文在寅のバカげた暴挙
 今年7月1日「安全保障上の輸出管理に不備がある」として経済産業省が韓国向けの半導体材料(レジスト、高純度フッ化水素、フッ化ポリイミド)についての包括的輸出許可を個別輸出許可に切り替えたが、これを契機に日本と韓国の間で「経済戦争」とも言うべき深刻な対立が発生している。

今回の措置について、当初日本側からも韓国の元徴用工問題に対する不作為に関連づけるコメントがなされたが、そんなことはあり得ない。

 そもそも貿易管理に関する措置は極めて裁量の余地が小さいものである。経済産業省では7月上旬に輸出管理を担当している局長が交代しているが、仮に韓国への報復措置という高度に政治的な思惑があるのだとすれば担当局長を留任させるのが常識だろう。

 8月2日に日本が優遇措置の対象国であるホワイト国から韓国を除外することを決定すると、これに対抗する形で韓国の文在寅政権も同12日に日本を優遇対象国から除外する決定を行ったが、韓国側の決定はまったく根拠のない暴挙である。

 日本側に理があっても「すべて日本が悪い」と無理難題を吹っかけてくる文在寅政権のいつもながらの行動と言えないこともないが、出るのはため息ばかりである。

 筆者は2003年10月から2011年3月まで内閣官房に出向し、内閣情報調査室内閣参事官として経済面を中心にインテリジェンス情報の収集・分析に当たっていたが、在籍中に聞いた韓国政治の専門家からの指摘が今でも忘れられない。

 「インドのように植民地時代から独立運動を行い『宗主国を自らの力で追い出した』という体験を国民全体が共有できれば、植民地時代のトラウマは癒やされる。だが第2次世界大戦中にほとんど独立運動が起きなかった韓国にはそのようなサクセスストーリーはなく、永遠に宗主国であった日本を恨み続けるのではないか」

文在寅の「恨」
この指摘が正しいと思える典型的な事例は竹島の不法占拠だろう。

 朝鮮戦争の最中の韓国政府は1952年に李承晩ラインを突如設定して竹島を韓国領に含めると、1953年からは民兵組織を常駐させて実効支配を開始した。

 サンフランシスコ講和条約締結後も日本領にとどまった竹島を韓国が領有していた歴史的な根拠は乏しく、経済的な価値も低い。その竹島をあえて日本から理不尽な形で奪い去ったのは、日本への独立運動を行うチャンスを永遠に奪われた韓国のせめてもの「腹いせ」だったとしか考えられないからである。

 竹島を不法占拠だけでは韓国の溜飲は下がるはずはなかったが、朝鮮戦争を契機にアジアで冷戦が激化すると日本に対する「恨」をやむなく封印せざるを得なくなった。

 そして冷戦終了後、日本への「恨」を再開した韓国だが、バブル崩壊の低成長に苦しむ日本を尻目に経済が急成長し、ついに「植民地支配の屈辱」という汚名を雪ぐ絶好のチャンスが到来していた。

 というのも、昨年の韓国のGDPは約1.6兆ドルと日本のGDPの3割だが、人口が日本の4割である韓国の1人当たりのGDP(昨年は世界30位)がこのまま推移すれば5年以内に日本の1人当たりのGDP(世界21位)を上回る可能性が出てきていたからだ。

 まさに「経済力で『憎き日本』を上回ることが出来る」となっていた――はずなのだが、しかし、そんな矢先に文在寅政権の経済政策の失敗で経済成長が急減速しているのが現実である。

 実際、韓国の実質経済成長率は今年第1四半期はマイナス成長に沈んだばかりである。

 韓国経済はみずからの経済失策のせいで苦難に陥っているわけだが、文在寅大統領からすれば、日本がこれを奇貨として追い打ちをかける企みで韓国にとって「虎の子」である半導体産業に打撃を加える措置を講じたと逆恨みしているようにも映る。

韓国が狙う北朝鮮「鉱物資源」というフィクション
 今回の日韓の一連のやりとりの中で筆者が注目したのは、日本が韓国をホワイト国から除外することを決定した8月2日、文在寅大統領が「我々は日本に勝てる。北朝鮮との経済協力が実現すれば、日本に一気に追いつくことができる」と国民に対して訴えたことである。

 北朝鮮のGDPは韓国のGDPの100分の1に過ぎないが、「隠し玉」は北朝鮮の鉱物資源のようである。

 韓国商工会議所が2007年に公表した報告書によれば、北朝鮮の鉱物資源は総額6.4兆ドルであり、内訳は金が2000トン、鉄鉱石が5000億トンなどとなっており、レアアースも豊富であるとされている。

