作家・江上 剛

今回紹介する内容は2013年11月に韓国で現地取材したもので少し古いのだが、今でもあまり状況は変わっていないだろう。否、むしろ最近の文在寅大統領の言動をみると、もっと悪化しているとも言える。

 皆、正直に語ってくれているのでそのまま紹介したい。

 ◇20~30年で一番の関係悪化

【鉄鋼大手ポスコの社員】
 日韓関係の悪化はビジネスに直接の影響はありません。いきなり、「もうおまえとはできない」という話ではありません。ただ、今の状況が10年続いたら分からないですが。中国がうるさい今だからこそ、日韓は慎重になるべきです。ビジネスマンは冷静にみていると思いますよ。

【全国経済人連合会職員】
 徴用工問題は私が担当する分野ではないですので、申し上げるのが適切ではないと思いますが、やっぱり産業的な部分では、政経分離ですね。政治と経済を分離してやるべきなので、そういうふうな接近が正しいのではないかと思います。

 【セヌリ党(保守系、現自由韓国党)国会議員】
 現在の韓日関係はこの20~30年で一番悪いですね。その原因は、両国に責任があると思います。相手にとって自分がどれだけ必要かの認識が不足しています。お互いよい関係にしなければなりません。

 それなのに、改善の可能性が見えてこないのは残念です。戦略的にみても中国の浮上に対して、安全保障の重要性や経済的なものを考えていないのが心配です。過去の問題に落ちてしまい、現在と未来について悩むことを失っていると思います。

 徴用工問題は(日韓請求権協定を結んだ)1965年に済んだというのは基本的には共感します。ただ、法的には終わったとは思いますが、国民の気持ちは終わっていません。創意的な努力が必要です。韓国政府も協力した共同基金などが考えられます。政府は被害者の要求を無視したのだから、協力すべきです。

彼女たちが救済資金を基金(財団法人女性のためのアジア平和国民基金)から受け取らなかった理由は、本当に日本が謝罪していないからではないですか。当時、受け入れなかったのは、日本の真心がなかったからというのに同感です。

 なぜ両国にパイプラインがないのかというと、10年前までは日本語のできる議員がたくさんいたのに、今は300人中10人くらいです。

 それから、日本の重要性を考えている議員が少ないことも挙げられます。過去には日本文化が好きで付き合っている人がいたが、今は日本を魅力的に思っている人が少ないのです。政治家が、知日派と発言することが難しい雰囲気だと思います。もちろん、私は知日派の一人です。

 両国の問題の中で、一番解決が容易なのは、慰安婦問題だと思います。

 (原発事故後の福島など8県産の)水産物輸入禁止は過剰反応だと思っていますが、政府が東京電力に原発処理のすべてを任せたのが手ぬるい措置であり、そういう結果になったのではないでしょうか。

 ◇安倍首相は痛い歴史を知らない

 【元金大中大統領経済顧問(左派)】
 日韓の問題はデリケートです。双方が平行線をたどるしかない、解こうとする努力がなかったのです。その努力は大事で、徴用工被害者には恨みがあります。日韓基本条約で終わったというのはよくない。日本がドイツのように対応できていないのは惜しいことです。これまで、政経分離だったが難しくなった。

 私は親日本国民派という人間だと思って聞いてください。そういうふうに思いながらも私は、徴用工や独島(竹島の韓国名)に対しての考えは普通の国民と変わりません。

 独島は、日露戦争のときに主人のいない島として強制的に日本領にしてしまった歴史があります。安倍晋三首相は(韓国の)痛い歴史を知りません。植民地時代は早婚の時代でした。14~16歳で結婚しないと慰安婦にされるということです。日本は結婚の制度まで変えてしまった。それは、われわれ以前の世代は皆知っています。それだから、日本の政治家への不信はなくならないのです。

 植民地時代にインフラを整えたという人がいますが、不可解です。日本の指導者は間違った方向に導いていますよ。私は、日本の政治家がそんなことを本気で言っているはずはないと思っていました。しかし、今では本気なのだと思うようになりました。過去の侵略を正当化している。

 集団的自衛権という日米同盟の中に韓国を帰属させようとしているのではないかとすら思ってしまう。米国の世界戦略では、日本に東アジアを任せようとするのではないか。日本の指揮下に韓国を置くのではないかと思っています。対中国を考えてそうするのは、間違いだと思います。

◇反日記事は扱いが大きい

【元民主党(現・共に民主党)国会議員(重鎮)、盧武鉉政権で鉄道公社社長(左派)】
 日韓関係をよくするためには、あまりにも当たり前ですが、過去の誤った歴史への謝罪と適切な言葉、行動が一番の方法だと思います。よく例えるのは、ドイツの戦後謝罪ですが、日本的な表現をすれば経済的な不安を感じているのではないかとも思います。

