7月1日、日本は31年ぶりに商業捕鯨を再開した。同日、各地の捕鯨基地から集まった小型捕鯨船5隻が、北海道・釧路港を出港し、夕方には2頭のミンククジラが水揚げされた。


「私の世代は、鯨肉で育ちましたから、馴染み深いですね。これからは昔のように、簡単に手に入るようになるのでしょうか」

 釧路の台所・和商市場。木村鮮魚店に並んだミンククジラ(冒頭の写真)の前で、80代の女性が足を止めた。市場内の別の店では、鯨肉をその場で丼にすることもできる。

 釧路港が大漁に沸いた翌日の7月2日、店頭に並んだのは、調査捕鯨で捕れた鯨肉。この日は100g300円で売られていたが、後日、店頭に並んだ商業捕鯨のミンククジラは、100g420円で販売されたという。水産庁の高屋繁樹氏が言う。

「(釧路市場では1kg4000円の値がつき)ご祝儀相場となったことは、よかったと思っています。みんなが『要らない』と思えば、ご祝儀にはならないわけですから」

 近海で商業捕鯨が始まったこれからは、同じミンククジラでも、これまでとは “別物” が食卓に届く。

 調査計画に従いランダムに捕獲する調査捕鯨では、個体を選ぶことができないが、今後は、脂がのった個体を選んで捕獲することができる。調査捕鯨ではできなかった下処理を、船上でおこなえるため、鮮度も段違いだ。

「クジラは哺乳類ですので、牛などの畜肉のようなイメージがあるかもしれませんが、栄養価の構成は、じつは魚に近いんです。低カロリー高純度高タンパクで、DHAも豊富に含まれています。魚を餌に育つからでしょうね」(高屋氏)

獣の肉と違うところがもうひとつ。解体された鯨肉は一両日で熟成し、市場に流れるのも早い。

「クジラなんて握ったことないけど、これは寿司ネタになりそうだってね」

 東京・明大前の老舗寿司店「宝寿司」の小山恵一さんは、釧路から豊洲市場に入ったミンククジラを仕入れた。SNSで馴染み客に連絡すると、すぐに反応が返ってきたという。

「昔の鯨肉は、にんにくでニオイを消したけど、これは臭みがない。血の処理が大変だけど、鮮度がいい。生姜がいいね」(小山さん)

 鯨肉の話題になると、年配者たちは『懐かしい味』と言う。しかし、戦後の日本を支えた鯨肉と、今の鯨肉とでは味や食感がまったく違うのだ。とろけるような濃厚さがあるが、食べ疲れない。

 失われた31年間、鯨肉の消費量は低迷しつづけた。今後も、需要がすぐに回復することは難しいかもしれないが、さまざまな横槍に負けず、早くうまいクジラの肉が広まってほしいものだ。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190803-00010005-flash-peo


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