 当時内閣情報調査室に勤務していた筆者はその根拠について調べたことがあるが、韓国側が示したデータのほとんどは日本統治下時代に日本企業が行った非常に大雑把な調査結果に基づいていたことを記憶している。

 鉱物資源の埋蔵量は、採掘の持続性や経済性などの観点から精査していくと2桁以上その量が減少していくのが当たり前であることから、北朝鮮に鉱物資源が存在したとしても、その価値は相当割り引いて考える必要があるだろう。

 仮に北朝鮮の鉱物資源が期待外れであったとしても、「朝鮮民族の統一」という大義は揺らぐことはない。しかし約7600万人の人口を擁する大国が朝鮮半島で誕生することを国際社会は容認するだろうか。

 2011年12月北朝鮮の当時の最高指導者が死亡すると国際社会は大きく動揺した。

 次期指導者とされる金正恩への権力継承が始まった矢先の金正日の突然の死亡が、朝鮮半島情勢を一気に流動化させるのではないかと恐れたからである。

文在寅よ、さらば…! 米中大国を「激ギレ」させてついに万事休すか

北朝鮮幹部の「非公式発言」
 朝鮮戦争は1953年7月に戦火は収まったが、停戦状態のまま現在に至っている。戦争の実質的な当事者であった米国や中国などにとって、朝鮮半島は「現状維持」以外の選択肢はないという状況は現在も変わっていない。

 もちろん米国との国交正常化を悲願と位置づける北朝鮮にとって、トランプ政権の誕生は千載一遇のチャンスである。トランプ政権もまた貿易紛争を激化させる中国への牽制という観点からか、北朝鮮との首脳外交を活発化させている。

 だが、ここで「朝鮮民族の統一」を夢見ているとされる文在寅大統領が米国の後ろ盾を過信して、韓国と北朝鮮の緩やかな連合国家の結成に突き進めば、中国の習近平国家主席は黙ってみているわけにはいかなくなるだろう。

 紀元前2世紀に漢が楽浪郡を設置して以来、朝鮮半島は中国歴代王朝の帰趨を制する「藩塀」の役割を果たしており、中国としては朝鮮半島に敵対勢力が進出することはなんとしてでも阻止しなければならない。北朝鮮の後ろ盾とされる中国だが、北朝鮮にとって中国は最も嫌いであり、かつ、最も恐るべき隣国である。

 北朝鮮の関係者は非公式の場では異口同音に「北朝鮮の核武装は中国を牽制する要素が強い」と語っている。

 7月下旬から北朝鮮は短距離(射程約600km)の新型弾道ミサイルの発射実験を繰り返しているが、これらは韓国とともに中国にとっても脅威なのである(北朝鮮の西の国境から発射すれば北京に届く可能性が高い)。

米中大国の思惑
 朝鮮戦争以来「血の同盟」を結んできた北朝鮮までが米国に靡けば、中国は朝鮮半島に軍事介入する可能性があると筆者は懸念している(1949年に建国したばかりの中国は国際社会の予想に反して朝鮮半島に大量の義勇軍を投じた経緯がある)。

 ではアメリカはどうだろうか。

 現状は朝鮮半島での軍事演習にさえ否定的なトランプ大統領が、朝鮮半島での戦争開始を決断するとは想像しがたい。しかし、アメリカは朝鮮戦争が発生する直前の1950年1月に「朝鮮半島には軍事介入しない」とするアチソンラインを設定したにもかかわらず、北朝鮮が韓国に軍事侵攻すると手のひらを返すようにトルーマン大統領が米軍の投入を決断したという前科がある。

 もっとも金日成はアチソンラインの設定をみて、韓国への侵攻を決断したとされているが、いずれにせよ朝鮮半島はこうした北と南の意志以上に、米中ら大国の思惑の影響が異様に強い。その結果として現在にいたるまでパワーバランスの均衡が保たれてきたという側面が厳然としてあるのだ。

 地政学の教えによれば、半島はランドパワーとシーパワーが激突しやすく、戦争が起きやすいとされている。

 紛争当事国の思惑がすべて外れた結果、意図せざる大戦争に発展したのが朝鮮戦争だった。そして文在寅大統領が踏み出した「南北統一」は、不幸にして現在のパワーバランスを破りかねないとインテリジェンスの世界では目されている。

 文在寅大統領は既にパンドラの箱をあけてしまったのかもしれない。

藤 和彦

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190818-00066555-gendaibiz-kr&p=3


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