 賠償のために謝罪を要求しているのではありません。はっきり言ってしまえば、賠償と謝罪は分離してしまってもいい。もう一つは天皇制。最終的に天皇に責任が及ぶと考えているのではないでしょうか。それが日本が謝罪できない理由です。

 【韓国外国語大学日本語学科学生(日本滞在経験あり)】
 反日運動については報道の力が強く、個人が真に受けて失望している気がする。(日本から)韓国に転校してきたときに、まず「独島はどちらのもの」と聞かれ、中1の私は「よく分からない」と答えた。「じゃあ韓国と日本のどちらが好き」とも聞かれた。「同じくらい」と答えました。

 反日の記事は大きく取り上げられて、良い記事は少しだけです。友人は日本に行ったことがないので、間接的に知るだけです。反日記事の影響を受けやすいんです。

 韓日の民間交流というのはたくさんあります。個人で付き合うと悪い関係になりません。歴史や政治を取り除くと仲良くできます。朴槿恵大統領が日本(の首相)と会わないのは考えがあるのでしょうけど、あのような(会わないとの)断言をしてしまうのは、個人的に問題だと思う。避けているだけで話し合わないのは駄目だと思う。

 日本が嫌いというよりも、原発の問題で「危ない」という印象があります。日本旅行に行くと言ったら「危ないよ」と言われますし、死ぬと思っている人もいます。例えば、日本の大学に合格しても命が危ないから行くなという親もいるぐらいです。

 そういう人は、日本の国土の大きさを理解していません。日本に行くなら他のことにお金を使ったら、とも言われました。

 日本の魚を食べると驚かれます。出掛ける時に生きて帰ってきてね、と言われました。日本が原発の影響で滅びると思っている人もいます。だから、日本語を勉強しても無駄でしょうと心配されるんです。

◇総論で謝り、各論で弁明する
 【保守系雑誌「月刊朝鮮」編集長(右派)】
 日本は、韓国が謝れと言い続けることに不満があるようです。それも一理あります。しかし、韓国の国民は日本がはっきり謝っていないと考えているのです。慰安婦問題の責任をちゃんと取る。韓日条約を持ち出さないことも大事。そういうところで真心が伝わるものです。

 日本は総論では謝るけれど、各論で弁明すると考えられています。植民地時代に起こったことだから謝るべきです。いろいろな意見があるのは分かるが、村山談話、河野談話を否定する発言が多過ぎる。

 歴史の問題については、慰安婦問題はまだ解決しやすい。例えば、関東大震災後のデマで多数の在日朝鮮人が虐殺された問題や、1950年からの(北朝鮮への)帰国事業に協力したことなど問題はたくさんある。あれは、日本中から韓国人を追い出すために行われたものです。

 今の韓日問題は深刻に考える必要はありません。輸入禁止の問題などがありますが、民主主義国家同士だから戦争になることもありません。考えの違いは、侵略をされたことがない国とたくさんされた国の違いです。中国からの侵略では国は残った。しかし、日本の時は国がなくなった。それを恥だと思っている。その違いがある。

 韓日の関係では、安保問題が大事です。しかし、韓国側には警戒心があります。というのも、朝鮮半島に日本の影響力が大きく伸びるのは困るのです。それが国民の気持ちです。

 それは、植民地以降、変わりません。マスコミも、韓日軍事協力が安保問題にプラスになるとは書けません。そう書いてしまうのは、言論人として危ないことです。反日というよりも、警戒をしているということです。

 ◇若い判事がやりたい放題
 【朝鮮日報デスク】
 反日感情は10年前と比べられないくらい減っています。居酒屋では「日式」として、日本酒とか刺し身を扱っていますし、ドラマ「怪しい家政婦」は日本の「家政婦のミタ」のリメークだと知ってみんな見ています。むしろ、日本のものは以前より受け入れられています。

 反日教育という意味では、幼い頃から日本について学んでいるから、良いところは全然ないと考えてしまう部分もあります。うちの6歳の子どもが保育園で最初に学んだ歌は「独島わが領土」です。

 「官治経済」といいまして、政治が経済を支配する時代が続きました。それがクリーンになり、自由になりました。あとは企業家が自分の力を出せるようになった。半導体分野などは、日本の協力が欠かせませんでした。実際、今も協力関係にあります。国際分業の中で、韓日は密接な関係にある。

 安倍政権は、韓国では極右と思われていますが、普通の考えも持っています。慰安婦や拉致問題などは違いますが。外交面では優先順位が違いますね。安倍首相が大事にする日本人拉致問題は、こちらでは大きくはありません。一番は(北朝鮮の)核問題です。

 徴用工問題は新日鉄住金(現日本製鉄)とポスコの株の問題を注視する必要があります。新日鉄住金はポスコの株式の3%を持っています。これが差し押さえられる可能性もある。昔ならこんな(日本企業に賠償を命じる)判決は出ません。

