鮮メディアはこの前日まで、「思考と精神がマヒしている」などと口を極めて文在寅大統領を罵倒していたからだ。

文在寅政権はこの間、北朝鮮に対してたいへんな気の使いようだった。特に、金正恩党委員長が最も批判されることを嫌う、北朝鮮国内における残忍な人権侵害からは露骨に目を背けてきた。

それにもかかわらず、北朝鮮は最近になって、文在寅氏に対する個人攻撃を開始していた。日米との不協和音に加え、北朝鮮からもハシゴを外される危機に直面していたのだ。

北朝鮮が腹を立てているのは、韓国が米国との協調を優先し、南北首脳会談で合意したはずの経済協力に、文在寅政権がなかなか踏み出そうとしないからだ。もっとも韓国としても、北朝鮮の非核化が進展していない以上、おいそれと経済協力に踏み出すことなどできない。

そこで文在寅政権は、米朝対話の「仲介者」を自任して当事者としての立場を守ろうとしてきたわけだが、北朝鮮は「(韓国の)仲介など不要だ」と明言している。これを受けて韓国メディアは、北朝鮮が板門店での米朝首脳の対面の場から、文在寅氏を締め出すのではないかと心配したわけだ。

結果的に、文在寅氏は米朝首脳の会談には同席しなかったものの、3者ともに言葉を交わす場面が作られたことで、体面を保つ形となった。

しかしだからと言って、北朝鮮が韓国に対する態度を変えたわけではない。北朝鮮の対韓国宣伝サイトである「ウリミンジョクキリ(わが民族同士)」はこの日、「米国の承認なしには北南関係において一歩も前進できないものと思い込んでいる南朝鮮当局の思考方式は、これ以上は見過ごせないほど時代錯誤的と言わざるを得ない」などとする論評を掲載した。

対外宣伝サイトの「メアリ」も同日の論評で、「(韓国が)外勢を優先視する事大主義的な根性を大胆に捨て去り、北南宣言で明らかにされたとおりに民族自主の旗を高く掲げることだけが、真に北南関係の新たな歴史を記していく道なのだ」と強調した。

つまり、北朝鮮が韓国に求めるのはあくまで経済協力の実施であり、それは今後も変わらないということだ。そして、韓国が米国の承認なしに経済協力に踏み出せないという現実にも、変化は起きそうにない。

文在寅政権はこれ以外にも、日韓関係の悪化や軍の失態など、いくつもの難問に直面している。

https://news.yahoo.co.jp/byline/kohyoungki/20190701-00132343/