<中国が発表した深センの大規模開発構想は、反政府デモに揺れる香港への牽制か>
中国国務院と共産党中央委員会が8月半ばに深センの野心的な大改造計画を発表した。

周知のとおり、広東省にある深センは今でも中国南東部の主要都市であり、香港と大陸中国の重要な結節点だ。しかし新計画によれば、深センは「中国の特色ある社会主義」の成果を誇示するパイロット地区に生まれ変わる。つまり経済力や発展の質において世界をリードする都市となり、とりわけ研究開発や技術革新、新興産業の育成、環境保護にも注力するという。

新計画は、いずれも特別行政区である香港、マカオと広東省の9都市を一体化する「大湾区(粤港澳大湾区)」開発構想の一環と位置付けられる。現状でもこの地域だけで中国のGDPの約12%を生み出しており、総人口は7000万に達する。

大湾区構想はまだ概要が示されているだけだが、要は珠江デルタ地帯に巨大な産業のハブを創出し、経済成長や改革の発信地とするとともに、「一国二制度」の実践をさらに推し進めるものだという。後者の意味するところは不明だが、送電や通信を含むインフラ部門の相互接続性向上や「一帯一路」計画への積極的な参画、近代的産業システムの構築などの課題が挙げられている。

また大湾区は「香港やマカオの同胞が本土の人民と、国家再生の歴史的責任と強大にして豊かな祖国の誇りを共有することを可能にする」との記述もある。おそらく、大陸こそ中国の核心であることを強調し、香港と大陸側諸都市の間にある権限や影響力の違いを解消していくという中央政府の強い意思を示唆するものだろう。

■経済的な力関係が逆転

人口1200万を超える深センは中国で最初の経済特区だ。アメリカが目の敵とするファーウェイ(華為技術)もここに本社を置く。またコンテナ港としての規模・取扱量では世界第3位で、国際的な金融センターとしても14位にランクされる(香港は現状で第3位)。

昨年には経済規模で初めて香港を抜いた(深センは2兆8700億香港ドル、香港は2兆8500億香港ドルだった)。成長力の差も歴然としており、域内総生産の伸び率は深センの7.6%に対して、香港は3%にすぎない。ちなみに香港政府によれば、大規模デモで混乱の続く今年の成長率は1~0%に落ち込むものと予測される。

中国では経済と政治は不可分の関係

このままいけば香港と深センの経済的な力関係が変わるのは時間の問題だろう。

一般には政治と経済は別物と考えられているが、中国のような一党独裁の国家では、いや応なく不可分の関係にある。中国政府の経済政策は共産党の政治的目標や正統性の維持、そして体制の存続と切っても切れない関係にある。

もちろん、香港の未来に影響を及ぼす開発計画の提示だけが、今の香港の政治的混乱への処方箋ではない。最近の各種報道によれば、中国政府が軍隊を動かす可能性もあるし、ソーシャルメディアを使った情報操作も盛んに行われているようだ。準軍事組織である武装警察は香港との境界線に程近い深セン市内で暴動鎮圧の訓練を繰り返し、民主化を求める香港市民に警告を送っている。

だが当座の危機に対処する戦術的な役割はともかく、深センをはじめとする珠江デルタ諸都市の壮大な再開発計画は、国力増強に突き進む中国政府の長期戦略において香港がどう位置付けられるかを見極める上で、大きな意味を持つ。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190827-00010001-newsweek-int&p=2


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