 若い判事がやりたい放題やっているから急にこんな判決が出た。一番の心配です。これは困ることになります。ただし、メディアが韓日条約で解決済みと書いたら、国民から攻撃の対象になります。だから、どのメディアも法的な問題を指摘しないのです。徴用工被害者に配る資金をポスコなどに投資したことは事実ですから。

 安倍政権の公式の談話自体は素晴らしいと思います。ただ、問題なのは、政治家がその談話と違うことを発言するからなのです。

◇政治とビジネスは別
 【日本企業と提携する韓国中堅企業社長】
 日韓関係については政治家たちの活動だと思っていますし、われわれはビジネスで自分らの役割があるのではないかと思っています。政治は、一時的に関係が良くなったかと思うとまた悪くなる。ビジネスはそんな関係じゃなく、次の発展を目指して努力しなくてはならない。脳の構造も、政治家とビジネスマンとは違うのではないかと思っています。

 25年ぐらい前に私が日本に行った時に、従業員からなぜ社長は日本に行くのかと疑問を持たれました。しかしそれ以降、日本と関係を続け、社員も日本に行って教育を受けるようになると、変わっていきました。

 毎年、日本の提携企業と社員同士のサッカーの大会をやっています。30人から35人ぐらいの社員が汗を出しながら、ぶつかりながら試合をする。後はビールで乾杯する。自然に両社の社員たちの間に信頼関係ができました。

 【韓国ビジネスマン(日本と特に関係ない)】
 日韓関係については微妙です。正義を判断するのは難しい。本やドラマで文化を楽しむこともあるので、いい悪いを考えるのは微妙です。両親は戦争の世代ではないが、祖母が日帝時代を知っているので、話は聞いています。日本人と接触することはほとんどありません。でも、日本のアニメなどは好きですよ。

 独島については、われわれは小さい時から自分たちの領土だと知っています。なぜ日本人が論争を起こすのか、分かりません。歴史に客観的な資料があり領土だと言っているのに。たとえ韓日が取り合いになっても、韓国が実効支配しているので日本が欲張りに見える。

◇韓国は相手が失敗すれば喜ぶ

【延世大学教授(右派)】
 両国関係が悪くなっている。お互いに理解しようとしていない。韓国は相手が失敗すれば喜ぶ傾向にある。私は、天皇制について研究したいと考えています。韓国では、それを全部悪いと批判しているが、実際にカリスマ性を維持し、存在している。世襲はよくないと批判されている中で存在している事実を、否定的ではなく客観的に研究したい。

 韓国では、天皇制は植民地時代の記憶になるが、日本ではいいという。韓国で日本を研究している人はいますが、植民地、慰安婦、在日のことばかりです。

 独島に関しては、歴史的に見ても韓国人が生活していた島だという認識です。もともと韓国領土なのに、日本が自分の物だと主張している。

 独島の海洋資源を奪おうとしている。そういうことで怒っています。

  【韓国外換銀行頭取】
 徴用工問題については私はよく知りません。国際事例が分かりませんので、話せません。韓日関係は切っても切れないものですが、安倍首相の発言に対して国民は好ましく思っていません。それを突破する知恵は私にはありません。政治は分配です。経済を外交とつなげて糸口を見つけるのはどうかと思います。

 【日系企業社長】
 韓国と日本の政治は、ビジネスには関係がありません。運命共同体だからです。日本の技術力と韓国のコストパフォーマンスを一緒にすれば本当に力になります。そうすれば、中国のマーケットをわれわれのものにすることができる。

 逆にバラバラだと中国の企業が伸びてしまう。2カ国の力を合わせたい。ビジネスをやっている人間はみんなそう思っています。

◇さあ、どうする
「政冷経熱」といきたいものだと甘いことを考えていたら、「国交断絶しろ」などと国会議員が言いだすほど、日韓関係は悪化してきた。韓国のサムスン電子やLG電子は、日本企業の大事なお客さまだ。特に、部品や素材製造企業にとっては、もはや日本企業よりサムスンやLGの方が大得意になっている。

 しかし、今のような政治情勢になれば、先行きは暗い。

 もう一つ、ここでは採り上げていないが、日本には在日韓国人として大活躍している芸能人、文化人、企業人らが多くいる。ところが、彼らのことを知り、尊敬する印象は受けなかった。特に、旧セヌリ党の国会議員は、日本で在日の文化人が多く存在することすら知らなかった。

 お互い人的、文化的交流があまりにも少ないのではないか。また、若者も幼いころから反日教育を徹底されているので、日本に関心を持っていない者は皆、日本嫌いになっているようだ。日韓関係改善には若者の交流がさらに必要だ。

 しかし日本には、あまりにも(日本から見た場合)ゴールポストを動かし過ぎる韓国に疲れている空気がまん延しつつある。さあ、文在寅大統領が日本に歩み寄るのか、安倍晋三首相が歩み寄るのか。今、両国の世論をにらみながらの外交が水面下で展開されているのだろう。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190714-00010001-jij-int&p=6


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