この3週間あまりで6回に達している、北朝鮮による飛翔体、ミサイルの発射。韓国との問題ばかりが報じられているが、実は日本の軍事力では迎撃が難しいタイプのミサイルが発射された可能性が浮上しているという。


■日米に新たな脅威、アメリカの技術も?
 16日放送のAbemaTV『AbamaPrime』に出演した、対空ミサイルに詳しい元自衛艦隊司令官の香田洋二氏(元海上自衛隊海将)は「規模を縮小したとはいえ、米韓合同軍事演習を止めていないことに北朝鮮が不快感を抱いていることは事実だ。大物、長槍だけではなく、大刀、小刀もあるんだぞということを新たに見せたと言えると思う。燃料については瀬取り、部品についてはヨーロッパの国交のある国が非合法で、あるいは太平洋の小さな国を利用して第三国との迂回貿易等で既製品を入手しているとの見方もある。アメリカに力を見せるための最低限のものは確保できているということだろう。やはり国連の制裁が100%効いているとは言えないし、輸出管理も万全ではない」と話す。

 「先月以降、北朝鮮は異なる3つのタイプを発射していると私は見ていて、7月25日と今月6日に撃ったものについてはロシアのイスカンデルという短距離ミサイルをコピーしたものではないかと言われている。射程は比較的長く500kmとされていて、韓国は690kmという数字を公表しているが、実際には750kmくらいで、日本に届く可能性もある。また、今までの戦術的なミサイルは空気のある所を舵とジェットエンジンを使って飛んでくるものか、野球で言えばセンターフライのようなイメージで飛んでくる弾道弾だったが、イスカンデルはマウンドの上くらいで水平飛行に入り、大気圏内を飛びそうだ、というところでフェイントをかけて飛んでくる。つまり、日米の弾道弾防衛の裏をかいて飛んでくるので、迎撃の命中率は下がってくるだろう。北朝鮮はそれを実配備しようとしている。さらにこの技術を弾道弾に応用され、射程が2000km、3000kmとなれば、さらに新たな問題が出てくる」。

 また、「10日に撃たれたものは、ひょっとしたらアメリカの技術が使われているのではないかと疑わざるを得ないミサイルで、私も一瞬ぎょっとした」と明かす。

 「発射台を含め、アメリカ陸軍のATACMS(エイタクムス)に似ている。外形が似ているということは中身も相当似ている可能性がある。入手経路は分からないが、アメリカ本土からサイバーで情報を取ってくるか、あるいはスパイで同じものを持っている韓国などから情報を取った可能性を否定してはならないと思う。私は7割方、“やったな“と思っている。いずれにせよ、アメリカ陸軍が導入したのが1990年代なので、軍事装備としては非常に新しいものに入る。そういうものを見せることでの情報戦・心理戦を仕掛けていると言えると思う」。

■「安倍総理とトランプ大統領の発言にも問題がある」
 一連の発射について、岩屋毅防衛大臣は「あらゆる空からの驚異に対応できる総合ミサイル防衛体制をしっかりと整えていきたいというふうに考えている」と述べている。

 新たな脅威になりかねないイスカンデル型ミサイルへの対抗手段について、香田氏は「弾道弾防衛体制を取っているのは世界で日米、そしてイスラエルだけで、高い軌道を飛んでくるものに対してはイージス・アショアまたはイージス艦で撃ち落とす。そして撃ち漏らしたものをPAC3で撃ち落とすということを日本は考えていた。イージス艦の発射台には90発の弾を詰めることができ、1割程度が弾道ミサイル、残りの9割は大気圏を飛ぶミサイルを落とす能力を持っている。また、PAC3は最終段階で迎撃できるので、いきなり迎撃能力がゼロになるという論議は乱暴だ。仮に北朝鮮が新たな弾道のものを撃ってくるとなると、命中率は相当低くなるとは思うが、現状の体制を取りながら、北朝鮮の将来の技術開発に対抗していくべきだ」と説明する。

 「イスカンデルのようなものが出てくることは予想されていたので、アメリカでは開発が終わって配備が始まっている。日本でも中期防衛力整備計画でSM6という新しいミサイルを海上自衛隊の艦艇に配備する予定だ。ただ、日本は計画が5年は変わらないので、どうフレキシブルやっていくかという政策的な問題がある。一番高いもので一発あたり数十億するが、東京に飛んでくる核を撃ち漏らす可能性がある、ということを国のリーダーは考える必要があるし、優先順位と時期を決めるのが政治家の責任だ。また、配備地の問題が解決されていないイージス・アショアについても、予算を削減するために攻撃に備えた能力を落としてしまった。北朝鮮がそこまで見ていたのかは分からないが、元々は大気圏内で撃ち落とす能力を持っていたので、これを戻すといったことも考えるべきだろう」。

 その上で安倍総理の「我が国の安全保障に影響を与えるようなものではないことは確認されている」、トランプ大統領の「あれは短距離ミサイルだ。他の国も発射しているだろう」という発言に対しては、次のように指摘した。

 「安倍総理は、日本には直接飛んでこないという意味で“直接的な脅威はない“という言い方をされたのだろうが、時間は動いている。北朝鮮が技術を中距離ミサイルに応用すること、韓国が非常に不安定になるということを踏まえれば、将来の我が国の安全保障に影響することになる。やはり国民に対して、“常に枕を高くして寝られる状態ではない“というような言い方をした方が良かった。トランプ大統領も、“俺とあいつの、ICBMをやらないという約束は違えていない“という意味で発言したのだろうが、韓国には2万8000人のアメリカ軍、家族を入れれば5万人がいて、一時訪問も含めれば50万人のアメリカ人がいる。北朝鮮が今回撃ったものは全て韓国が第一次目標になるし、対抗が難しいものが出てきたということについては、合衆国の国軍司令官として明確に不安だと言うべきだった」。

■米韓合同軍事演習とトランプ発言で「発射する口実ができた」
 日本大学准教授の川口智彦氏は「北朝鮮の労働新聞が、“新型の戦術誘導兵器システムの信頼性と安全性、実戦能力が疑いの余地なく検証された。今回の実験は大成功したので実戦配備に向けて進めていく“と報じている。金委員長が立っているのは移動式の指揮所だと思うが、この中にはノートパソコン、タブレットなどが置かれている。北朝鮮のミサイル技術には民生技術がかなり転用されて高まっているので作りやすくなっていると思う。韓国の防衛関係の人の話を聞いていても、新しいコースで侵入してくるミサイルについては対応が非常に難しく、“1発くらいならなんとかなるが、数発打ち込まれたらお手上げだ“ということだった。まさに中距離ミサイルにこのシステムが導入されれば、日本にとって大きな脅威になる」と話す。

 「2018年に入ってから米朝関係、南北関係もあって発射を自粛していたが、その間も技術開発は続けていた。誘導技術の部分を相当開発していて、発射しなかった。今回、米韓合同軍事演習が行われ、トランプ大統領が小さいミサイルだから気にしないと言ってくれたおかげで発射する口実もでき、短期間にできるだけ多くの数、種類のミサイルを発射して一気に実験してしまおうということだと思う。また、12月を過ぎるとトランプ大統領は本格的な大統領選挙に入るので、北朝鮮外交の成果を上げるためには金委員長とも対話をしないといけない。全てのミサイルがダメだと言ってしまったら、核、ICBMの除去に至らなくなるので、政治的に寛容にやっているのだと思う。在韓米軍の問題もあるが、まずはアメリカ本土がターゲットにならないことが大切なので、そこを重視していると思う」と分析した。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190818-00010003-abema-kr&p=3


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