2日朝、日本政府は韓国を“ホワイト国“から除外することを閣議決定、世耕経済産業大臣は「日韓関係に影響を与えるなどということは全く意図していないし、ましてや何かに対抗措置といった種類のものでもない」と説明した。

 一方、先月4日に日本が輸出管理を開始して以降、その撤回を繰り返し求めてきた韓国の文大統領。日本製品の不買運動が続く中、発言は日に日に激しさを増し、韓国国民を鼓舞する表現も加わっていった。2日の会見で、それは今までになく厳しいものとなった。

 「韓国政府と国際社会の外交的解決の努力を無視し、状況を悪化させてきた責任が日本政府にあることが明確となった以上、今後繰り広げられる事態の責任も全面的に日本政府にある点をはっきりと警告する。加害者である日本が盗人猛々しくむしろ大口をたたく状況を決して座視しない。日本政府の措置に応じて我々も段階的に対抗措置を強化していくだろう」。さらに「(日本の)挑戦に屈服するなら(植民地支配の)歴史はまたも繰り返される。今の挑戦をむしろ機会とし、新たな経済跳躍のきっかけとするなら、私たちは十分に日本に打ち勝てる。韓国経済は日本経済を飛び越えていける」と、“第2の独立運動“だとの認識も示している。

 これに呼応した韓国の与党「共に民主党」も集会を開いて「実利なき経済戦争を直ちに中断せよ!」と気勢を上げ、議員の一人は「韓日の経済戦はいまや局地戦ではなく全面戦へと飛び火した」と警告した。

 2日放送のAbemaTV『AbemaPrime』では、今日に至る問題の経緯と文大統領の激しい言葉の意味、そして今後の展開について、同志社大学の浅羽祐樹教授に解説してもらった。

輸出管理上、優遇措置の対象となる「ホワイト国」。軍事転用の恐れがある物資の輸出にあたり、制度が整っていることなどを条件に優遇措置を行う制度のことで、2004年以降、アジアの国で唯一指定を受けていたのが韓国だった。 元経産官僚の宇佐美典也氏によれば、今回の措置は米国でファーウェイへの規制が議論され始めた昨年4月頃から経産省が検討してきた「重要技術管理体制事業」とも関係しているといい、“米中貿易戦争“も背後に存在するのだという。

 浅羽教授は「あくまでも安全保障上の懸念から輸出管理体制を見直したに過ぎない、というのが日本側の主張だ。喩えて言えば、これまで無事故無違反だったのでゴールド免許を与えてきたが、事故があったので普通の免許に戻した。ただ、免許を取り上げたわけではないので、気をつけながらであれば走ってもいい“ということだ。韓国大法院の判決に関しては一切関係がない、つまり背景には徴用工問題はないという説明もなされているので、韓国が優良ドライバーであるということを示せば、ゴールド免許、つまりホワイト国に戻ることができる」と説明する。

 「しかし韓国側には大法院判決に関する日本側の報告措置であるという認識があり、“運転免許を取り上げられ、公道を走るなと言われた“と受け止めている。“これは経済戦争だ、日韓関係はルビコン川を渡った、さじを投げた“というような、非常に厳しい表現もしていて、本来つなげてはならない歴史や安全保障、経済をリンクさせて挑発してきたと考えている。とりわけ文大統領が使った“盗人猛々しい“という表現は、普通は公的な場で使わないものだ。少し噛み砕くと“いけしゃあしゃあと“という感覚だろう」。

その発想の根底にあるのが、1965年の国交正常化の際から続く日韓の認識のズレだ。

 「1965年に国交正常化をしてはいるが、日本には植民地支配をしたという原罪があり、それについての国家責任を認めていないという考え方だ。つまり、1919年の三・一運動で臨時政府、国家ができているため、1910~1945年の日本による統治は不法で無効なものであり、全ての原因はそこに根ざしている。それなのに、“何をいけしゃあしゃあと“、ということだ。これは文大統領が年初の記者会見でも示している認識で、韓国国民、とりわけ“進歩派“と呼ばれる人たちの中で共有されている“韓国の正義“でもある。さらに“保守派“は親日派であり、その保守派の朴槿恵大統領が結んだ2015年の日韓慰安婦合意は、悪い為政者が結んだ悪い合意なのだから従う必要はないし、そのお父さんの朴正煕大統領が結んだ1965年の合意も従う必要はないということだ。そのように、いわば“反親日派“として、保守派=親日派というレッテルを貼り、過去を清算するのがロウソク革命だというのが文大統領の歴史認識、進歩観だ」。

さらに文大統領は「日本政府の措置に応じて我々も段階的に対抗措置を強化していくだろう」と述べており、逆に日本を「ホワイト国」から除外するという対抗措置の他、相互に防衛関連情報や秘密軍事情報などを提供し合い、情報の第三国への漏洩を防ぐために結んだGSOMIA(軍事情報包括保護協定)の破棄をもちらつかせる。折しも北朝鮮が1週間に3度もミサイルを発射しており、対北朝鮮政策と朝鮮半島の安全保障は、日韓のみならずアメリカ・トランプ政権にとっても重要な問題だ。

 「GSOMIAの更新期限が間もなく来るが、仮に更新しないということになれば、いよいよ安全保障分野でのパートナーではないということがはっきりしてしまう。日米韓の安保連携の中での話なので、アメリカに対してレッドラインを越えてしまう可能性がある。だからこそ日本側は昨年12月のレーダー照射問題で揉めた時にもGSOMIA再検討については一切言及しなかった。そもそもGSOMIAは、日本側の持ち出しが圧倒的に多く、韓国の方が得るものが多い。朝鮮半島有事の際には在日米軍と在韓米軍が連動して動くことが韓国防衛の要だ。制度的な安全装置のGSOMIAを韓国側から切るということになると、これはいよいよ大変な事態だし、アメリカが本腰をあげて仲裁に動いてくれるだろうと、ある種のブラフ、脅しのように使うのは危険な火遊びだ」。

悪化の一途を辿る日韓関係。浅羽教授も、自身が関わっていたソウル大学との学生交流が「向こうから申し入れてきたにも関わらずドタキャンされた」と話す。

 「将来像をどこまで共有できるかで、過去の意味付けは何度でも再定義が可能だ。しかし日韓の場合、朝鮮半島の将来像、あるいは米中関係という大きな国際社会の変化に対して食い違いが著しいし、“見たい像“を共有していなければ過去の問題は対立の側面ばかりが浮上する。いわば過去そのものを巡って争うというよりは、将来像を巡って食い違っている。そして、“歴史の進歩のためには、正義に見合った形でどんどん法を改正しないといけない、1965年の合意が不十分であれば、何度も繰り返し合意を結び直す必要がある“という韓国の正義と、“法は法だ、手続きを守るのが重要だ、仮に紛争があるならば請求権協定に書いてある通りに解決する“という日本の正義がぶつかっている。お互いにこちらが正しいと言い合っていても始まらない。国際社会は価値の多元性を認める社会だ。どうしても、という部分は国際司法裁判所や仲裁委員会という第三者が判断することになっている。個人的にはそこに委ねるしかない局面だと思う」。

 その上で韓国に対しては「1965年の問題、特に徴用工問題については韓国の分が悪いというのが、韓国の国際法学者の中でも多数のようだ。ただ、そうした異論に対して、政府高官が“親日派“だとラベリングしてしまうので、声をあげにくい状況になっている。果たしてそれが韓国憲法の標榜している自由民主主義体制なのか、文大統領には考えてほしい。異論を認める、少なくともオピニオンを闘わせるのが自由民主主義体制の根幹であるのに、自分が信じる“正義“、“民主主義“の一本調子だ。朴槿恵政権を倒したと彼が自負する“ロウソク革命“が、国らしい国として本当に見合っているものなのか、今一度考えてもらいたい」と指摘、日本に対しても「輸出管理の問題に関しては、最初に政府高官が徴用工問題に触れてしまったことが戦術的に良くなかった。また、手続き的公平さとしての正義は非常に大事だが、法と規範が不連続に一変する局面はある。“日本と話していると、法律家と話しているようだ“とよく言われるが、一般の人から見てぐっとくるエピソードや、マインドだけでなくハートを掴むロジック、エビデンス、ストーリーの組み合わせが日本外交に切実に求められている」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190804-00010000-abema-kr&p=3


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